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南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

廈門Feverの旅1:香港、深圳

はじめに

留学帰国の際、福建出身の友人に「二三年以内にあなたの家へ行く」と約束してからいつしか6年。ようやく廈門(アモイ)訪問という形で実現した。この間、優先される开封帰郷や反日デモの激化などで何度断念を余儀なくされたことか。しかし、漠然とではあっても行きたい気持ちは薄れることはなかった。
2006年人生初の海外旅行以来となる、到達最南端更新の地、香港。今回旅の起点および中国入境地点をここに定めた。長らく中国南方航空广州便を有力視してきたが、厦门へのアクセスには广州発の夜行列車よりも深圳発の动车组のほうが本数が多く、また香港便のほうが便数も豊富*1で午前便を利用できれば出国当日中に厦门到着も見込めると踏んだからだ。高铁発着駅深圳北から16時台に乗れるDを4,5本リストアップして確実と考えていた。最大の難点はといえば、香港と中国の2つの出入境箇所を通過しなければならない煩雑さで、また香港島内の移動も最短に抑える必要がある。これについては様々なルートを検討した結果、香港国際空港で入国チェック直前に乗り換えられる深圳行きフェリーを利用するのが最も時間を読めて出入境手続き(香港通過)を省けると判断した。フェリー深圳側の蛇口港は地下鉄2号線に接続しており、深圳北站まで乗継2回で移動できる。昨年の北京に続く初めての入境地点としてはあまり余裕のない行程だが、精一杯の準備はした。
一方、16~18日の厦门滞在日程についてはほとんど友人に手配してもらった。私の要望は2つ、一日だけ世界遺産福建土楼建築群を観に行きたいこと、帰りは广州まで寝台列車(卧铺)に乗りたいこと。近年は夜行でも硬座しかとれず体に堪えていたのでたまの贅沢がしたかった。私の来訪を歓迎する朋友は、列車の寝台切符確保から宿の手配、土楼一日ツアーの予約までしてくれ、さらに当日は厦门周遊を企画し、市バスなどの交通費や食費も全部持ってくれて、あやうく卧铺票の代金まで払わせそうになり何とかこれだけは190元握らせた*2。おかげで3日間、宿泊費以外一銭も使わない、まるでパック旅行のような時間を過ごさせてもらった。言葉に関しても厦门滞在中は日本語のほうが圧倒的に多用され、ホント珍しい中国旅行だったと思う。
最後に、本シリーズ名「廈門Feverの旅」について。敢えて繁体字表記にしたのは起点香港への配慮、そして計画の甘さから急きょ半日滞在することになった深圳や帰路の广州など广东省も旅の通過点として欠かせないことから、簡体字「厦」にはない「广」を入れたいと思った。つまりここでの「廈」は广と夏(xia、厦と同音)の合体といえる。Feverは仕事などでモヤモヤしていた気分を思い切り晴らしたい気持ちを込めた。

香港・深圳より中国入境

セントレアまでは急行を利用するつもりだったが、出がけ早々腹痛に見舞われミュースカイに乗ることに。不慣れな土地への緊張感だろうか。両替して初めて手にした香港ドルFacebookに晒すなどして我なりに気を紛らした。今年は人民元も高値で1元がおよそ20円もする。厦门の朋友へは日本土産に下呂の銘菓「しらさぎ物語」を買う。名古屋の菓子類は夏場自分で食べづらいものが多い。
一昨年の「上海Plu苏(Su)企画」以来となる全日空便。カラフルな盛り蕎麦や抹茶プリンの機内食が変わらず懐かしい。食後は「ベイマックス(杯麺)」が上映され、中文字幕ながら初めてフルに鑑賞した。ベイマックスの弾力と感動しどころがよく分かった。それでも人生史上最長と思われる4時間20分のフライトは经济舱症候群の不安を煽る。心身の不安をよそに行程自体は調子よく流れ、予定時刻より10分早く香港に着陸し、おかげで深圳行きSky Pierは乗船手続きが30分前締切のため諦めていた13:30発に乗れることとなる。計画より1時間早まった格好だ。その受付カウンターで思うのは、香港での日本人は中国語(普通话)よりも英語のほうが自然なのかなと。「是」だか「Yeah」だか分からないような受け答えになる。地下電車に乗って码头へ移動。
眼下に見える船をさっそく撮ったが、これは中山(Zhongshan)行き。
船内は意外に広く席番号が振られているが自由なようだ。左舷に陣取ると直射日光がきつかった。機内でもらった香港入境カードはそのまま破棄したものの、中国カードを得る機会はなく、下船時に入手しゲート目前で記入。泊まるつもりのない深圳市内のダミー用ユースホステルを滞在先に記載し、メモは消去。その数時間後に起こる事態は予期せず。陸路国境はまだ経験していないが、これは人生初の海路出入境ということで、押されるスタンプとか少し感慨。潮臭い蛇口港の入国審査をさらりと抜けると、全土変わらぬ中国の空気にホッと落ち着く。とりあえず普通に中国語が通じるという意味で安心感を得たり。

ヤシの街路樹とか、やっぱり南国風土が満ち溢れてんなぁ。このムードは台湾以来だ。そして、暑い。

深圳地铁

今日一日で乗り物イベントは盛りだくさんだ。JR、名鉄、飛行機、フェリー、そして地下鉄。もし順調に厦门までたどり着けていたら、これに动车组と厦门市バスまで加えていたかもしれない。中でも近年中国各都市に続々開業中の地下鉄に試乗することは、一移動手段且つビッグイベントでもある。上海・苏州・北京・郑州に次ぐ5都市目*3となる深圳地铁のポイントは、切符が「トークン」であることだ。日本国内や既に利用した中国4都市の地下鉄は基本的にカード状のもので、「トークン」型は初めて。どのように扱うか興味津々だった。

「单程票」と刻まれた500円玉大ほどのプラスチック製コイン。思ったより大きいが軽い。ICカードと同様、改札機の読み取り面に軽くタッチする。
高铁専用駅の深圳北站までは7元。券売機が10元札を受容せず、案内所に持ってったら両替しかしてくれなかったのは不満。上海では行先を伝えれば窓口でも販売してくれる。交通の要衝ではあるが、深圳市にとっては西郊に当たるので車内は結構空いている。車内アナウンスは北京語、広東語、英語の順に流れ、広東語圏に来たことを実感させられる。「下一站(次の駅)」という意味の「ハイネザン」という語が非常に耳に残る。スマホの海外パケットし放題などを設定しながらのんびり揺られる。このまま2号線に乗り続けても市民中心で4号線に乗り換えられるが、駅数が多くてもどかしかったので世界之窗で1号線に乗り換えてみる。会展中心からの4号線は上梅林を過ぎると地上に出る。福田口岸から深圳北站への客で混んでいる。

まさかの深圳足止め

こうして15時過ぎ?にたどり着いた深圳北站は高速鉄道専用の巨大ターミナル。さっそく構内に4つくらいある售票处へ入ると物凄い長蛇の列。そして頭上の電光掲示板を仰げば、近距離の广州东などは当日便もいくらか残っているが、肝心の厦门行きは見当たらない。ただならぬ気配を感じながら並んでいると、隣の列でちょうど窓口に向かい当日の厦门の有無を尋ねている男性がおり、にべもなく断られているのを目撃。一応確認のため自分も斬られてみた。一定の間隔で発着しているGやDの当日乗車に初めて失敗した日となった。愕然としながら、私の今夜到着を待ちわびる友人に今日着けないことを伝える。向こうもはじめは驚いて明日土楼ツアーに参加するから何としても来てほしいと、切符のオンライン予約サイトを確認したり高速バスなどを薦めたりしてくれたが、結局諦めてくれた。そして、明日の朝一のDで向かうことを決断。再び盛況な窓口に並んで切符を確保した。〔列車情報:D2350次、深圳北07:36発-厦门北11:46着、二等座150.5元〕
その参列中に今宵の宿をBooking.comを通じて予約。一昨年上海の南京路YHを見つけたときと同様、クレジットカード番号不要の空室を手早く検索。しかも明朝深圳北站へのアクセスに至便な地下鉄沿線でなくてはならない。とりあえず2号線の湖贝站から徒歩5分程度という茶旅青年旅馆を確保。まだ深圳地下鉄網すら把握できてないのに、よく大外れしなかったものだ。そもそもチェックインまで2時間もないのに、予約が成立するのか心配でもあった。

茶旅YH@湖贝

思わぬ1泊のおかげで深圳地下鉄の3号線以外全線に試乗する結果となった。地下鉄5号線に乗り市東部へぐるりと周る。黄贝岭で2号線に乗り換えて一駅。茶旅ユースホステルは地下鉄の走る深南东路より1本南の裏通り、南极路に面したビル内にある。黒人バックパッカー(はじめ日焼けした同胞猛者かと思った)に続いて二階へ上がると、オープンなフロント。同じ階にマッサージ店もあり階下で客引きしているので、妖しい雰囲気も漂うが気後れしてはいけない。一泊70元、二段ベッドの下段に転がってようやく安堵した。
深南东路や向西路にはカジュアルなファストフード風食堂が多数並んでいる。一方、その西へ踏み入ると小路に雑多な飯屋が犇めいている。店頭に掲げられた料理名に全然馴染みがなく、はじめて同じ中国でも異郷の地へ来たことを悟った。幸い、留学中に足しげく通った「福建沙县小吃」をどうにか見つけ、水饺にありつく。その碗には筆文字で細やかな平仮名が書かれ、意外さと同時に妙な親近感を覚える。
多少暑苦しいがシャワーはせず休息。館内Wi-Fiにも接続したものの成人サイトは規制がかかっているので、国際ローミングのほうで満足する。

つづく

*1:その分割安

*2:さすがに申し訳ない、というより、中国鉄道利用記録はすべて自費で達成したい意地がある

*3:台北を含むなら6都市目