南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

名松線・美杉村版

鉄道の旅フォルダ公開シリーズNo.7(名松線で桜を見に行こう版)
これは、上の副題のとおり、名松線で途中下車をして桜見物に行ったものである。前日からネットで桜の開花情報を検索して、周到に練ったものである。この名松線には、2つの桜の名所がある。一つは「三多気の桜」といい、終点伊勢奥津から徒歩1時間弱のところにある。これはヤマザクラで、見慣れたソメイヨシノと異なり、見頃がやや遅い。4月半ばが旬で、その頃に桜まつりも催される。もう一つは、名松線半ばの伊勢竹原から徒歩15-20分で、君ヶ野ダムのほとりに咲くソメイヨシノ群である。ソメイヨシノは咲き頃が4月上旬であるから、今がベストである。ネットでは、山桜の開花が4月7日と予想されていたので、それまで延ばそうとしたがどうも調整が効かなかったのと、三多気の場所が悪かった。もう少し駅から近いか、バスの本数があればよかったのだが、何分田舎である。桜は君ヶ野に絞ることになった。
行き≫
名古屋  7:50発

松阪   8:55着
関西線も亀山以西へ行くのでなければ、やや余裕が持てる。松阪で一旦区切ったのは、外のコンビニへお弁当を買いに行ったためである。美杉村がどんなところかは知らなかったが、そう容易く食堂にありつけるとは思えなかったので此処で買っておく。
松阪   9:29発

伊勢竹原 10:15着
「君ヶ野ダム公園の桜」
家城駅にはJR東海最後の腕木信号があったのだが、私が行ったときには既に撤去されていたはず。権現前くらいまでは、まだ松阪市内ということで乗降が多かった。その先は、お年寄りがのんびり乗っていく。こういう雰囲気は大好きだ。世間話なんかちょっと聞いちゃったりして。伊勢竹原は、木造の古めかしい小屋。柱のどこかに、大正だったか昭和だったか築と書かれていた。ちなみにこの駅舎、1年後には新舎に建て替えられたらしい。まったく残念な限り。降りたのは地元のお婆ちゃんと私だけ。
駅前の山を左回りに廻りこむようにして坂を登っていくと、君ヶ野ダムである。ダムの周りに、並木のように桜が植わっている。やはり旬だけあって見事なもんだった。ここは一つ一つ花を見るのでなくて、湖面とずらーっと並んだ桜の木をセットにして見るのがいい。それにしても残念なのが、桜を見ながらの団子が無かったことだ。これも松阪で買っておけば良かったのだが、せめてこれくらい桜の名所だから露店でも立っていて欲しかった。みたらしとか、甘い団子食いながらってのは花見の理想なんだけどな。
移動≫
伊勢竹原 12:00発

伊勢奥津 12:28着
特に昼だから、そう思ったのかも知れない。また、のんびりムードにリターン。名松線はローカルといえども2両編成である。後部車両で、日向ぼっこをしながらお弁当を広げる。ご飯ものと野菜サラダのパック。伊勢八知とかで降りれば伊勢うどんが食えたかもしれないが、何せ列車の本数がね。伊勢八知は、家城以降の最もマシな駅である。昼寝をしていると、すぐに興津に着いてしまう。
JRの行き止まりは武豊線以来かな。もうこれ以上は無理、と訴えかけているようなそんな途切れ方。名松線というのは、「松」は松阪で「名」は何かっていうと、おそらく名張なんだよね。だけど名張に達することができずに、こんな辺鄙な山奥で立ち往生してしまったわけだ。けれど、こんな山村だけでも廃線にならずに残っていられるのは相当なもんだと思う。もぅ進めない、という割には広々とした空き地が途切れた線路の先にある。列車を降りて、しばらく戯れて、やーい列車、ここまでおいでと言ってみたくなる。伊勢奥津駅は駅舎がない。どうも建て替えの最中のようだ。プラットホームと、滅多に来るはずのないバスの停留所だけしっかり造ってある。
◆お伊勢参り・北畠氏コース(伊勢本街道・近畿自然歩道)
●距離:10km
●時間:3時間30分
伊勢奥津駅から伊勢本街道(近畿自然歩道)を伊勢に向かい、飼坂峠をこえ、上多気で伊勢本街道と分かれ、美杉ふるさと資料館へ。北畠神社から霧山城跡へと登り県道か比津駅へと下ります。お伊勢参りで大変にぎわった伊勢本街道、国司として伊勢を治めた北畠氏をしのぶコースです。
これは三多気の桜を諦めた穴埋め企画ですが、ちょうど三多気とは正反対の方向に歩いていくのである。伊勢奥津駅からしっかりした自然歩道が造ってある。民家の脇は僅かばかり、すぐに森の中へと踏み入る。峠を一つ越えて、出たのが美杉村上多気の集落。鉄道沿線ならまだしも、交通機関は国道だけという山あいの集落である。国道沿いには道の駅「美杉」がある。そして、国道をやや北に離れると、美杉ふるさと資料館があるのだ。今回は後者のほうを行く。
まだ真新しい資料館であるけれど、滅多に訪問者がなさそう。地元の豪族北畠氏とのかかわり、あとは民俗生活ですかね。まぁこれはどこか入らないと来た気がしないので、という感じで。さて、出たはいいが、何かおやつが欲しい。道の駅までは1kmほど戻らないといけないし、帰路は比津駅に出る別コースを行くので手間かけたくない。ホント寂しい集落だけどぐるっと一周してみる。看板とか古びた自販機とか、2-30年はタイムスリップした感じ。小さな神社で子供が遊んでいる。彼らのおやつはどこで買っているのかな。それが分かれば自分も食える、と思いながらまた歩いたけれどなんも無かった。
それで資料館の近所にあった、土産屋風飲食店で、アイスクリームを一つ頼む。団子も饅頭もあまりいいのが無かったので。すぐ後から、車で来たらしい親子が伊勢うどんを頼んでいた。伊勢うどんは量が無いが、さすがにおやつで食べる気はしない。寂れた店だが、アイスの器はシャレていた。せっかくこんな山奥まで来たんだから、何かお土産も買っていこうかな、とショーケースを眺めると、8個入りの質素なお饅頭があったので所望した。薄皮で餡を包んだ素朴な味であった。
北畠神社(庭園)の裏から、再び山に分け入る。かなり急な坂を登りきると、柱を立てた置石が散在する霧山城跡がある。周りは木々に囲まれ、ぽっかりと城跡だけ陽が差し込んで明るくなっている。ただ、このときはちょっと焦ってたね、比津に無事に着けるかどうか。
城址を下って林道に出て、それをさらにさらに下ると比津駅。幾分はらはらしたけど、案外余裕だった。林道の途中で、蒟蒻だったかな特産品の広告看板があった。比津駅前の民家を眺めながら、こういう住んでる人たちとも触れ合えるともっと面白いものになるだろうな、と思った。
比津   17:20発  

松阪   18:32着
     18:36発    

亀山   19:18着    
     19:57発    

名古屋  21:06着
この比津駅から乗った列車が、名松線全区間を走るものとしては本日最終の便である。松阪へ出る学生など割と大勢乗っていた。
いかがでしたでしょうか。名松線下車回数2回、合計3本の列車を利用したわけですが、一日10往復の同線ではなかなか良い出来でしょう。しかも終点伊勢奥津から、さらに山奥へと踏み入って春の山村を見てまいりました。何もないと始めから分かってることでも、行ってみると何か発見することがあると思います。そんな小さな観光開発をするのも、日帰り鉄路遊びの大事な役割です。ローカルなところにはローカルなりの魅力があるのです。JRは18切符を使用、他の交通は使用してない(但し伊勢鉄道は片道490円で利用)。お土産は謎のお茶饅頭。鉄道記録はJR名松線制覇。