南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

开封(Kaifeng)龙亭公园

(お断り:この記事は、当日を初回とする2009年2月までの数度の入場を元に、総合的に記述しております。)

解説

開封最大の風景名勝区で、宋・金時代の皇居と明代の周王府の跡地に開かれている。龍亭は清の康熙31年(1692年)に築かれた万寿亭で、亭内に皇帝の位牌が奉られたため、後に龍亭と呼ばれるようになった。清の雍正12年(1734年)、河南の総督・王世俊はここで万寿宮を建てて、遙かに皇帝のご機嫌を伺う地として使った。現在の龍亭の大殿は万寿宮の本殿であった。龍亭は高さ26.7mで、基礎部の高さは13m、北側に建ち南に向いている。

南蛇井の観覧

宋都御街の北の突き当たり、西に杨家湖、東に潘家湖をたたえた、市内最大の公園であり、最も有名な旅遊景点である。火车站より1路バス、鼓楼より15路バスでアクセスできる。また河南大学からは、三輪で3元である。公園東側の住宅街は入り組んでおり、迷い込まないように注意したい。なお、当公園には北門と東門、さらに天波杨府と内側でリンクされた入口があるが、正門は別名「午门」とも呼ばれる南門である。正門前の広場には昼夜人民が集い、観光客のみならず人々の戯れが絶えることはない。トランプ、麻雀、鞭打ち、こま回し、社交ダンスなどなど。この広場を取り囲む車止めの石に、水滸伝の英傑108名が一人ずつ刻まれていることを知ったのは、昨年の秋になってからである。また地面には、古都開封の二重城壁と主な景点が記されている。
f:id:Nanjai:20171106095259j:plain 車止めの石に彫られた杨志。
入場料は来中した当時から、この09年に至るまで徐々に値上がってきている。もともとは35元だったのが40元になり、現在45元。春節や菊祭りのときのみ一時的に値上げすることがあったが、それを切欠として通常料金も値上げたままにしておいていると見ることもできる。学割の半額では35元。
園内では毎日定期的にパフォーマンスが催されているが、とくに見逃せないのは8時半?の開門直前に、この午门広場で行われる朝一番で、大宋朝の歴代皇帝が趙匡胤よりずらりとお目見えする。拡声器で流れる解説は理解できないが、かつてこの地に君臨した龍のお姿を拝するだけでも恐れ多いのだから、それ以上の欲を持ってはならない。なお、この朝一番は、観光客の壁を掻き分けさえすれば、入場料を払わなくとも拝むことができる。
チケットはビリビリ千切られるので、予めミシン目を折ったり切りかけておくと良いかもしれない。年票なら係員に刷卡させる。入って左手奥にトイレがあり、年票購入後は無銭で入れる公衆便所として確保できる(特典ヵョ)。先述の通り、左手に杨家湖、右手に潘家湖をたたえた細長い砂州?を宮殿に向かって進む。途中潘家湖側に湖心岛という小島が浮かんでいる。両湖をつなぐ水路にかかるのが、錦帯橋ならぬ玉带桥で、この傾斜の強いアーチはアキレス腱を苦しめる。杨家湖は翰园碑林や天波杨府にも面しており、色鮮やかな船が行きかう。また西岸では寒中水泳を愉しむオッサン方を目にすることができる。朝门までの砂州(と言っていいのか?)の両脇と湖心岛には、国際色をあらわすため、オリンピックのマスコットキャラクター模型と世界各国の概略を記した解説板が並んでいる。ここは毎年秋に開催される菊祭りで、世界中の菊を集めて展示する(といわれている)メイン会場となるため、普段から「世界の龙亭」をアピールしているのである。尤もこのキャラクター達は、抜けている大会があったり配色が誤っていたりするなど杜撰な点が多い上、菊祭りの際には杨家湖北岸の園片隅に追いやられている。ちなみに札幌は見つかったが、東京と長野は見つからなかったようである。全体的に冬季大会のほうが多め。そんなことはさておき、拝殿と参りましょう。
嵩呼(Songhu)はちょっと撮り甲斐がある。清掃用三輪車もこれだけは避けて通ってくれるので、他の参観者がいないタイミングを狙ってみよう。宋代の宮廷衣装や小役人の服装も試せるが、当然執拗に誘ってくるので気をつける。ボート乗船も含めて、朝门にはこの手の客引きが多い。日本人として、記念程度に留められるか、交渉力に自信がないので無視する。ちなみに朝门やここを西へ入った月季园などでは、カップルからカメラを差し出されて貴方が撮る側にされることもある。この月季园や荷花池は常にひと気がなくて、清掃員の昼寝場所や老人が詩吟を愛でるところになっている。杨家湖を静かに一望できて、騒がしい旅遊区を避けたい散歩時などには快適な空間である。その先が天波杨府と接続している西門である。また道草を食っておる。
やっと朝门をくぐれる。門内の軒下には宋代东京开封府と現代开封市街の縮小模型が置かれている。どっちかというと山陕甘会馆のもののほうが精巧であるが、こちらは参観者が多いため傷みも激しいのだろう。そこから東にかけて、菊祭りの際に党主席などが来訪した写真が掲載されているが、これはどの景点にも見られうる。真紅の土台が映える、龙亭の本殿。一日2,3回ほど、朝门から龙亭へ登って婿とり話をやるパフォーマンスがあったが、2008年以降本殿内はガラス張りとなり人形が配置された。パフォーマンスは龙亭東側の別邸で催されるようになった。随分寂しさを覚えたものである。この07年9月に初めて訪れたときは、本殿で盛大なる演技を見られて実に幸運であったと思う。皇帝の娘が、美辞麗句を並べる婿候補に対してあれはいやだ彼もいやだと切り捨てる。拡声器から流れる言葉は依然として分からないが、雰囲気としてそんな風に意味が取れる。最後にこちらもコスプレコーナーが設けられる。やはり宮殿で催すほうが味が出ていい。
城壁内は特に高層の建築もないため、この龙亭が最も高台である。東西南北全方向、市街地が一望できる。尤も、市街地と呼べるのは南方向のみであるけれども、スモッグのかかっていないときは絶景である。とくに夕暮れ時の4時台からは、西日に照らされてキラキラと輝く杨家湖が美しい。せいぜい4,5階建てを限界とした現在の町並みなら、敢えて高さ制限を規定しなくとも問題はない。が、旧市街を取り壊して新しい街を建設する動きが、とくに城内西方で起きてきている。あえて景観を守るほどの町並みも多くはないが、町全体が古都感を滲み出すような开封であってほしい。
龙亭の北側は、ほぼ市民公園である。植物園として整備されてはいるが、中高年が集まって楽器を奏でたり囲碁マージャンに興じたりする場所である。わずかだが遊具や芝生広場もある。菊祭りの際もここまで菊の花が精彩に及ぶことはないので、さながら別の公園のようである。蚊を気にしなければ読書を楽しむこともできる。北東隅に小高い丘があって、登山を試みたことがある。
最後に、夜。午门前の広場は毎晩のように手芸の場としてにぎわうほか、2つの湖で盛大なイルミネーションが輝くのも必見である。
f:id:Nanjai:20171106101146j:plain 潘家湖ごしに望む龙亭。

(画像はいずれも2017年撮影)
(map:开封龙亭公园)