南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

「台湾論」綱領の補足と現在への言及

Nanjai2004-11-11
 いつかの稿で、司馬遼太郎/著の『台湾紀行』を読み始めたと記したが、どうも重厚であるので2週間では読みきれず長期貸出期に回すこととした。現在は、『認識台湾−台湾中学校歴史教科書』に取り組んでいる。これは、1997年に初版採用され、それ以前の国民党偏向教育に基づく台湾史軽視を見事に覆した、注目すべき教科書である。この書で感心することは、何を置いても、歴史記述の中立性である。それぞれの時代の統治者(日本統治時代を含む)について、その功罪を偏りなく記している。これは、現在の日本が学ぶべき事項である。「台湾論」研究では、日台両国がいま、学びあうことは何か、という目的も有している。先稿で論じた戦前期内における功の時期と罪(あるいは過失というべきか)の時期を、公正に見極めること。それが現在の日本の政治や社会に生かされてゆけば、かつて日本が台湾での支配で築いた経済基盤と統治制度が現在の台湾において生かされていることへと、つながり合うであろう。台湾こそが、日本がアジアの一国であることの自覚を与え、混迷した日本の道を拓くであろう。
 さらに、日本だけの為ではない。この学びあいは、台湾に新たな刺激と政策転換を迫るかもしれない。現在、台湾の陳水扁総統は、対中関係の改善のために、米国との関係を強めようとしている。中国の軍事的圧力に対して、米国の軍事力を背にして、その緊張の中、協調的で対等な会談を進めている。これは、ある意味では危険なことである。米国の最大の目的は、中国市場の獲得であり、台湾はそのアイテムに使われる可能性があることを、台湾自身が認識しているかどうか、定かではないからである。この不安定感を救う盟友こそ、日本である、と筆者は確信する。台中関係緩和の仲裁役が米国から日本に移転する可能性も、先の目的の中に秘められている。
 大学の卒業研究程度で、この目標のどこまでが進むかは、計り知れないところである。日台の近現代史から国際関係論へ。両国間の新しい健全な関係のために、研究を進めてゆきたい。
結:日本と台湾の学びあう社会を構築する為に。【2004/11/11/PM】