南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

西安見聞路の旅 4:兴庆宫公园,市博物馆,小雁塔

この日は一日、休息日かつ一番凹んだ日。市内バスを乗り継いで動き回っただけ。一日乗車券がほしいところ。
出かける前にバス路線一覧を参照に、半坡博物馆,丝绸群雕,小雁塔,青龙寺の順になるようプランを組んだが、出鼻をくじかれたので全部乱れた。谭君は朝から駅へ行って列車を待つというので、この時点でお別れ。メールアドレスを交換して握手をする。短い時間だったが、楽しい旅の時間と新しい見識をありがとう。「今日は青龙寺に行く」と伝えたのに果たせなかったな。

半坡博物馆

南门から11路に乗って半分寝ながら東郊外へ。高速道路ではなくて環状道路の高架橋が交錯したところを過ぎて下車。別の路線を一区間分歩くと博物館。ただでさえ寒いのに、さらに寒い姿をしていて一瞬で入る気しなくなった。一応開いてそうだったけど、寒風に晒されてか完全に寂れかかった空気が漂っていた。これは、1953年に発掘された約6000年前の母系氏族社会の村落遺跡で、新石器時代に属する。秦朝以降の華やかな都城の歴史が注目される西安において、異色のスポットとして見る価値あるかなと思ったが、やはり第一印象は大事だと思った。予定していたメインの見学地で実際に入場しなかったのは、これが唯一。

兴庆宫公园

しばらく半坡立交の停留所で、どのバスに乗ろうか思案している。プランは破棄してしまったけれど、意義ある乗車はしたいから。ここは結構何路線か集まっていて、待ち人も常に多い。237路は車掌付で、どこまで乗るか申告しないといけない。兴庆公园で通じたのに彼女のアナウンスに従って降りたら、一つ手前の兴庆路だった。
唐代三大宮殿のひとつである興慶宮跡地に造られた公園。降りるはずだった停留所の前に東門がある。入園無料の市民公園。危なげな遊具もある。この公園で注目すべきは、遣唐使として入唐し、科挙に合格して政府の要職にも就いた阿倍仲麻呂の紀念碑である。時計回りに歩いてゆくと、スコーンと高い碑が突然現れる。散策している中国人カップルも、一応目を留めてはくれるが、足を止めるものは少ない。念願の帰国は叶わなかったというから、まだこの土に眠っているのである。合掌。碑とともに寒風に吹かれながらおやつの蜜柑*1を食べる。
園内に食堂売店もあって、温かい麺類なら食えそう。その他、ぐるっと公園を巡ったが、兴庆湖は大方凍っていたし、再建された楼や亭も雪があれば逆に美しいが寒いだけだと物寂しい。
守衛小屋や車止めもある、わりと頑強な西門を出ると、住宅街に直結している。バス通り东关南街に出て、火车站行き705路に乗車。昨日迷いこんだ駅西のバスターミナルにて降車、別の路線で钟楼へ。

昼間の回民街

昼間でも、北院门(街)にはイスラム風乾物屋などが並んで、人通りが絶えない。とりあえず蒸しモロコシ(結局これしか食べなかったが)を齧って、どれを試すか物色することに。沿道の泡馍店もちゃんと営業しているがやっぱり入れなかった。その勢いで行くから、他の回民小吃もつまめないで眺めるだけ。北院门街を一旦抜け出てから、少し手前の西羊市街に入り込む。北院门街から小さな矢印が清真大寺を示しているのだが、この道を一通り抜けても見当たらない。北院门街よりも小狭なこの道は、表よりもイスラム住民の活気に溢れている。この中に清真大寺が潜んでいるはずなのだが、観光客の出入も見当たらないのは何故だろうか。次第に食べることを諦め、清真大寺を探して可能性のある路地まで往来したが、遂に見つけられなかった。長物を積んだ三輪車の通行で混雑してしまった北广济街*2が突然大型ショッピングセンターの駐車場に変わり、交通整理される車の間を危なっかしく通り抜けると西大街に弾きだされた。んあー。

市博物馆

その广济街から南方向のバスに乗り、市博物館にて下車。小雁塔はこの東側にある。ところが、目の前の公園に塔は見えるのに、大きく頑丈かつ新設されたような門があって、容易には入れない。塔は園敷地内にあり、ここで金を払わねばならないようだ。門に付属した售票センターに入る。ところがここで売っているのは入園料ではなく、博物館の入館料で、しかも50元とくそ高い。一瞬ひきかけたけど、塔のためだと思い払った。もちろん学割は利かない*3。2007年5月にオープンしたばかりの超新しい博物館で、まだ広報も行き届いていないのか、訪れる外国人は多くない。門は西向き、館は東向きで回り込まねばならない。そしてこの博物館は気安く私に殴打をくれる。入館すると右手に映像コーナーがあって、すぐに誘導される。これは小雁塔の成り立ちなどを解説するものであるが、ここで10元を徴収し呉れるのが塔のチケットなのである。先の券には「博物館は小雁塔景区内」って記載してあるし、もう50元で充足と思ってたのにコノヤロー。後で分かることだが、塔だけの見学なら南門が別にあって10元だけで済むらしい。何気なぁく塀などで二者を仕切ってある。まったく嵌められている。ともかく、映像を1回半観て、展示場へ移る。らせん状のスロープを各階に上下する構造がなかなか粋だ。文物はほとんど記憶にないが、西安都城の歴史が模型などを通じて解説してあるところに印象が残る。とくに唐の長安を模して築造された京都平安京も復元模型で比較されており、興味深い。(夕方帰宿した際、武汉人が「今日は博物館を2つみてきた」と話していたので、どっかで会ってたかな?)

小雁塔

館内で枝折りのような券をくれた小雁塔は、荐福寺の仏塔である。この寺は、唐の高宗供養のため、邸宅だったものを改築して造られたそうである。西側の通用門を通って境内に入る。高僧義浄ゆかりの寺として名高いそうだが、塔に倣って小ぶりな寺院で、日本でいう近所のお寺さんに近い雰囲気である。映像でも説明されたとおり、築造当時は15層の塔だったが地震によって上部が崩落し現在は13層となっている。入塔といっても基礎部分までしか上がれず、ガランとした空洞だったような気がする(これは本堂さんの記憶かもしれない)。大雁塔と比べて、大きさはもちろん形も随分崩れて、ちょうど金閣銀閣を見比べるような感覚。けれどその無闇に修復されない姿が、逆に流れた年月の重みを感じさせる偉大さを醸し出している。ほんのり西日が差すようになった境内で、ポカンと塔や寺を眺めて過ごすのも良し。博物館の敷地には、整備されたばかりの広大な庭園があって、こちらから塔を望むのもまた良し。博物館北側の停留所から南门へ直に帰って、晩げまで一休み。

放浪回民街と諦めの味千ラーメン

今日に限らず、昨夜も泡馍が食べたくて回民街をうろうろした挙句に、小吃すら食えずに店がしまいかけた暗い通りを空腹のまま去るというお粗末な結果に終わっている。同じことを二度(お昼にやってるから三度か?)繰り返したくないので、北院门(街)を一通りあるいて、この気力では無理だと諦めた。鼓楼の真向かい辺りに、味千ラーメン(味千拉面)がある。近隣の中国銀行で200元引き出してから入店する。元来中国での旅行で名物料理には拘らないのだが、西安のような大都市ではできるだけチェーン展開している洋食や日本食の店に頼らず、中華飯を取るようにしたい。一方で寮を出る前に、ネットで西安に展開している味千の店舗をチェックして、機会があれば一度行ってもいいなとも考えていた。まぁ今日は休息日だから原則をはずして、日本食に甘えてもいいかな。これを食べることで元気になって、明日より躍動すればいいや。
一階は入り口だけで、階段を上がった2階が店。鼓楼と西大街の夜景が望める洋風レストラン席と、一般的なラーメン・うどん屋風の席とがある。客の入りが多くないのにメニューを眺めすぎたので、ノーマルの味千ラーメンを避けることになって味千酸々辣々面(25元)を頼む。ところが出てきたラーメンを見て、オイこれはスパゲッティ麺だろと思った。ここが、ちゃんと日本のラーメン麺で出てくる上海店と違うところだな、きっと。兰州拉面がまんま出てこなかっただけ、日系なのかもしれない。酸辣は中国のスァンラーではないように感じたのは、コクのある白湯スープに混じっていたからだと思う。この店は上海のように座席で勘定をしてくれないので、食後に自分でレジへ行く。

蜜汁

こうして一日分の空腹を満たしたのに、钟楼の小摊儿は上手に人を誘う。おじさんと男の子が、洋梨の粒粒入り蜜ジュースを売っている。温いのと熱いのがあるらしいのだが、百分百の習慣で「温いの」を頼む。さいの目に切られた梨の粒がアクセントになりながら、心も身体もホッと暖まる。ちょうど日本の甘酒みたいなもんだね。一杯3元。ちょっといい気になって、夜食にとまた芙蓉饼*4まで買って、一区間なのにバスに乗ったら降りれなくなって3つぐらい通過した。それでも、いい気分。
つづく

*1:昨日お姉さまが谭君のために買ってきたもの。部屋中に転がっていたので押し戴く。

*2:地図で描かれているよりもかなり狭い。

*3:当旅行の単一入場料で最高値。

*4:実はラーメン一杯じゃ物足りなかった。