南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

郑州地铁城郊线・5号线(开封帰郷旅行2019プロローグ)

(「はじめに」をとばして本文にすすむ

はじめに

まだ前回の記憶も鮮やかな約1年半ぶりの河南旅行。今回のシリーズ名(テーマ)は、ファイナルシリーズ 河南踏破最終戦河南省に17ある地級市ならびに省直轄県級市すべてを、訪問・宿泊・居住のいずれかで踏破完了する。2007年8月末、語学留学のために初めて郑州および开封を踏んでより実にちょうど12年。一回りで一巡りというわけか。その記念すべき最終地点は、焦作(Jiaozuo)と济源(Jiyuan)。とくに济源は在学時から訪れたいと思っていたし、2014年ミステリーツアーでも候補の一つに挙がっていた。地理関係により、洛阳と焦作の両側からアプローチしたいので、焦作も乗継の形で組み込み訪問達成とする(2017年の漯河にちかい)。昨年末までは大体以下のような形でプランニングされていた。
jaike.hatenablog.jp
ところが、当記事タイトルからも分かるように、本旅行は全旅程を河南旅游集で完結する。従来なら河南へのアクセス分(たとえば出入境地の上海や北京)は、全球大旅小旅で記事を設け序章と終章で挟んでいた。これは6月末ごろエアチケットを真剣に検討し始めた際、すでに名古屋~上海のみで高額となっており、とても予算内で河南までの空路を確保できないとの焦りから閃いた、大阪関西国際空港からの郑州直行便を選択することになったためである。
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そもそも現在の職場で与えられる長期休暇、正月・GW・お盆の中で中国渡航に最も適したシーズンは正月*1であるが、今回絶対譲れない目的地が黄河以北の济源なので冬を避ける必要がある。学生の夏季休暇しか被らないお盆は、GWよりは相対的に混みにくい。オフシーズンに休みをとって行くよりは、割高な飛行機代を呑んで長期休暇を利用するほうが得策だと考える。ともかく、
日本国内の移動(名古屋-大阪間)がかさむとはいえ、大陸の経由地を挟まないで河南へ直行できるのは快挙である。初めて利用する関空もさることながら、郑州で中国入境審査を受けるのは非常に興奮する。そして、名古屋~上海で10万以上のチケットが並ぶ時季に、関空~郑州を6.5万で往復してしまう春秋航空にも驚き。ところで、春秋航空の郑州便は火木土のみ運航している。土から木まででちょうど6日間になることから当初計画の上海乗継分0.5日をカットして即席対応させた。案外適応させやすかった*2うえに、开封滞在時間にゆとりが出た。また、大阪までのアクセスには高速夜行バスを利用。意外にも近鉄より安く夜間を有効に使えて便利。前夜とはいえ名古屋を0時半に発し同日のうちに河南へ着いてしまう、というのは、初めて河南を踏んだあの日以来でもある(24時間以内とはちがう)。
いろいろ集大成的な意味合いもあって、いつになく周到な準備をした。まず宿泊について、後半の洛阳1泊と开封2泊はBooking.comで予約確保。开封では青年旅舎の空室がなくリーズナブルなチェーンホテルを初めて予約。焦作と济源は従来どおり飛び込み。また、今回個人的に大きな進歩として、国鉄路のオンライン切符予約を試してみた。これまで当日や前日の現地到着後、駅の切符売り場で長蛇の列に並びときに完売の憂き目に遭いながらも争奪戦に参加していた火车票。社会人ながらクレジットカードを持っていないことで決済にネックを感じていたが、銀行口座振替システムを併用する手配会社を見つけ、初めて日本に居ながらオンライン予約により火车票を確保した。手数料が本体価格のわりに高く勿体ない気もするが、口座から円で支払ってしまうと現地でそのキャッシュ分は必要なくなるわけだから随分楽だ。窓口争奪戦も恋しいので、高速鉄道だけ予約して一部可能性を残しておく。発券番号とパスポートを提示して切符を受け取る「取票」も初体験だから楽しみだ。
あらためて、全行程を開示。日本内移動を含め旅行期間は丸6日。前半は(焦作と)济源編、後半は开封帰郷。
記事一覧
8月10日:郑州地铁城郊线・5号线(当記事)
     郑焦城际铁路
8月11日:焦作(Jiaozuo)龙源湖
     济源(Jiyuan)編1:愚公移山,汤帝庙,博物馆,延庆寺塔,济渎庙
8月12日:济源編2:原城遗址,奉仙观,湨河
     洛阳再訪
8月13日:开封北站
     开封纪念塔
8月14日:开封包公湖
     开封刘青霞故居
     开封 北宋・东京外城遗址公园
     开封鼓楼
8月15日:郑机城际铁路
     郑州新郑国际机场(帰国とエピローグ)

未明の大阪行き

出発直前の一週間はバックバッグと靴の購入に奔走し、いずれも新品を当日初めて使う。9日22時ちょうど、身支度を整えて出立。はじめて一人暮らしのアパートから旅立つ中国帰郷だ。大曽根行きの市バスまで十分時間があるので、バス停二三区分歩いて靴慣らし。大曽根からJRで名駅。深夜なお混雑する名駅コンコース。
今回大阪行きで利用するWILLER高速バスは、新幹線口対面のビックカメラ前より発着する*3。なるほど、1時間以上前から2台のバスが待機している。一安心してコンビニを探し回っているうちにそのバスが消えていた!! 慌てて停留所の時刻表を確認すると、1便前のヤツだった。早々のパニック発生は波乱の前兆だったのか。30分ほど前になると再び歩道上に乗客がパラパラと集まり始め、やがてどこからともなく乗降整理スタッフが現れシートタイプで仕分けしていく。運転手に予約受付確認メールを提示して乗車。格安とは言うものの、座席こそ4列標準だがレッグレストに首あてなど休みやすい設備が整っている。寝顔をすっぽり覆うことができるフードカバー、「カノピー」なるものを初めて見た。運転手は丁重な全体アナウンスとは対照的に、個別対応ではやや高圧的なトーンが気になる。自動音声のアナウンスでは日本語・英語に加え、中国語とハングルも流れるので長い。バスは午前0時30分、名駅を発車。これが事実上、名古屋を発つ基準時刻であり、同日中の中国河南到着、さらに国際空港の郑州ではなく最終目的地の焦作へ夕刻までに達すれば相当な快挙である。わくわくw
高速バスは金山駅と栄を経由し、途中養老SAのトイレ休憩をはさんで運行。高速道路の渋滞やSAの混雑も伝えられたが、特段の低速走行も感じられなかったので渋滞には遭ってないはず。1~2時間コマで寝られたものの、如何せん冷房が非常に強くてブランケットでも防ぎきれず早々に風邪ひくかと思った。バス降りたら眠気も相まってホットコーヒーが欲しいくらいだった。
降車地点から早朝の地下街を彷徨ってJR大阪駅を認めた後、ちょうど開店したばかりの吉野家で朝定(納豆牛小鉢定食)。ICカードに入金したうえで、関空快速紀州路快速併結)で空港へ。終始立席に甘んじるほど旅行者で混んでいた。空港島手前のりんくうタウン駅ではJRと南海がホームを共有。セントレアもこうして競合・補完し合うべきだよな。

関西国際空港
LCC向けに新設された第二ターミナルへ速やかに移動、初利用の関空を悠長に見物するゆとりはなかった。

春秋航空 関空~郑州フライト

免税エリア以外は仮設っぽい造りが否めない第二ターミナル。おもに春秋、ピーチ、チェジュの3社が発着している。韓国行きなのか、案外日本人旅行者も目立つ。しかしさすがに春秋航空で郑州便ともなると、団体客を中心に中国人が圧倒的多数。空港職員以外スタッフの全くいないカウンターの前に、次第に長蛇の列ができていく。かなりゆとりを持って並んだはいいが、一向に始まらぬチェックイン手続きに空港散策は中止の見込み。ところで、このフライトに関する最大の不安は現在中国沿岸部に接近中の台風9号である。すでに上海行きは欠航となっており、航路次第では当便も行く手を阻まれかねない。「とにかく頼むから飛んでくれ」と祈り続けた。けっきょく衛星から見たら、台風の鼻先をかすめるような航跡だったに違いない。
列に加わるころから、ふと見覚えある顔の女性がいた。ちょっと記憶を探ってすぐ、开封大学日本語科の学生(卒業生)ではないかと思った。彼女は自分のすぐ後ろに並んだが意識するそぶりはない。まぁ10年も前に日本語コーナーで数回顔合わせた程度だから、覚えてなくて無理はない。似たような顔立ちの中国人もゴマンと居るだろうし、確かめるのはよしといた。しかし河南出身だった記憶があるし、可能性として有り得なくはない。ほかに連れはおらず旅行っぽかった。
出国ゲートを抜けたら先ず両替*4をする。このターミナルは場内に両替カウンターがなく、初めて外貨両替機を操作する。3万円(実質28,800円)で1700元購入。ちなみに前回の残金1.10元は、保管場所をド忘れして持参せず小銭がまったくない。次に、飲食提供のないLCCでの昼食にてりやきバーガーとレモンティーを買う。ケチではなく、旅行中日本円の小銭をジャラジャラさせぬよう処分するための調節。ラウンジで雑魚寝してたり、ショップ店員もアジアンだったりとかなり異国情緒の第二ターミナル。
混雑を防ぐため後部席から順次機内誘導。ボーディングブリッジがなく、地上から搭乗するのも経費削減か。シートはヤグい造りだが居住性は悪くない。チェックインカウンターでもだけど、見回しても数えるほどしかいない日本人に対して流暢な日本語スタッフや機内アナウンスを備えているのは感心する。特段目立った乱気流もなく、割と平穏に飛んで定刻より20分早く到着。絶対機内モードじゃない通信ゲームを片時も休まず熱中する子供らには呆れた。

郑州で初入境

台風に邪魔されず飛んでこれたのと12年ぶりに降り立った感慨から、ここで迂闊なミスを犯し前半戦の意気を喪失した。だだっ広い入国審査場に我々外国人の姿は滅多になく、入国カードを書くのもちょっと慌てる。そこで中国内滞在地を「开封」とだけ書いて提出してしまったのだ。これまでの経験上、地名ではなく宿泊先ホテル名まで書かないとスムーズに受理されない。たとえ虚偽(ダミー)であっても宿の詳細まで書けば詰問は免れてきた。さらにここ郑州はご覧のとおり、国際空港とはいえ外国人の入境が非常に少ない。上海や深圳のように外国人対応が手際よくない。まさかの滞在計画を詰問される羽目に。本旅行最初の中国語会話が高圧的な入国審査官だったものだから、英語よりは使える中国語で対応してもらったものの緊張・委縮して語感回復が追いつかず大汗かいた。前回2017年とパスポートは同じなので、公記録が残っているならば鉄道と長距離バス利用、それに公安に届けられた宿泊記録ぐらいは照会できるかもしれない。その場合いくぶん異質な旅程なので、「开封に6日間滞在する!」と言われても俄かには信じがたいだろうね。ともかく、初めての指紋採取を受けて、半ば仕方なさそうに通してくれた。前述のように外人対応に不慣れな郑州だから仕方ないよ、と自らを慰めつつも出端くじかれ暫くいつもの中国モードに乗り切れず。
また、空港内でモバイルデータ通信を確立しようとしたところ手順を失念し、自動で取得した中国移动通信の電波が悪くてエラー頻発、手動で联通を拾うのに苦労した。安定したネットワークを確立するのは郑州火车站到着以降である。ちなみに空港は回線が込み合うせいか、联通でもたまにEが出る。(データ定額料は6日間で20,860円でした)
そんなだから、地下鉄の券売機用に百元札を崩すだけでもキャッシュレス化に怖気づいてなかなかコンビニに近づけないなど、空港で時間を浪費した。

新郑机场エントランス
久々に食った中国のチョコパイ、美味くなったなぁ。ちなみにその後の購買から、百元札を出すと「没有零钱?(小銭はないの?)」と必ず聞かれるようになったことを知る。もちろん「ない」と言って押し通せば問題なし。

郑州地铁城郊线

城郊线とは、2号线の郊外区間、南四环~新郑机场を区別する呼称。路線図によってはピンク色で表示されることもある。同じように市街と国際空港を結びながら广兰路で乗換を要する上海地铁2号线とは違い、南四环でも列車は直通運転。前回2017年の時点で既に開通しており、空港利用の今回は絶好の試乗チャンス。因みに、拠点空港から地铁で市中に入り、城铁で帰ってくる(予定)パターンは前回の武汉と同じ。

郑州地铁路線図と、新郑机场站コンコース
郑州地铁新郑机场站ホーム

やっと旅が始動 した安堵感から、始発で座席をゲットするとしばしば眠りに落ちてしまい、肝心の南四环站を寝過ごしてしまう。郊外は高架区間が多く、ほんの数年前までは広大な農村地帯だったはずなのが沿線の大部分で高層住宅が林立している。それもまるで熱帯植物か何かのような奇抜な設計のがニョキニョキ生えていて、おそらく地上からは想像つかぬほど異様な光景である。ストリートビューのように車窓を撮影した「レールビュー」なるものがあったら、ぜひお見せしたいくらいだ。

郑州地铁5号线

今年5月に開業したばかりの最新路線。郑州地铁初の環状線だ。1年9ヵ月ぶりに戻ってきたぞ*5の南五里堡站で乗換。中国人は地下鉄の乗り換えを結構歩かせるのが好き?だが、今回は案外短くて拍子抜けした。北京の地铁10号线は右回りも左回りも同じ「环线」表示だったが、ここは内环(内回り)と外环(外回り)で区別されている。さすが郑州! ホームドアの帯もラインカラーにきちんと統一されたw

郑州地铁5号线風景
南五里堡から内回りを五一公园まで乗り、1号线に継いで火车站と、つごう机场から開業済みの全路線を伝うことに。あらためて駅名を眺めると病院(医院)が目立ち(全31駅中6駅)、降り間違えそう。環状線といえば地下鉄路線の中でも利用率の高いものだが、まだ出来立てで認知度が低いのか時間帯のせいなのか、かなりガラガラにすいている。当分この調子だったら採算合わないぞ。まぁ高铁站の郑州东を通っているし、今後3,4,6号线が開通すれば相互連絡の需要も高まろう。焦らず経過を見てゆくことにする。

もう乗り鉄3度目となる1号线も火车站以西は初めての区間であり、1970年代の建設計画(80年に頓挫)で造られたという碧沙岗站を通過した。ここまで乗ってきた2,5号线に比べると、車両も心なしか使い込まれた感がある。绿皮车の壁面アートは健在の火车站站を灼熱の太陽照り付ける地上に出て、だいぶ見慣れてきた西站房を仰いだところで一区切りとする。

郑焦城际铁路につづく)

(map:郑州地铁南五里堡站(2号线と5号线の交差駅))

*1:春節旧正月)とは確実にズレるため

*2:焦作の観光時間を削るのは痛かったが

*3:格安系のためか、ロータリーには入場できない

*4:現地での行動を円滑にするため、日本両替が定着した

*5:前回2017年に2号线試乗の起点駅として利用