読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

近江ガチャコン

日帰り鉄路遊び集

はじめに

ゼミ報告準備の前に、一秋パーッと楽しんでこようと出かけた。ちょうど彦根の名神で玉突き事故があったらしく、母親に霊が出るぞと脅されたが、プランは揺るぎません。
金山8:33特快で比較的心地よく米原へ直行。比較的というのは、いつものことだが大垣で2両減らされて大人数が乗り込むため、終点米原まで通路に立たれる他客を見るのは少々気の毒なことを考慮して言っている。そして彼らの大多数は、米原で京都・大阪方面へ感動的なスピードで駆け抜ける新快速に乗り換える。んだと思っていたが、多少ズレも在ったらしいことは後の話。伊吹山はやや雲がかかっていた。醒ヶ井を出たところで名神が垣間見えたが、東行きが混んでいた。どうも事故とは関係ない方向な気がするがの?

米原にて(寄り道とか何とか)

ちょっと前に米原へ来た時のイメージでは、JR東口から近江鉄道駅へは多少距離があると思っていたが、目と鼻と耳の先だった。JRの米原着が9:49で、近江鉄道の発車が10:14だから、フリー切符を買っていてもかなり時間がある。JRの10:10着があったんだが、購入とか移動とか手間取ると思って、余裕の一本前にした結果。またいつものようにJR総研風洞技術センターの車両でも眺めに行こうかと思ったけれど、ワンパターン回避。そのまま東口ターミナルを出て、中山道を渡り住宅地に入る。近くにセブンが出来たんだろうか、店員が地域回りをしている。と、ガランガランとでかい鐘の音。寺か?と思いきや、今度は大きな汽笛の音。そうか、米原を降りたときに見たポスター「北びわこSLナントカ」って今日のイベントだったのか。急いでその坂を駆け上ると、駅の方角に真っ黒い煙が見えた。ちなみにそこには、旧米原尋常高等小学校の古い木造校舎があって、その裏には、この時間に行こうと思っていた青岸寺があるんだが、この校舎を見れただけでも上ってきた価値はあった。軽く休憩して、たぁっと駆け下りてフリー切符を購入。この550円の切符はちょっとそこら辺の駅を往復するだけで元が取れてしまう激安切符で、ほとんどの利用者がこれを買っている。ただし、湖東三山や永源寺に行かれる観光者は、それ用の便利切符がある。ガチャコンの車内にバッグを置いて、ホームから米原駅を眺めると充分SLとそれに群がる野次馬が見えた。先の特別快速に乗ってきた人々のうち、姫路行き新快速に乗り換えた人が7割、SLの野次馬をしにきた人と、湖東三山や永源寺に行くために近江鉄道に乗り換えた人がその残りだったらしい。SLは10:12発車、これをぼんやり見送ると間もなくガチャコンも発車する。

近江鉄道に揺られて

さっきから使っているように、地元では近江ガチャコンと呼ばれているらしい近江鉄道は、その名のとおり、ガチャガチャ走る。2両編成で小型に感じる割には、連結部分が広く、自転車も乗せれる。すぐに気づくことだが、車内アナウンスが関西方言。「とりいもと」「ひこね」「たかみや」「とよさと」などは皆、前アクセントで聞いていると違和感あるけど面白い。彦根のほうが米原よりもJR線からの乗換えが便利で、湖東三山への観光客がかなり乗ってきた。彦根には鉄道の車庫があって、当駅止めの列車もあるらしい。JR線と駅前の町並みの間から、国宝彦根城が垣間見えた。でも今回は降りない。

多賀大社

高宮で多賀線乗り換え。多賀線は、西武カラーのつりかけ1両。乗車率は3割くらいだな。皆参拝だけじゃなくて、その奥の山林へ行く模様。真新しくてだだっ広い多賀大社前駅から、参道「絵馬通り」に入って、古い町並みを行く。しばらくは余り目立った店はないんだけれども、下調べでお土産にしようと思っていた「糸切餅」の文字がちらちら。それと、「多賀名物鍋焼きうどん」が幾分目立った。朝は早かったが、さすがに11時では昼にも早い。でも、帰ってから思うと、あの鍋焼きうどんを食しておけば良かった、と。鳥居前で急に参拝者でにぎわう。この時期は七五三で盛況だ。近江鉄道駅とはちょうど真反対側に、国道306号が通っていて、参拝者の多くはこちらから来る。だから本殿前の盛況と、駅の閑散さに相当のギャップを感じることになるわけだ。騒がしい親子やカメラのフラッシュにも極力動じないふりをして、厳かに参拝して、鳥居前の「多賀や」で糸切餅を買って、もと来た道を行く。「片道15分」を気にしていたが、案外時間が余ったので、途中のお堂に入って観音群を眺めながら、駅に着。改めて駅舎に入ると、小さなギャラリーがある。多賀散策の地図もあったので、今更ながらと思いつつボンヤリ眺めていると、突然ベルが鳴った。11:12高宮行き駆け込み乗車。

高宮から、また揺られて

慌てて高宮まで帰ってきたが、ここの乗り継ぎは微妙。高宮駅にもギャラリーが在るので、眺めていく。地域女性の切り絵クラブ作品と版画作品。高宮は分岐駅で常時駅員が居るが、居なくても人のいるような温かみを常に持たせておけるギャラリーだ。楽しませてもらってから、また反対ホームに渡る。線路の上にとどまって、両方向を眺める、なんてのはローカル鉄道でしかできないタワブレ。何となく自然に踏切が鳴って、電車が現れる。
尼子駅で、湖東三山への乗客が一気に降りる。ここからバスが出ており、この時期に限って当駅は有人となる。尼子付近から、新幹線の高架脇を走るので、若干騒音を感じる。

愛知川

中山道旧道で何かお昼を取れるだろうと、目をつけて降りたのが愛知川。お多賀さん界隈で見た鍋焼きうどんは、どこにも存在しなかった。それどころか、中山道を歩いても、旧市街は面白いが、空腹は迫ってくるだけで、満たしてくれるところが無い。看板があっても寂しすぎるか、俗っぽすぎる。「旅先の旨い物」構想は崩れたので、愛知川を観光することにした。そして、当初計画の八日市線の太郎坊へ行く計画を、愛知川の次の五箇荘で降りて、お昼と町並み見学に変更した。
中仙道を外れて、新幹線と近江鉄道を渡ると、静かな田園風景。その中に、「びんてまりの館」がある。愛知川の伝統工芸、びんてまり。丸いガラスの中に、手鞠が入っている。ビンの口は小さく、とても手鞠一つが通る大きさではない。だから、とっても不思議な感じのする工藝だ。中での説明によると、内側が空洞の鞠をビンに押し込んで、後から綿を入れ鞠の口を閉めて完成させるのだ。コロンブスの卵とか、密室殺人じゃないが、完成した鞠がビンを通るはずがないという考えは抱くものだ。そんな巧妙な工芸が、江戸期から存在したというのは大変興味深いことだが、実はこの芸能、近代になると衰退の一途を辿り、昭和半ばでこの細工を受け継いでいる人が1人2人になってしまったのだそうだ。その一人の女性から、地元の地道な努力によって、伝統工芸としての保存から、今では国内外からの注文も受けるようになってきている。鞠で遊ぶ機会は、当節ではあまり無いけれども、美しい柄が施された鞠をビンに入れて飾るのなら、今でも手軽に楽しめる。ただ、手がかかるだけに大変高価なので、お土産にするには厳しいものがあった。

五個荘

次の五個荘は、愛知川よりももっと寂しい駅で、無人。いや無人だけど、貸し自転車を勧めるおばさんが五個荘の案内地図をくれた。行きたいけど、その前にお腹が減ってどうしようもない。駅前集落を抜けると、超交通量の多い国道(旧中仙道)に出る。虚しいけれど、今回は食はハズレということで、国道沿いのファミレスで済ませた。「二色カレー」なんて訳分からん。やはり鍋焼きうどんが惜しい。
貰った案内図を頼りに、五個荘の町並みを見に行く。確かに結構距離がある。歩きなれない人は、自転車をレンタルしたほうがいいかもしれない。別コースに、能登川駅から歩くものもある。五個荘は、近江商人の趣ある商人屋敷が立ち並ぶところ。街が近づくにつれて、水路が何本も巡り涼しい感じがしてくる。郡上八幡のような雰囲気だ。商人屋敷の町並みは、彦根や近江八幡にも残されているが、ここは城下町ではない。街道に沿った集落なのだ。たどり着くまでに時間を要したので、街の一角しか周れなかったが、腹ごなしには気持ちの良いところだった。駅では一人も居なかったのに、ここへ来ると急にツアーらしい観光客が目立つ。今では交通があまり便利でないところに、嘗ては交通の要所だった名残がのこっているということを、ツアーでは実感しにくいんじゃないかと思った。

次の電車は、近江八幡行き。太郎坊へ行くなら八日市を通過しても良いが、別に何も無さそうなので八日市線に乗るのは諦めた。ので、八日市駅で本線の貴生川行きに乗り換える。八日市から先は、八幡方面も貴生川方面もやや本数が少ない。

水口

最後に目指すのは、水口。開けたところを走ることが多かった北線と比べ、南線は暗めの車窓。だが、車内は地元の生活色に溢れている。日野でやや街らしくなって、水口に入ると駅間が短くなる。貴生川の一つ手前にあたる、水口城南で下車。
一日乗車券があると、目一杯乗りたい気持ちが非常に大きくなるけれど、近江鉄道沿線には意外と観光名所が少ない。多賀大社は駅から近いが、五個荘は少し距離がある。ポイントを絞って観ると、結局乗車券の元が取れないことになる。ということで、何かあるだろうと期待して(勿論下調べはしてある)、水口まで乗ってきた。城南というからには、一応水口城(跡)がある。そして、甲賀市歴史民俗資料館があった。
が、ここで重大な失敗をした。というのは、水口城(跡)にある、復元天守と内部の資料館は、16時で閉館なのだ。電車は15:38に着いたので、真っ直ぐ城に向かえば間に合う。ところが、私はまず資料館へ行った。これは水口図書館の一角にある。ここで、水口城と民俗資料館の共通券を求めたところ、上の説明をされた。たしかに調べてあったし、先に城へ行かねばならかったはずなのに、ど忘れだったらしい。もぅ16時直前なので、諦めた。どちらからみえた、と聞くから、名古屋(最初、駅から、と答えて失笑された)というと、「近いところからだったら、年に一回無料開放の日があるから、また来れるのだけど」と呟く。惜しいなぁ。
一階が水口の伝統的なお祭りについてで、二階が民俗資料館。一階の山車復元とかにかなり資金投与している模様。
水口城。中には入れないけど、行ってみる。堀の外から眺めながら一服。ゆっくりしているのは、水口石橋まで歩くのに、時間が微妙だったから。水口では1時間弱の時間があった。

終わりに

あとは、一気に本線を米原まで上昇。一気といっても、八日市でまた乗り換えなきゃいけないのだけど。微妙に吹き抜け状になった跨線橋に、八日市の名産が寂しげに並んでいる。湖東三山や永源寺への最大の玄関口だが、あんまり観光っ気がない。
八日市線は単線なので、この駅で交換する。私の乗る電車が入線してきて間もなく、下りの逆行きが発車する。その間際になって、車掌に「ホームの自販でモノ買っていいですか」と慌てたように聞いているアホが面白かった。上り電車が来る前に買っとけ。勿論車掌はキレていた。
あと、真ん中の通過用線路に、快速電車の車両が停まっていた。一日一本、それも上り(米原方面)のみ走る快速がある。特急のような見慣れないスタイルで、近江ガチャコンには似合わない。
山歩きをしてきたらしい、中年男女の一団が終点まで乗っている。米原での乗換え時間が短いので、皆電車の先頭に集まって、降りると一気に走り出す。私も十分に間に合う、と思いつつも何気につられて走ったりして、東海道線のホームに着いた途端、馬鹿らしくなって乗るのを止めた。というのは、満員だったからだ。この線は、本数が少なく(激的にじゃないけど、自棄に混む傾向があるのに対応していない)、電車が入線する前に並んでいないと絶対に座れないのだ。人が減らない(下車しない)で大垣まで行くから、立ち席はたえられない。結局30分遅らせた。あー無駄。
という感じで、青春18切符のない時期に、いかに効率よく第三セクターや中小私鉄を愉しむかという企画だったわけだけれども、いい実例になったと思う。満足、満足。
(この企画は、旧型青空フリー切符2040円と近江鉄道フリー切符550円の計2590円で実施された、格安旅行です)