南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

忍者の里 伊賀上野

およそ1年半ぶりの日帰り旅は、夜勤期間中に計画した宇陀の温泉一泊旅行の寄り道観光地になっていたのを軽く改編したもの。新春きっぷのような特殊切符を使わないので、名古屋からJR伊賀上野近鉄伊賀神戸までの運賃を比較して少しでも安い近鉄を選んだ。時間的には目的地の伊賀鉄道上野市までキッチリ3時間と大差ない。伊賀鉄道以外はすべてICカードで支払い。

伊賀の国へ

JR中央線から近鉄急行鳥羽行きに乗り換え。近鉄で伊勢方面へ向かうのはちょうど3年前、スマホを手にしたばかりの新春企画と重なる。
jaike.hatenablog.jp
正月休みだというのに思ったほど伊勢神宮参拝客らしい乗客で混んでない。望み通りのクロスシートを見つけて、まったり。近鉄電車もこの頃は振動の少ない走りができるようになり、非常に快適。伊勢中川まで1時間20分というのは長いように思えながら、停車駅数は多いが各駅間は速いのであまり時間を感じさせない。
独りで近鉄大阪線に乗るのは初めてだと思う。大小幾つものトンネルを抜けて榊原温泉口や青山町といった駅を通過するのは新鮮だ。こうして狭隘な道を辿ると山々に囲まれた伊賀国の地理がよくわかる。

伊賀鉄道

伊賀神戸伊賀鉄道(旧近鉄伊賀線)に接ぐ。養老線と同時期に近鉄から切り離され、第三セクターとなった。伊賀市街を通りJR線と近鉄線を結んでいるが、今回は貫通乗車はしない。伊賀神戸駅近鉄伊賀鉄道の合同窓口となっており、伊賀鉄一日フリー乗車券(720円)も近鉄駅員から買う。
さっそく忍者列車と巡り合う。
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車内も木目調だったり、床に石畳が描かれていたりと明るく工夫されている。忍者風な衣を纏った委託ボランティアのような車掌が検札や案内をしている。
....!!!
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ふと目線をあげると、忍者に命を狙われていたww まさに角度絶妙。

市街地までは全然乗降がないので、田園地帯なのにまるで山奥を縫っているような無人駅が続く。2両目の扉も開く茅町が唯一人気あった。この茅町から上野市を挟み西大手までは、一転して住宅密集地の屋根をかすめるように走る。全線通して軽快なので運賃の割に距離が短く感じる。
 上野市駅に鎮座する「ふくにん」
玄関口なのに、日本語の観光マップが見当たらない*1。向かいの「ハイトピア伊賀」観光案内所で入手。案内所以外はコンビニもシャッター閉めてる三が日。

伊賀流忍者博物館

駅前の「ニカク食堂」にて伊賀牛定食やカレーうどんなどを見とめつつ、上野公園への坂道を登る。昼時の混雑を避けるため、11時半に忍者博物館前の観光食堂へ一番乗り*2
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「伊賀牛 肉うどん」900円。駅前のより割増だが、冬場に温かいうどんはどこでも美味しい。伊賀牛は肉質が柔らかく、普段食べている松屋吉野家の牛肉とは格が違う。

700円+税で端数の発生する珍しい入場料。忍者屋敷に通されると、実際に忍術を修練していると思われるガイドが実演を交えながらテンポ良い語り口で解説してくれる。どんでん返しなどの仕掛けが凝らされた忍者屋敷は、忍者の住居でありまた日本古来の秘密基地でもあった。伊賀は、京や奈良といった都に近く情報収集がしやすく、また山に囲まれた地利はスパイとして潜伏するのに適していた。普段は芸人や僧侶などに身を窶し、忍者特有の道具などを用いて密偵活動を行った。そしてアジトである忍者屋敷では、鉄砲や火薬といった武器の製造・研究が行われていた。屋敷の仕掛けは自身を逃がすためでもあり、忍術の巻物や武器を守るためのものでもあった。
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一見平屋に見える屋敷は、構造が工夫され3層にまで及ぶ。その上層で火器密造が行われていた。忍者は心理術にも長け、一国の領主をも意のままに操ることができたというから大したものである。こうしてみると、忍者は現代のテロリストであるかのように思えるが、根本は平和のための術であると資料は説いている。戦国の世において鎧刀の正攻法ではなく、人間の為せる技の粋を極め奇抜で多様な戦い方を探った武士、と呼んでもいいだろう。正攻法をいかに打破するか、それが忍びの術へと進化した。懐刀は直刀で甲冑の隙間である脇や喉元を突くのに適していたし、つば口を足掛かりに屋敷への侵入を図ることもできた。記憶力や占星術天文学をも駆使することができた。いま忍者を知ることは、知力と体力ともに人技の限界なき可能性を探るいい機会になるのではないか。

伊賀の地に生まれ29歳までを過ごしたとされる松尾芭蕉。その旅姿を模したとされる、俳聖殿。
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今回は芭蕉ゆかりの各施設が3日まで休館のため、訪れられず。

伊賀上野城(白鳳城)

不思議なことだが、この上野公園と岡崎城のある岡崎公園はどこか造りが似ていて、園内を歩いていると何だか錯覚する。築城者や造園者など全然接点はないはず。
筒井定次により築城され名手藤堂高虎により改修された、上野城
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天守閣内の博物館は見学せず、たい焼き食べながら外観のみ観賞。城内には精巧な石垣が築かれている。中でも内堀からそそり立つ、日本で一二を争う高石垣は見事なものである。
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縁に立って高所の恐怖に抗いながらその迫力を収めてみた。

伊賀越資料館

城山を下って白鳳門をくぐる。左手の上野西小は木造校舎。赤い柱や梁の文様が特徴的な北泉家(重文)の角を右折すると、旧街道。伊賀鉄道西大手駅の周りは、古い家屋が密集し組紐の工芸店があったりして、上野市内で泊まるならこの地区の中がいいな。そこから少し道に迷って、急な坂を下ると鍵屋之辻。今も昔も上野市街の西郊の雰囲気。
f:id:Nanjai:20170102141644j:plain 道標。「みぎ いせみち」「ひだり なら」

てっきり伊賀流忍者の関係スポットかと思っていた伊賀越資料館。寛永11年11月7日に渡辺数馬と荒木又右衛門が数馬の弟の仇である河合又五郎を討った事件。「鍵屋の辻の決闘」ともいわれる日本三大仇討ち事件の一つで、歌舞伎や演劇などの題材として知られているようだ。お堂のような建物で、お婆ちゃんが一人寂しく番をしていて折紙の手裏剣をくれた。初めて聞く歴史事件で、人物関係がなかなかつかめず匙投げそうになったが、あらすじは理解できた。奥の庭には首洗い井戸がある。

大和街道散策

街道を歩いたというよりは、伊賀鉄道の近距離区間乗り鉄するひととき。西大手から上野市で伊賀神戸行きに乗り換え、広小路で下車。2駅とも1分程度の運行時間で、乗継を待っている時間のほうがずっと長い*3。上野市から伊賀上野までの区間は本数が少なく伊賀神戸まで直通する電車も限られる。近鉄の支線だった名残かな。
広小路で伊賀鉄道を横切り、市内を東西にはしる大和街道。今回は踏み入らなかったけど、南には寺町と呼ばれる寺院の集まりがある。面影が名古屋の四間道に似ていた。上野市駅方面へ戻るように進むと、中ほどに上野天満宮(菅原神社)がある。ここぐらい参っていこう、と思ったら、物凄い参列者だったので気が引けた。本殿は西向きらしく、境内を東西に分断するように鳥居まで列が延びている。
あとは目ぼしい史跡もなく、商店街もあっという間に終わって「ハイトピア」の裏へ出てしまう。仕方ないから予定より30分早い電車で温泉行ってしまおう。伊賀土産の定番となりつつある「かたやき」(伊賀流忍者の携帯食を模した、非常に堅い煎餅)を買って、上野市よさらば。

癒しの里 伊賀の湯

桑町駅*4から徒歩5分、最近できたばかりの温浴施設「癒しの里 伊賀の湯」。実は近年市内東部にも温泉宿泊施設ができていて、その料金の安さから先述の宇陀方面とで迷ったくらいで、伊賀の温泉は意外と開発されている。やや熱めの湯で、壺湯や湧き出し口の傍では長居できない。露天で「相棒」観ながら腰まで浸かっていると案外適温でのぼせない。
休憩所内のレストランには四元豚のメニューが並んでいて、伊賀牛の姿はどこにもない。市中からちょっと離れるだけで名物も変わってしまうのか。牛乳やソフトクリームでは物足りないので、スパを出てコンビニを探し軽食を買う。少し道をそれるだけで駅の方角を見失い不安になるほど、電車線は土地に溶け込んでいるというか頼りない。

帰途

伊賀神戸駅で乗り継いだ急行五十鈴川行きは数分遅れていて、伊勢中川で1分接続の名古屋行き急行にも影響した。こうした特別な事情が発生し当該電車を待たせなくとも、駅の精巧な構造により1分乗換は可能な伊勢中川である。近鉄名古屋到着直前、突然原因不明の腹痛に襲われ青ざめる一幕あり。天満宮を素通りした祟りかな。
東郊の国分寺跡などをコミュニティバスで訪ねるオプションも設定してたけど、行かなかった分ゆとりをもって周れたり温泉にゆったり浸かれたりして、遠出のわりにはのんびりした旅ができた。宇陀の温泉は名張方面の景勝と合わせて考えたい。

*1:英語とハングルは目立つところにある

*2:忍者博物館は2日が年初開館日なので、もしかすると今年一番乗りかも?!

*3:ともすると、上野市から大和街道広小路駅まで歩いても伊賀神戸行きの電車に間に合ってしまうのではないか

*4:茅町駅との間にレンガ造りでトンネル状の小さな跨線橋がある。