南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

郑州中牟(Zhongmu)县城

县城を歩くというのは、何か一つでも景点があると面白いものだが、そうでないとよっぽど雰囲気のある町でなければ足労である。ところが今回は、観光以外に目的があって、敢えて訪れた。中牟*1は既に、官渡古戦場*2の際に入境しているが、中心地には行ったことがなかった。开封客运西站からバスのあることだけは知っていた。

前半は繁塔

この日は初めに、河南大学の日本人二人と昼食後に繁塔を見に行った。南門からタクシーに乗ったのだが、繁塔は古い密集住宅地の中にあるため、タクシーが行ってくれるか事前に確認した。ところが実際に着いてみるとビックリ、あの風情ある集落はほとんど瓦礫の山と化しており、車はかなりスムーズに寺の門前まで着けた。寺の管理人ぽい方の家も跡形もなかった。あのレンガ造りの家々群からひょっこり顔を出した繁塔の姿は、もう拝むことはできない。現在の禹王台公园と繁塔をドッキングして、さらに大きな「新・禹王台公园」を造る計画がある。中国人の旅行ニーズに合った観光都市化を進める同市には、古い住宅地の保存など眼中にはない。3人でこの事態を憂う。
ただいま菊祭り期間中のため、開始から10日ほどは年間パスが使えない。もちろん私は有効期限が切れているし持参していないので、もともとチケットは買う。後ろめたさを若干感じながら学生証は使用して、半額の5元。きょう金を払って久しぶりに繁塔を観て一番良かったと思ったのは、チケットの裏に汴京啤酒の広告が印刷されていたことだ(ぉぃ。以前来たときは壁面の工事が行われていたが、今回改めて見ると欠けている仏像を新しく作って填め込んだことが分かった。色合いも表情も周りと比べてやや不自然。
おっと、今日は繁塔を書くのじゃなかったね。チケット購入の間ずっと我らを待っていた先ほどのタクシーは痺れを切らしたか居なくなっていて、バス通りに出て流しを拾う。菊祭りで年票が使えないからもう帰るということで河南大学に向かっていたが、ふと「この車、解放路を通るんなら自分だけ途中下車して刘少奇陈列馆に寄っていこうかな」と考えた。学院门と东司门の間(第一人民医院から出てきたところ)で降ろしてもらって、お二方は南門に送るよう運転手に伝える。この陳列館、かつて千葉さんが無料で見学できたとおっしゃっておられたので、大したところでもないだろうが、年票の参観漏れである。タクシーなどで前を通ると、あぁここか、と思うのに、いざ歩道を歩くと何往復したか分からない。そんでもって、售票处に15元ときたから二度と入る気なくなった。
時間はあるけど遠くにはいけない。行くべきところは早めに行っといたほうがいい。ということで、中牟でも行くか、となったのだ。

中牟へ

10路のバスは少し大回りだが、この場所から最も徒歩を削れて低価格な路線だ(学院门から4路という手もあったか)。客运西站は、長距離移動の拠点である中心站や近郊移動の相国寺站といった役割がないので、郑开城际公交以外では敢えて利用することもないが、新乡、濮阳、济源などへ中心站よりやや低価格で乗れるという利点がある*3。中牟へは7元。もし郑州が流水公交でなかったら14‐5元であると考えると納得がいく。西站はこの中牟と尉氏の便数が豊富。
切符には、20分位余裕のある15:30発と記載されているが、トイレを済ませて乗降口へ行くと先発のバスには断られてしまった。後車もほとんど埋まっていて、さらに後続のバスが入場してくるまで待機しているに過ぎないのだった。車内は蒸し暑いし、座席の間隔が狭く膝を圧迫されて痛かった。西站発着のバスは全体的に車質が良くないので注意。結局ほぼ定刻発車
さて、ここであらためて、中牟へ行く理由をお話しする。私が中国に約1年半滞在して最も魅了されたもの、それは全封闭(机动)三轮车と呼ばれる定員4人ほどの軽三輪自動車である。大抵はタクシーとして走っている。しかし、政府の政策なのか大都市からは徐々に締め出されているのでなかなかお目にかかれない。开封でも郡部から流れ込んできたような一二台を見かけたくらいだが、これに嵌ってしまった。これまでに数を見られたのは陝西省五丈原と开封杞县だけであるが、郑开大道上の中牟县内郑开城际公交停留所にも何台か集まって客待ちしているのが前々から非常に気になっていた。これの発信元は中牟县城に違いない。きっと中牟には三輪の天国があるのだ。

三輪の桃源郷

バスは官渡に停まった程度で、滞りなく3‐40分ほどで中牟に着く。そして我が予感は見事に的中。夢のような理想郷が降り立った足元からずっと続いていた。赤い軽三輪自動車が延々と道端に並んでいる。他の自家用車やトラックなど物の数ではない。客に飢えたドライバーなど目もくれず、その赤い車体を心中涙しながら眺めた。汽车站から西へ歩道を伝って、車は途切れることない。交差点を曲がってくるのもほとんど三輪。そのデザインも意外にさまざまで、丸いの四角いの、ヘッドが尖ったの大らかの、色もたまに淡緑、濃緑や白が居る。南北のメインストリートをまた歩道に沿って、市街散策。時々、怪しまれないように銀文字を読むと、多くの車が「富路」と刻んでいる。ボディ側面にも「富路」のシールが貼られている。一番詳しかったのは「光速富路轻骑集团」*4。それにしても、このコンパクトさと馬力が魅力。欲しい。ここで見られる全モデルを一台ずつ欲しい。田舎では売れるから、まだまだメーカーが競って新車を出すと思う。もっと安くなれ*5。1kmくらい、目から涎。これのためなら何度でも訪れたいと思う。
指示板に「火车站」の文字を見つけ、指す方向へ。いきなり殺風景な広い道路。三輪も何にも通らない道。せっかく火车站から汽车站まで乗って愉しもうと思ったのに、あまりに死んでいる駅だった。曲がりなりにも普快などが結構停車する駅であるが、こんな寂しいとは思いもよらなかった。実は开封で宿に困ったら、ここ中牟の駅前なんかに泊まろうと考えていた*6だけに、まったくそうしなくて良かったと思ったものだ。宿どころか飯屋もちっともない。タクシーも三輪も一匹も待機していない。人が居ること自体不自然な場所だった。
やや空腹を我慢して反時計回りにバスターミナルへ戻る。さっきの客用三輪の大通りとは打って変わって、こっちは貨物三輪の花道であった。大蒜などの出荷作業が行われている。町の裏の姿も見られたのは良いことだ。
中牟からの帰りは何故か6元。一元要らないって返ってきた。17時半ぐらいなのに19:00発と記載されていて、うわっ、いつ帰れるんだ、と驚愕したが、18時半くらいには出てくれた。まぁ出たはものの、乗車率が低すぎて市内をノロノロ走り頑張って集めた。真っ暗な国道をガンガン飛ばして、おっ今日は寒いなと(窓開けとくな)。そうそう、中牟汽车站からも郑州と結ぶ大型公交が流水で出ているようだ。今度は郑州から中牟乗り継ぎで帰ったりしてみようかな。
1路で鉄塔公園まで乗り、残りを無駄に歩いて帰り着き、烩面を美味しくいただく。

(map:郑州中牟县)

*1:中牟は「ジョンム」と読む。牟は一般に「Wu」と発音し、「Mu」は地名などの変則的な読みである。けれど、日本にも大牟田牟岐など「Mu」と読む地名があり、何より平仮名「む」やカタカナ「ム」の元でもある。こんな共通点を中牟の人々に教えてあげたいと思う。

*2:县城より数km東で、开封-中牟間を走るバスを官渡镇で途中下車するのが良い。私は开封から自転車で行っている。

*3:新乡へは今年から中心站にて、郑州と同様の都市間流水バスが運行を開始したので、運賃もその分下がって敵わなくなったかもしれない。詳しいことは確認していない。

*4:帰国後の調べで、山东徳州富路车业製らしいと分かる。やっぱり山東省はバイクメーカーが多い。

*5:ネットの中古販売価格で6000元くらいみたいよ。

*6:列車で郑州や开封にアクセスするのも3‐5元程度と安上がりだし。