南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

武汉(Wuhan)欢乐颂YH(开封帰郷旅行2017“Project Z”プロローグ)

はじめに

前回2014年から実に3年半近いブランクを経て、漸く开封帰郷のチャンスを得た。この間2回の海外旅行も友達に会いに行ったり帰省に同行したりと、完全自主企画の一人旅は久しぶりとなる。年齢や体力も含め、いつになく些か不安をも覚える。
今回の河南アクセスは、帰郷企画開始以来最も同省に近い武汉を起点に選んだ。着想段階では中国東方航空(上海経由便)および南方航空(直行便)が定期運行しており、他の候補である合肥や石家庄より優位にあった。今年8月に南方航空が休止となり東方1本に絞られたものの、LCC春秋航空よりは良心的なダイヤが信頼のポイントだ。南方利用者の流入による混雑を想定し、予約は2か月前に確保した。ところが、直前の先週になって旅行会社から「東方航空のターミナル工事延長の関係で、名古屋-上海または上海-武汉のいずれかを変更してほしい」と依頼された。武汉到着時刻は譲れず、上海着の便を08:55発のMU292(上海経由西安行き)に変更。名古屋出発が1時間半以上も早まり、経由地上海で4時間近く待機させられることになる。河南旅行がメインとはいえ、名古屋から1本のフライトで往復できる起点として武汉にこだわったので、結局乗継の形となるのでは不本意だ。東方航空を利用し初めて中国へ渡航した10年前、上海の浦东空港と虹桥空港間のバス移動で渋滞に遭い、郑州行きの国内線乗継に失敗した苦い過去が脳裏をよぎる。ちなみに帰国便は、先の予約どおり経由便で確定している。

今回の主な目的は、3つ。まずは8日間のうち前半4日ほどで実施する「周口-驻马店編」だ。武汉起点ということで、2008年9月の信阳以来となる河南省東南部を攻略する。例年通りきっちり1週間で収める計画だったが、今後の回数も踏まえ周口淮阳を追加することで1日増えた。
周口を追加 - 南蛇井総本気
二つ目は、2014年末に開業した郑开城际铁路の試乗である。留学時代から計画の噂が流れており、この開通と乗車は10年来の悲願ともいえる。前回お会いした河南大学の恩師にも「次回开封を再訪するときは、郑开城际铁路に乗る」と宣言している*1。また、郑开城际铁路のほかにも郑州地铁2号线など乗り鉄ミッションが盛りだくさんで、河南省に最も近い起点なのに鉄路利用回数は2倍という奇妙な移動行程となっている。
郑开城际铁路詳報 - 南蛇井総本気
三つ目は何といっても3年ぶりの开封再訪である。予定の急変によりほとんど滞在できなかった前回への反省から、今回は約2日間充てた。恩師や友人へ事前連絡はせず、確実に再会が期待できる方々へは土産も用意するが、基本は電撃帰省である。曜日が決まっているという东京大夜市だけは、今回は的中してほしい。一番懐かしい河南大学と明伦街は勿論のこと、6日の終日滞在ではまだ画像のない禹王台公园へ行ってみたい。ちょうど菊祭のさなかなので混雑や入園料高騰なども予想されるが、龙亭も覗きたい。そして、先日百度地图で予習した某地区の大開発をこの目で確認したい。
以上の目的のうち、初め2つの項目の頭文字をとって企画名を“Project Z”と命名。漫画のチーム名やテレビ番組のタイトルを軽く文字ったものだが、必ずしも河南ウォークのラストシリーズではない。尤も今回の成功により、河南で未踏の地は焦作と济源を残すのみとなった。

前回に倣い、統一したシリーズ名を付けず記事の内容に応じて「全球大旅小旅」と「河南旅游集」に帰属させる。开封の都市変化と朋友再会結果については「ほんねとーく」で書く予定。出発前に組んだ綿密なスケジュールがほぼそのまま遂行されたので、理想通りの記事一覧を公表できる。(記事作成後にリンクを張ります。)
11月1日:武汉(Wuhan)欢乐颂YH(当記事)
11月2日:周口-驻马店(Zhumadian)編1:驻马店汝南(Runan)(南海禅寺,天中山)
11月3日:周口-驻马店編2:驻马店上蔡(Shangcai)蔡国故城
11月4日:周口-驻马店編3:周口关帝庙
     周口-驻马店編4:周口淮阳(Huaiyang)太昊陵
11月5日:郑开城际铁路
11月6日:开封文庙
11月7日:郑州文庙&地铁2号线(郑州2017年号)
11月8日:武汉汉口租界

空路で武汉へ

6時前に家を出て6時半のミュースカイに乗り、きっちり2時間前に中部空港へ。ネットで予習したとおり、上海より先の便も同時にここでチェックインでき2枚の搭乗券を受け取る。上海では入国審査さえ済ませれば、中转(Transfer)通路を介して出発ロビーへ直行できる仕組みだ。ボディーチェックではベルトを指摘されないかわりに、折り畳み傘を全開されてウザかった。ここ3年程、人民元の両替は日本で済ませるようにしている。今回は4万円準備し、当日レートにより2100元購入した。前回新乡などで辛酸をなめた宿泊に最も予算を割き、1泊150元として算出している。しかし、実際には一泊100元を超える夜はなかった。むしろ今回最も誤算だったのは飲食費で、一応1食平均15元の読みは間違いではなかったものの、留学時代に比すればほぼ2倍とも言える物価上昇に終始ショック。もはや拉面一杯を5元以下で食べることは不可能に近い。その辺の痛感も追々記していく。

上海では降機および次便への搭乗のいずれも、ターミナルから離れた位置に駐機しランプバスでの移動となる。これぞまさに往路の便を変更させられた事由で、第3ターミナルがまだ完工せず搭乗橋を付けられないため、ランプバス輸送の限界を超える搭乗客を分散させる必要があったのだ。東方航空のほとんどの飛行機がこの駐機場へやってくる。滑走路からの移動距離も長いし、ランプバスも現行ターミナルまで飛行機や関係車両の合間を縫っていかねばならず不便なので、早いとこ第三を運用してほしい。
飛行時間から計算して、到着時刻の11:10は日本時間だと考えていたが、現地時間であった。したがって上海での待機時間は3時間弱となる。長蛇の列を成す入国審査を抜け乗継通路へ入ると、結局出口を介して3階の出発ロビーへ上がれと指示された。手荷物受取エリアをパスするぐらいで何も変わらない。国内線身検を済ませ、待合ロビーへ。カフェやバーに入るまでもないのに、優雅に外を眺めながら座って過ごせる場所がない。仕方なく自販機で青島缶ビールを買って、ベンチで嗜む。

思った以上に日本人搭乗客の割合が高い。日本からの経由便とはいえ、上海からは中国国内線の扱いなのでもっと中国人が占有するものと想像していた。とくに留学やゼミ研修なのか、若い連中が多い。おかげで中国にいる実感がまだ鈍い。武汉まではおやつの提供はなし。ビールを飲んだせいか、窓際席と短時間フライトでトイレへ行きづらく着陸時まで難儀した。

武汉地铁

定刻より30分ほど早く到着。白を基調とした天河机场到着ロビーを地下鉄駅の指示板に従って歩きながら、次第に緊張と興奮が湧いてくる。時間の都合で諦めていた武孝城际铁路の汉口行きが乗れてしまうようだけれども、今日は武汉火车站で明日の切符を買うミッションがあるので、よりスムーズに移動できる地下鉄を優先する。武汉地铁2号線は汉口站を経て市中心部を貫き、洪山广场で4号線に接続する。4号線上には目下の行き先である武汉站や、汉口と並ぶ要衝の一つである武昌站がある。武汉地铁の乗車券もトークンである。

始発駅の天河机场站では座れたものの、あっという間に視界を遮られるほどの混雑に。若いカップルがいちゃついたり女の子を膝の上に座らせたりして、まぁ中国の都会っ子は大胆である。運賃7元からも分かるように、乗車時間は結構長い。下調べの1時間半は確かに要した。武汉地铁には一つ、特徴的な長所がある。4号線との乗換駅では島式ホーム上で接続線との相互乗換ができる。他の路線や十字交差箇所では未確認だが、少なくとも4号線と2及び6号線ではこの構造になっている。反対方面とは上下で接続しており、階段やEV一回で移動できる。
 钟家村駅における4号線(左)と6号線(右)の接続構造。
乗換駅での移動距離が凄まじく長い中国の地下鉄において、これは画期的な設計といえる。まるで駅1区分歩いてしまうような通路を大勢の利用客が流れていくような状態は、何とか改善しないといけない。線路のトンネルこそ些か複雑になるものの、運用後は最も効率的で快適なターミナルシステムとなる。日本でも採用してほしいくらいだ。
 透光の綺麗な駅名板。

欢乐颂YH

翌日の驻马店行き高铁に乗る武汉火车站に最寄りなことから、フライト確保と同時に予約した欢乐颂YH。直後にスタッフさんから微信の友達申請があり、中国語で軽く交流した。
jaike.hatenablog.jp
当日は上海での武汉便待ち時間から着信があり、到着時刻などを伝える。「歓迎光臨」ムードなところを申し訳ないのだけれど、私にとって今回の武汉は起点と終点であまり観光する予定はない。どのタイミングで伝えるべきか、地下鉄で思案していた。武汉火车站が近づくころ、駅へ迎えに来ているというので、先に明日の列車の切符を買う旨だけ伝える。たまたま流れで東口へ出たら、ちょうど東口へ来ているという。服装とか尋ねられ、どう答えようか戸惑いながら出口付近を彷徨っていると青年が声をかけてきた。煩わしいので微信の画面を見せて「これがあなたですか」と尋ね、投合した。同じくらいの年頃なので、初対面でも気兼ねなく話してゆけた。これが自分でも信じられないほどの中国語回復力の一因ともいえる。彼に付き添ってもらって明日の切符を買う。〔列車情報:G1290次、武汉08:03発-驻马店西09:13着、二等座145.50元〕
さて、この青年旅舎は駅から南へ500mほど歩いた高層住宅*2の最上階(17階)の一室にある。
 宿から望む駅の夜景。
ごく普通のアパートを改装しただけで、ドミトリーにルームキーはなくデポジットも取らない。部屋には個々のロッカーもなく二段ベッドが3台納まっている。共有スペースではお湯やコーヒーが自由に飲める。一室では本来の住人が食事をしている。一服して、まずは晩飯。
階下にも超市やレストランが構えているが、少し東に進むと屋台街がちょっと体裁整えたような白马小吃街という一角に惹かれる。热干面*3などご飯や麺類から酒の肴まで揃う、駅近の飯屋街だ。すぐに大きな食堂へ招き入れられメニューを見せられると、大好物の宫爆鸡丁饭を所望。

汁タイプの基本形。辣椒の辛さと落花生・人参・胡瓜の甘みが絶妙な一品。18元はちと高めだが、大都会の駅前だからこんな設定なのだろう、とこの時は納得した。回数を重ねるうちにこれで普通なのだと気づく。超市で冰红茶を買うと、我が中国モードは準備万端である。

このまま明日以降のためにゆっくり休息タイム、かと思いきや、共有スペースでテーブルゲームを催すという。といっても、今晩の同居人は少し取っつきにくそうな大男一人だ。別の階にも部屋があって宿泊者やスタッフもいるらしいのだが、最後まで現れなかった。先に共有ルームで寛ぐ私に、スタッフさんがUNOの中国ルールを教えてくれる。そして、この3人で始めたUNOが思いのほか白熱したんだ。昔ハンゲームなどオンラインで熱中しただけにUNOへの思い入れは強く、知ってるルールのバリエーションも豊富だ。違和感を覚えたのは、UNOコールで「有了!」と叫ぶことと、カードを中央の一か所でなく個々の手元で積んでゆくので現在の札が分かりづらいことくらいだ。始めは気乗りしなさそうだった大男も、時には私と二人だけのプレイにも付き合ってくれ、ゲームの場では打ち解けていった。また、德国心脏病*4というのもやった。中国ではメジャーらしいが、スタッフさんに口頭で説明されても全くルールが掴めない。まずはプレイを見て法則を読んでみようと、訳が分からぬまま輪に入ってみた。要はそれぞれがカードを一枚ずつ出してゆき、出ている瞬間のある一種類の果物の数が5または10のときベルを早押しした者がカードを回収できるのらしい。どんどん取られていって手持ちがなくなったら負け。サルとゾウは背景色と果物の色で合わせ、ブタは万能。少しずつ読めてきて早押しに参戦できるようになった。自分が出したカードだけでなく他のプレーヤーにも注意することや、次のカードに隠されることで数が変わることにも気をつけねばならず、確かに神経衰弱みたいだと思った。慣れてくるとなかなかハマる。また、ここでの会話や説明を通して中国語が巧く脳内を循環し、この後の旅での語感への不安を払拭できた。初日から有意義な交流体験をさせてもらって、お二方に感謝している。

いよいよ明日はProject Z開幕だ!

周口-驻马店(Zhumadian)編1:驻马店汝南(Runan)(南海禅寺,天中山)へつづく)

(map:武汉欢乐颂YH)

*1:ちなみに、前回は郑州地铁試乗が乗り鉄テーマ

*2:白马洲村という団地である

*3:武汉発祥で中国全土に広まった手軽に食べられる麺料理

*4:神经病に聞こえたんだけどな。英語で「Beat the Bell Spot Five」というドイツ発祥のカードゲーム。日本では流通していないらしい