南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

東濃鉄道笠原線跡を歩く

かつて多治見市滝呂、笠原地区の旅客や地場産業である製陶の陶土や製品を運んでいた、笠原鉄道(のちに東濃鉄道笠原線)の廃線跡が遊歩道に整備され桜並木が綺麗だと知り、通して歩いてみた。全長約4.5kmで、半日で十分往復できる。ちなみに同じ東濃鉄道だった駄知線も土岐市駅から歩行者・自転車道となっているが、こちらは全長約10kmでちょっと徒歩では厳しく思われる。土岐市内1泊の全行程自転車旅で検討中。

天の湯

多治見駅から徒歩圏内にある日帰りスパ。ウォーキングの後で立ち寄るつもりだったが、朝風呂料金が500円と知り早朝に出かけた。朝風呂入店リミットの8時50分に間に合うよう、勝川07:49発の普通列車に乗る。途中古虎渓駅に停まると、ホーホケキョと澄んだ鳴き声が車内に飛び込んでくる。

駅から天の湯までは少々わかりにくい。区画整理中の道を縫っていくと、ニョッキリ壁状のタワーマンション風な建物が現れる。全然スーパー銭湯っぽくなくて戸惑う。入るとこれまたベーカリーとカフェの匂いが漂い、ホントにスパかと不安に駆られる。受付して二階に上がっても尚カフェムード。慣れたら相当癒やし空間なんだろうな。しかし利用者は地元民が目立ち、造りとは対照的。脱衣場ロッカーがまた、今まで利用したどこの日帰り温泉よりも上質なつくりで、かなりゆったり使える。そんな上品感を至るところに醸しておいて、肝心の浴場はといえば妙に雑で戸惑った。掛け湯が無造作だし、手桶がカランにつっかえて扱いにくいし、内湯にひとつだけの大風呂は中段(ステップ)が一部しかなくて足くじくかと思った。私にはちょっと深め。湯加減はちょうど良い。ここは「トロン温泉」といって、ドイツの名泉バーデンバーデンから輸入したトロン鉱石を用いた人工温泉である。ちょっと違和感あるけど、このあっさりした造りが欧風のリラクゼーションなんだろうな。事実、露天の岩風呂以外日本風の設えは一切ない。しかし落ち着いてみると案外居心地いいので、関牛乳飲んでテレビ観たりしながら、11時頃までノンビリ過ごす。

たじみそ焼きそば

散策の前に腹ごしらえ。多治見なんて近隣過ぎて、これまで名物とか考えたことなかったけど何か美味いもの食べたいな。駅前の飲食店に目ぼしいトコがなく、プラザ・テラの地下スーパーに降りてみる。売り場奥のささやかな美食街にあるお好み焼き屋で、「たじみそ焼きそば」というB級グルメを見つけ頼んでみた。どこかで聞いたことある気もする。去年しょうゆベースの「瀬戸やきそば」というのを食べたけど、隣り合う陶器産業の町として張り合っている印象。まあ近代産業都市の食文化は、こうした麺類や丼物が育まれていることが多い。大勢の労働者が短時間で食べられる料理が現在まで受け継がれ、いまは地域再興の立役者ともなっている。

さて、たじみそ焼きそば(580円)。

f:id:Nanjai:20190406161714j:image

名の通り甘辛い味噌のほんのり香る焼きそば。半熟の目玉焼きがボリュームとともに、黄身が絡まって一味加える。もう少し味噌のアピールがあってもいい。しょうゆより弱い。

お好み焼き 純【公式HP】岐阜県多治見市

昼時なのに、客対応がちょっと芳しくなかった。たじみそ焼きそばは市内各所で食べられる模様。

陶彩の径

さぁ、いよいよ笠原線を歩く。概ね晴れてるんだが、西風が強く雨もパラつく落ち着かない天気。陶都大橋南詰より、軌道跡は始まる。この起点と各駅跡地には往時の写真パネルが立つ。まずは土手の上を大きく左にカーブして笠原川に沿う。てっきり庄内川沿いに暫く戻るものだと思い込んでた。家々の軒先をかすめる機関車が今にも現れそうな風景。道は常に緩やかな上り坂で次第に勾配のきつい箇所が増え、サイクリングを楽しむ人々も上流へ向かうにつれ喘ぐ姿も。これは電車ではちょっと厳しく、馬力のある機関車か気動車向けだな。この勾配と長さは、飛騨小坂の森林鉄道跡サイクリングロードに趣きがそっくりだ。終始ウォーキングやサイクリングをする人々とすれ違い、寂しさは感じない。とくに中国人やベトナム人の往来が目立つ。本多治見駅はパネルがなく、気づかず通過。現在も操業中のTYK(東京窯業)に接し、材料や産品積降ろしのための引き込み線があった市之倉口駅。面する場内はハッキリと面影を残している。ここまでは概ね川と同じ高さだが、その先は川や宅地より高めの位置を走る。小山を穿った掘割状の下滝呂駅。トンネル掘削回避かな?

f:id:Nanjai:20190406172637j:image

本鉄道の中心駅と思しき、滝呂駅。パネルに言及はないが、笠原寄りに明らかな積込ホームの遺構が残る。

f:id:Nanjai:20190406173438j:image

県道13号線との交点に遺された枕木。

f:id:Nanjai:20190406173746j:image

終点、笠原駅。

f:id:Nanjai:20190406173856j:image

パネル写真では、現在の遊歩道上よりは寧ろ左の土手上に軌道があったように映る。遊歩道はここで途切れ、軌道延長線の先には東鉄バスの車庫がある。かなりノンビリ歩いたものの、多治見駅からキッカリ1時間。

笠原地区

せっかくなので、折り返す前に少しだけ笠原の町を歩いてみる。モザイクタイルミュージアムはちょっと遠げ、妻木城は方角が分からない。その辺の町並みに焼き物産業の面影はないだろうか。神戸から少し登って、笠原神明宮。本殿壁や階段はタイル張り。

f:id:Nanjai:20190406175100j:image

ここの見どころは、向かって左側面に作られたレリーフだ。

f:id:Nanjai:20190406175231j:image

白馬、山車馬、立願馬をモチーフにしているとされ、これは絶対に一見の価値ある。参拝していると激しい俄雨に襲われ、僅かな軒を探す。以後多治見駅へと戻る道すがら、全く雨宿り箇所もないまま幾度となく晒された。

f:id:Nanjai:20190406181831j:image

花見

冒頭に述べたとおり、この陶彩の径は桜並木の名所でもある。帰り道は鉄道風景にこだわらず、桜を愛でながら歩くことにする。とくに桜並木と呼ぶにふさわしいのは、市之倉口駅前後である。それにしても、この緩やかな下り坂はまるで長い滑り台だな。自転車で下ったら超痛快であっという間に下りきってしまうだろう。これも小坂の記憶と被る。

f:id:Nanjai:20190406180506j:image

f:id:Nanjai:20190406180608j:image

f:id:Nanjai:20190406180522j:image

f:id:Nanjai:20190406180629j:image

並木イメージ的には3枚目が一番好み。道に沿って低い位置の緑葉樹の陰と、陽光をステンドグラスのように取り込む桜花の回廊。言い表せないほど美しい。

 

ちょっぴり天候不安定な中、温泉入って美味いもの食べて鉄道に親しみ桜を愛でる。久しぶりにいい日帰り旅ができた。

thanks うながっぱ

f:id:Nanjai:20190406181738j:image