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南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

大紀町に浸る日帰り旅

日帰り鉄路遊び集

やっぱり温泉への執着は捨てきれなくて、どこかいい立ち寄り温泉はないかな、と探していた。はじめは天竜峡で推していたのだけど、どうも立ち寄りにも予約が要るらしいことが分かってきて、避けることになった。それで、本屋でるるぶを眺めていて見つけたのが、ここ大紀町にある阿曽温泉だ。私がるるぶなんかで見つけたところに行くのは稀過ぎるのだが、たまには面白いところも見つかるものだ。大紀町というのは、三重県の紀勢線沿いにある山間集落で、れいの大合併で大宮町・紀勢町・大内山村が合併してできたもの。阿曽温泉は、廃校となった阿曽小学校をそのまま用いた温泉だということで、これは面白そう、と思ったわけだ。そんなわけで、リニューアルされた青空フリーパス2500円を使用し、滝原と阿曽の間を歩きつつ、大紀の素顔に迫ってみよう、となった。

新型青空フリーパス

かつて青空フリーパスは、2040円と3500円の二種体制であった。値段によって若干フリー範囲が異なっていた。それが暫く前にリニューアルされ、2500円に統合された。一方フリー範囲は旧型3500円のものよりもやや広くなり、また別途490円を徴収されていた伊勢鉄道もフリー範囲に加えられた。今回紀勢線で降りてみようと思ったのは、これが大きな要因である。快速みえに乗っても、伊勢鉄道料金を別に取られないのはとても有難い。

快速みえ

正月2日ということもあって、快速みえはぴったり席が埋まる。一本早めの中央線に乗ってくるべきだったと後悔する立ち席。こんな時間にみえに乗るのは、大抵が伊勢神宮参拝客なので、途中駅で降りないのだ。6時に起きられないといけない、と一晩起きつぶしたので車内で寝ていこうと思ったのだが、全くダメだった。まぁ実際は立ったまま寝たんだけど。
みえは乱暴に揺らすから、体をあちこちぶつけた。速いだけが取り得。空いている割には、車掌がきちんと490円を徴収に来ない。あれでは回収率が落ちるぞ。

紀勢線

昨年は海水浴にも行きそこなったので、紀勢線はかなり久しぶりになる。ただ、今回は夏と違って乗車距離が30分強と短いので、意外と呆気なく終わる。いつもは2時間近く乗るのだ。
尾鷲の親戚の家に行くらしい、中年姉妹の会話を聞きながら滝原へ。

滝原宮

天候はあまり良くないと予想されていたが、案の定滝原に着くと傘が必要なほど降っていた。駅から滝原宮まではやや戻る形になり、さらにその後の予定として阿曽まで歩くつもりでいたが、滝原13:56発の新宮行きが目に留まって、雨のひどい場合は戻ってきてこれを使うことにした。結局は滝原宮参拝が済む頃に小康状態になって、その後はひどく降ることは無かった。
国道42号を北に20分ほどで、道の駅「木つつ木館」が現れる。ここが最初の滞在地。木つつ木館の奥に滝原宮が、向かいに「おおみや昆虫館」がある。滝原宮というのは、伊勢神宮の別宮で、奥の院ともいえる。毎度毎度伊勢神宮では芸が無いので、今回はちょっとヒネってこういう所によってみる。雨天でも参拝者は多い。別宮とはいえ、伊勢神宮の分社だからな。熊野古道のような原生林を600mほど進む。面白いのは、御手洗所と書かれた方向に進むと、きれいなせせらぎが流れている。ここで手を清めるのだ。柄杓も何もない、自然のままの手洗である。
5つばかりの社殿が立てられた神域。熱田や伊勢本宮のように何百何千という人間が一斉に銭を投げ拝むのでなく、一度が最大5人程度の厳かさを感じさせる空間である。慌てず焦らず思いのままに祈りを奉げることが出来る。初詣の時期にこんなお宮は珍しい。ここを選んで良かった。

木つつ木館

朝が早かったので、11時半に此処でお昼。とろろ伊勢うどんは400円で、量は厳しいが美味しかった。大紀や宮川の木材をふんだんに用いた家具が席に使われ、また販売もされている。
食後の休憩に、お土産をチェックする。どうやら赤福餅は此処に置かれていない模様。事前に調べてあった「のじりさん」という饅頭と「さわもち」という餅が、地元銘菓として売られているが、大内山牛乳の乳製菓子に押されて、あまり目立っていないようだった。また木工細工や漬物類も多種販売されている。昆虫館見学の後、「のじりさん」3個入りパック2つと、地元手作りパンを買った。

おおみや昆虫館

終日雨天であっても楽しんでいける場所としてチェックしておいたのが、ここ。向かいの道の駅とは対照的に、ほとんど人の出入りを見せないこの施設だけども、大宮町の豊かな自然に集まる、蝶をはじめとする虫たちに出会える。この施設は大紀町の観光情報で見つけた。同HPには入館割引券が掲載されており、これを印刷して持参すると10%引いてくれる。ところが、この割引券、印刷日から10日以内を有効期限としているのだが、日付の画像を直に印刷できないのだ。*1それで、持っていくのをやめた。もとが300円なので、1割引でも何でもいいや、と思ったのだ。
そうしたら、受付でおみくじを引くよういわれ、中吉をあてて30円引きとなった。正月は正月なりの企画をやっていたので、HPの割引券を持たずとも問題なかった。ちなみに大吉は50円、末吉は10円引きだ。
身近な自然にすむ昆虫の生態、世界中から集められた昆虫の標本が、これまた木の香りの強い建物内に展示されている。滝原宮、木つつ木館、昆虫館と共通して、徹底した木の文化に包まれている。暖かくて気分が落ち着く。
2階の企画展は、今日開設されたばかりの、昆虫館に魅せられたあるアマチュア写真家の力作の数々である。東海三県で撮影された蝶々の美しさ。また、大きな昆虫を象った立体凧も展示されている。

近畿自然歩道―大滝峡をとおって阿曽へ

行きは国道42号を歩いてきたけれど、おそらく熊野街道の旧道と思われる、車どおりの少ない裏道がある。その道は近畿自然歩道に設定されており、阿曽駅まで続いている。今度はそれを伝って阿曽温泉へ向かう。近畿自然歩道というのは名松線の美杉村以来だ。
コンビニで大内山牛乳を買って飲みながら、国道を渡って川沿いの小道へ。もともと大滝峡へは遠回りになるので避けようと思っていたのだが、自然歩道の安全な案内板が付いているので、それに従ってしまった。けれども、その大滝峡というのが雨天時でも相当きれいなところで、エメラルドグリーンの川面とごつごつした河岸がすばらしかった。長野の木曽と似ている。
木立のサイクリングロード兼自然歩道を抜けると滝原ダムのほとりにキャンプ場がある。まったく人気が無いので、0ナニ1をしようとしたら、突然サイレンが鳴り響き、立ち入り禁止区域には入らないよう大声で指示された。ダムの堰き止めの上に展望台があり、足元を大量の水が流れていくさまは、身のすくむ思いがした。
国道からかなり離れて遠回りをしたので、温泉に入りたい午後3時が近くなっていた。幸い?郷土資料館は休館であったので足早に過ぎて、警報器すらないJR線の踏切を渡って国道42号に戻った。これで阿曽の集落に入ったことになる。温泉はどこかな?

阿曽温泉

集落に入ってスグの交差点を数十m左に進むと、右手に駐車場と化した旧校庭が現れる。ここが阿曽温泉。源泉はさっきの大滝峡の近くにあった。そこからパイプで湯を引いている。木つつ木館で得たパンフレットには泉温27.3度とあり、さぞぬるかろうと思っていたが、実際は結構熱かった。
温泉とはいっても、趣は村のお風呂屋さん。ロッカーは小さく、お土産の入っているバッグを衣服と一緒に収めるのは無理。籠と併用した。湯船も広くはなく、露天も無い。けれど、無いもの探しをしたって仕方がない。無色透明のとろける様な湯は、ここまでの足労ばかりか、日頃の疲労をもとってくれる。地元のおじさん、お爺さんで賑わい、それぞれがゆったりと浸かっている。しばらくして子供たちが闖入してきた。その暴れっぷりは思わず顔をしかめてしまうが、これが普段の姿なのだろう。我慢しつつ、足を伸ばして何度も浸かってきた。
エントランスを境にして風呂と休憩室がある。湯上りには大内山牛乳、と行きたいところだが、それはさっき道すがら飲んでしまった。木つつ木館で買った地元手作りパンを、持ち込みでありながら頬張ってお茶。やっぱり飲みたぁい、と100円握ってイチゴ牛乳とか物色するも、結局買わなかった。なんか子供っぽいな。ちなみにここにも赤福は売ってなかった。
風呂場のほうはしっかり改造してあったけど、休憩室は学校の教室そのもの。売店となっている通路も、昔の小学校の板張り廊下。我々都市民では学校も既に鉄筋コンクリートだったけど、一歩山に入れば同じ世代でも違った校舎生活だったか知れない。父母の世代ではこれが校舎の基本形だったはずだ。なんとなく懐かしさが来ないでもない。入浴と休憩で丸一時間ゆっくり過ごす。

さらば、大紀町

阿曽駅は一面一線の無人停留所。温泉からの道中、小さな観音堂があったので合掌。これで今日の散策はお終い。ちょうど空も薄暗くなってきて、夜の装い。
昆虫館と阿曽温泉では、10回分のスタンプを押せる「お楽しみカード」をもらってしまったけど、そう何回も来れないだろう。誰か、何度も行けそうな人にプレゼントしよう。
寝ぼけ眼で伊勢鉄道鈍行に乗り換えそこなう
散策はお終いと言っただけで、まだ遊びは済んでない。せっかく青空フリーパス伊勢鉄道までフリー区間になったのだから、快速みえじゃなくて通常の伊勢鉄道列車に乗ってみたくなった。スムーズな乗り継ぎと両立できることが分かり、今回のプランが組まれた。
多気17:23着-17:30発(亀山行き)→津18:05着-18:08(伊勢鉄四日市行き)→四日市18:46着-18:51発(快速みえ)→名古屋
四日市で18時51分に乗る快速みえは、津で25分待つことになり効率が悪い。亀山経由だとさらに遅くなる。だから時間的にも、上のプランが美しい。
ところが、往路の車内ではほとんど寝られなかった上に、温泉で暖まった気持ちよさが加わって、紀勢線ではほとんど転寝をした。多気からは気をつけようと、『政治過程論』を読もうと努力したが、やはり寝た。それで津に到着したとき、1分間の停車時間ギリギリまで目覚めず、危うく亀山まで行ってしまうところだった。よって乗換時間は2分。しかも停車位置はやけに渡り階段から遠いし、寝ぼけてフワフワしているし、で、1番ホームに立ったとき、向こうで伊勢鉄道の列車が去っていくのが見えた。あーー、がっくり。
改札を出て、伊勢名物赤福餅を買って気分が多少治った。700円の賠償ですか。
にしても今回は鉄路遊び記録がなかったので、乗継が成功すれば「伊勢鉄道各停初乗車」と記すことができたのになぁ。惜しい惜しい。

おわりに

まず、温泉に気持ちよく入れたこと。これが大きい。次に、快速とローカル線の両方を乗れたこと。これも重要。そして沿線途中下車が、雨天も心配されるなか、存分に味わえたこと。伊勢鉄道は置いとけば、かなりの成功例になると思う。楽しかった。

*1:プリントスクリーンを使えばよかった、と後になって思う。