南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

上海松江(Songjiang)

いろいろと予定が狂って一日余ってしまったので、何か面白いとこねぇかなーっと前夜YHに張られた上海の地図を眺めていたら、西部の松江区に方塔という景点を見つける。郊外のスポットでも周庄とか朱家嘴のようなメジャなとこより、隠れスポットを選んでしまう癖がある。ホントは、上海北火车站跡地にあるという鉄道博物館にも興味があったのだが、今から調べるのも面倒だ。今回は上海に日数をとる予定でなかったので、生憎地図を実家に忘れてきた。地図なくても大雑把に行けるところがいい。
もう一つ、松江を選んだ理由はアクセス。松江火车站に近そう、というのがそれ。元来中国鉄路というのは長距離移動のためにあるのであって、バスが毎日何便も出ているような近距離にはあまり利用されない。ましてや松江は上海直轄市内。でも、そこが逆に、国鉄で市内移動ってネタとして凄く魅力。それに上海がもし浙江省の一地级市だったら、松江は位置的にも発展度的にも松江县であり、市区から县なんて普通。時刻表を繰ると、当然上海南の次の駅だけれども、長距離も含めて案外多くの列車が停まることが分かる。上海だから、たまには変な外国人もいるだろうということで、片道10元くらいだったら試してみようと思った。

上海南火车站

上海南発が9時台だから、とズルズル寝床から抜けられないで、どうも微妙な時間になった。YH門前で鸡蛋煎饼を頬張って、南京东路站までの道すがら豆浆を一杯飲み、地下鉄へ。2号線一駅で人民广场站、1号線へ乗り換えて上海南火车站站。上海の地下鉄は無計画に増設されているのか、最大の接続駅人民广场では苦になる移動距離を味わわされる。さらにひどかったのが、後ほど紹介する宜山路站。とりあえずは上海南火车站へ。
空港かと見紛うような、大規模で現代的でちょっと変わった構造の駅である。長江以南方面の発着を担う同駅は、まだ出来立てなのだ。民工なんか気後れしてしまいそうな、かなり綺麗な駅構内である。その円形の建物の1階が出站口(到着ロビー?)、2階が售票处と进站口(出発ロビー?)となっている。切符売り場は場外にもある。いずれも空港並みの施設である。さて、券売所の上に電光掲示されている今日の列車一覧では、まだ无座なら買える状態だった。でも、さすがに気が引けたな。長距離列車の玄関口で、隣の駅なんか買えないよ。そういう近距離人民が乗るような駅でもないもの。というわけで、向こうから乗って帰ってくることにしました。
じゃぁ、鉄路じゃなかったら、どうやって松江に行くの? 全然見当がつきません。長距離バスかな?道幅は広いが迷路のような地下通路を、ひたすら指示板に従って歩かされてたどり着いたのが客运南站。でも、一番近くても嘉兴や嘉善(浙江省)で、上海市域内は長途バスで行くところじゃなさそう。次に、上海市バス停留所を見に行く。駅の北側と南側と、駅周辺に散らばっている停留所。全部は確認してないが、路線案内図などで見る限り難しくてお手上げ。最後に賭けたのが、地下鉄路線図に目を凝らして見つけた、9号線の末端駅松江新城站。新城といわれると、松江市街から離れた工業団地やニュータウン的なところが想起され、モロにはずす恐れもあった。でも、その先にきっと新たな道があるだろう。

松江区へ

しけた紙幣しかなくて券売機で買えず、窓口購入。「Songjiangxincheng」て、なかなか正確に発音するのは難儀で、ちょっと噛んでいたけれども通じた。6元。
上海南火车站站は、3号線の起点駅。この3号線は、地下鉄といっても大部分は高架線を走るので、都市電車の様相である。元来上海の地下鉄は軌道交通と総称しており、地下を走るとは限らないのだ。これまで上海火车站の北側に、一瞬名鉄金山駅と見間違うような駅があって、随時カッコイー電車が発着しているのを見て不思議に思っていた謎がようやく解けた。この3号線は西の外周を回って上海火车站から北へ向かう。この西側外周部分(宜山路-宝山路間)を共有し、環状にぐるぐる回っているのが4号線。規模はやや小さいが、湘南新宿ラインと山手線といった感じだ。ともかく、その3号線に初乗車。今まで幾度も上海に来ているのに、1号と2号しか知らなかった。上海市街を高架電車から眺めるのって新鮮だな。
宜山路站。3号、4号、9号各線の接続駅。但し。どれ一つまともに繋がっていないのが現状。4号線は一度改札を出ないと乗継ができない*1。3号と4号が同じホームで乗り継ぎできるのは次の虹桥路站から先で、宜山路では駅そのものの距離が近いに過ぎないのだ*2。次に、只今乗り換える9号線。工事中の仮設の渡り廊下みたいなのをダラダラと歩かされて、地下に降りてからも大人数が移動するには狭すぎる通路を経させて、やっとホームに立てる。下手したら一駅分くらい離れているかもしれない。往路はまだ良かったが、帰りは通勤通学客の大群とともにこの通路を歩き、経路設計や誘導の仕方があまりにも杜撰であると感じた。
上海地下鉄の中でも、比較的新しい地区へ伸びてゆく9号線。ビジネスマンや大学生の乗車率が圧倒的に高い。覚悟はしていたが、全く席を確保できなかった。また、スーツケースや麻袋など大きな荷物をもった乗客が多いのは何故だろうかね。ずっと地下かと思いきや、九亭付近で地上に出て高架を走り、松江大学城を過ぎるとまた潜って終点の松江新城。この妙な造りは今後の延伸と関係があるのだろう。急速に開発が進むといっても、まだまだ広大な平原の中にぽつぽつと団地や工場が建ち始めてきた感じの郊外を、快速運転する電車から望む。あと一駅の大学城で大方の乗客が降り去った。現在の松江の中心はここらしい。松江新城は、味千ラーメンを含むレストランが数軒入った大きな駅舎である。コンコースにまでバイクタクシーが進入し、客のスキを窺っている。かなり新しい駅だが利用者は少なく、彼らも案外稼げてないのでは。私も、掲示された公交路線図を手がかりにバス停へ。
松江公交は、距離(または停留所数?)に応じて運賃が上がる仕組みで、1〜3元。停留所にて運賃を確認することができるのは便利。ここで乗った火车站行きの、終点だけ2元、手前まで1元という設定がやや癪だったが。バスは前後いずれのドアからも乗車でき、カードは運転席横または乗務員のところで刷卡、現金は後部ドア脇の乗務員に支払う。新城から老城までは、蛇行路線ではあるが、距離もそれなりにある。のちに徒歩に挑戦したのは過ちだった。途中、右手(西方)に塔らしき影が見え、方塔はこれかなと。

松江火车站

停車本数の割りに寂れていた中牟駅を見たあとだからか、松江はまだマシだと思った。飯屋もぽつぽつ営業しているし、上海の隣の駅ながら地元のユーザーは集まるらしかった。広場には、ウイグル系物売りが目立つ。切符売り場は、さすがに大きすぎるガランとした空間に、2つほど窓口が開いていた。上海南までは、たしか8元と表記されていた。なんだ、地下鉄とバスで来るのと変わらないじゃないか。そして、上海方面の列車は14時台から19時台ごろまでポッカリ間が空いていて、とても帰路に使えるダイヤではなかった。逆方向に嘉善か嘉兴まで乗って、折り返してくるのもいいかととりあえず保留。5元の水饺を啜って、まずは町見物へ。

西林禅寺

さきほどバス車内から見えた塔のある寺院。方塔ではなかった。老城やや西寄り、古い町並みを模したモールの一角にある。表通りは華やかだが、寺を一周すると侘しい生活の一端が見られる。拝観料は6元。上海の寺は比較的安く入れる。中では年配の信仰者達が催しの始まるのを待っていて、拝殿の前に簡易椅子がずらりと並んでおった。そんな恐れ多き雰囲気をくぐるようにして、仏殿と仏塔を拝観する。塔は遠目に見るほど大きなものではなく、内部の階段も封鎖されている。塔内を時計回りに回らないとご利益がないよ、との旨の注意書きがある。中は仏塔の解説と記念切手などの展示。

醉白池

火车站からスグ。ほぼ向かい側に松江汽车站がある。小さなターミナルで、嘉善,嘉兴,平湖などへ行ける。
入園料は12元。この町はどこも安いのか? 宋代に、酒豪白楽天のように酒をたしなむ庭園として造られたとされる。園の名は蘇東坡の『醉白堂記』に因む。西半分は池を囲む庭園で、東側は楼亭が建ち並ぶ。きなこキャラメルを食べながら池の周りを散策し、列車の音を背にベンチに座って、ディアボロ(縄を使って操る中国ごま)を練習するご夫婦を眺めた。男性の方が意外に上手く操っておられた。東西に細長く、いつまでも奥に奥がある庭園で、碑文の回廊や、鑑賞者のいない書画の展示室、孫中山が滞在したとされる楼閣などが点在する。結婚式に用いられた新郎新婦をのせる籠など、民俗用品もさりげなく置かれている。静かで、案外デートとかにも良いところ。

方塔探しと帰路模索(事実上の松江街区ウォーク)

どこの地図でだったか、方塔は町の東のほうにあると知って探し始めた。当然何の手がかりもなく、見つからない。その途中で、松江と莘庄(Xinzhuang、地下鉄1号線の南端駅)を結ぶ公交バスを目撃。そうだ、帰りはそのルートに ! ということで、今度はその路線の停留所を探して右往左往した。同じ道を帰りたくないという欲求は、とくに目的のものに出会えなかったときの癖である。そうやって3時間くらい、松江の老城地区を歩き回った。老城といっても、通りはかなり新しい店が入っていて小奇麗になっている。ただ、歩道の舗装があまり良くなくて、疲れた足にひびく。薄暗くなってきたので、松江新城站へ戻るようにして探したが、空腹も圧し掛かってきてついに観念した。コーヒー牛乳を買ってバス賃を捻出し、下校時の小学生らとともに帰途に着く。1元区間に入っただけでも良いほうか。

ラッシュに揉まれて帰宿

9号線は始発駅からなので座っていけた。宜山路から最短で帰ろうと思えば、3号線を中山公园站で2号線に乗り継ぐのが適当だが、せっかくなので上海火车站站を経由して乗り鉄を愉しもうと思った。それにたった3駅では、3号と4号を乗り換える余裕がない。先に述べたように宜山路では4号と構内接続されていないので、まず3号に乗り換える。ちょうど退勤ラッシュで、東京並みの混雑である。9号線とは比較にならない混みあいで、息苦しさもあってスグに虹桥路站で下車し、ホームに佇む。なんかホームで電車を見送っても咎められないって、この国の鉄道では不思議なことだなと。エアポートリニアでもそれやったら怪しまれそうだもん。数分待って4号線に乗り継ぎ。上海火车站のプラットホームの延長線、つまり操車場を上から見ることができるのも、この線の良いところ。中国の客車編成は長いので、案外奥まで線路が続いている。大都会のど真ん中とは思えない構図。それから、夜景も綺麗。3号線と別れると、4号線は地下鉄に変わる。ずっと高架電車、でもないのである。世纪大道站で2号線に乗り換え、ちょっと遠回りで南京东路站到着。払ったのは7元だけれど、10元分ぐらい乗ってるな。ちなみに、宜山路から此処まで一度も席に座ることはできず。
YH近くの馄饨店が潰れてしまったので、新たな食堂を探さないといけない。今日は飯が食べたかったので、同じく付近にある店ではダメ。一つ、とっておきのエリアがあるんだ。地下鉄の出口より、山东中路?をYHとは逆方向に歩いていくと延安路よりは手前に小さなレストラン街がある。初めてこの地区を彷徨ったときに見つけた、雰囲気のいいところ。面や盖饭くらいの中華を手ごろに食べられると思う。今夜は鱼香肉丝饭(スープがサービスで付く)で8元。今後の食どころ。

※方塔園と醉白池は、上海専門の観光指南書には載っています。地下鉄9号線松江新城駅より12路?のバスで旧市区へ。

*1:3,9号線とも、宜山路到着前にこの旨のアナウンスが入る。

*2:これは、宜山路から反時計回り方面の4号線乗車をする場合、運賃は宜山路−虹桥路間の往復分も足して計算されるのだろうか。