南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

アラファト氏の危篤状態と彼の功績

Nanjai2004-11-08
 《パリ郊外の軍病院に入院しているパレスチナ自治政府のアラファト議長(75)の容体について、自治政府筋は4日夜、「脳死といえる状態だ」と朝日新聞に 明らかにした。AFP通信も在仏医療関係者の話として「脳死状態」と伝えた。パレスチナ指導部は緊急会合を開き、「アラファト後」の暫定指導体制に向けた 協議を始めた。自治区ではイスラエルとパレスチナ双方の治安当局が厳戒態勢を敷いている。(朝日新聞)》
 近頃、中東問題に弱くなっていた。このたびアラファト議長の脳死の報せを聞き、彼はまだ75歳であったことを知る。とはいえ、日本の政治家は80近い方もおるが、世界最大の紛争ともいえる中東問題に、この高齢で要所に属し活動しておられることは、感心する次第である。
 筆者が高校時代、プレゼンテーションで、中東和平を扱ったことがある。シャルム・エル・シェイクで行われたクリントン米大統領(当時)、バラクイスラエル首相(当時)、アラファト議長の和平会談(2000年)を取り上げ論じた。当時、米国における共和・民主2党の差異を把握していなかった筆者は、単純にアメリカ主導の中東和平を批判していたが、今となってはブッシュ政権の完全イスラエル寄りの支援の元で、シャロン首相系タカ派がガザ地区侵攻を進めるなど、事態はイラク戦争の裏で悪化している。両者を迎合するような形でのクリントン裁定が懐かしい。
 1993年、イスラエルは元軍人のラビン首相とパレスチナアラファト議長が、クリントン米大統領のもとで握手を交わしたオスロ合意。彼らは後に、ノーベル平和賞を受賞している。アラファト氏がどんな経歴をたどってきたか知らないが、軍人を真っ当に経験してきたものは、真剣に平和を考える。州兵として役逃れを試みた者よりは、ベトナム戦争に従軍した者の方が、「戦争と平和」観は優れていると言えないか。それはやはり、戦い争う者達の本音や愛と憎しみ、攻撃性とその動きすべてを体で知っているからだろう。イスラエル政府から、アラファト氏が、シリア・ヨルダンなどの武装グループ、過激派などの活動を取り締まらない、と非難しているが、これも武装集団の真意を読んだ上で、イスラエルの出方に均衡がとれるかたちで、ある程度発散させているのではないか。両者の立場を把握した上で、果たすべきことを果たしている。
結:彼は確かな平和指導者。【2004/11/08/AM】