南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

初回道(はっかいどう)の旅<11>:ウトナイ湖・苫小牧・乗船

曇/雨(苫小牧)

朝からひどい雨。

ついに降ってしまった。朝食をとりながら、どしゃぶりの雨と国会中継を交互に眺める。この降雨では、傘を差して自転車をこぐのも厳しそう。チェックアウトぎりぎりまで待って、相当な徐行で港に向かうしかなかろう。10日も道内にいて、一度も悪天候に遭わない方が不思議なくらいなので、最後の最後にあたったのはまだ幸運だと思う。
このYHでは毎朝納豆が出る。これは本当に嬉しかった。納豆は毎日食いたい。

出発を10時まで待つもやまず、ネイチャーセンターへ。双眼鏡より白鳥。ぬかるんだ小道で観察小屋まで行けず。

荷物をまとめて身支度まで済んでから、たっぷり2時間は食堂でつぶした。雨がやまないからだ。チェックアウトの時間だが、状況は理解していただけると思い、荷物を部屋に置いたままネイチャーセンターへ行く。ここウトナイ湖は、ラムサール条約に登録された貴重な自然の残る湿地帯で、その姿を垣間見ることのできるビジターセンターが設けられている。YHはこれに併設された形なのだ。YHから歩いて5分もかからない。
傘を置き、靴を脱いであがる。名古屋にある藤前干潟の野鳥センターと同じ雰囲気。ただ運営費なのか、パンフレット一つ一つにワンコインを要する。確かここは市営のはずだが、館内でさまざまな企画をするNGOがあるのだろう。2階は展望室。かなりの雨曇りだが、職員の指す方向に白鳥が見える。少しだけ営みが見られた。
湖だけでなく、周囲に残る林も保護の対象である。散策道が設けられていて、観察小屋に通じている。しかし、雨でぐぢゃぐぢゃにぬかるんだ散策道は、旅行用のいい靴で踏み込めるものではない。多少冒険心で入ってみたが、この後の船内での視線を考えると無茶はできない。

11時にYHに戻ると小降りに。漸く出発。

私と同じように17日から泊まっている人に、どうもこの辺の地域研究をしているらしい学生がいた。ネイチャーセンターとYHを往復している。どっちでも顔をあわせるが、特に会話がないのが何となく酷。
YHに戻って間もなく、小雨になった。食堂から見えていた、建物裏のウトナイ湖畔を眺めに行く。そして、やっとこさ腰をあげた。あと1ヵ月半後には、ここは閉館している。二度と泊まることはできない。トータル3泊もお世話になった苫小牧市ウトナイ湖YHを、正面から写真に収めて、木立の中の道を旅立つ。

野生鳥獣保護センター

ここもネイチャーセンターと同じ趣旨の施設だが、かなり新しい。ネイチャーセンターが現場で、ここは資料庫やミーティング、公表の場とも言える。ウトナイ湖の成り立ち、地形、植生などの模型を使った説明。そして、広々としたラウンジからはウトナイ湖が見渡せる。せっかく雨がやんでいるので、ここでゆっくりしていることは難しいが、土砂降りでもここまで来るのは難儀ではなかったから、空調も良いしここで止むのを待てばよかったと思った。ミステーク。

苫小牧漁港。マルトマ食堂大盛況。30分待ってホッキカレーにありつく。

雨がやんできているので、予定通りの活動ができそうだ。YHのパンフレット集で見つけた、とある店でお昼を取ることにする。だんだん空いてくるお腹を抑えて、昨日と同じ道を港へ向かう。大型トラックの行きかう人気無い現代的な港を抜け、活きた魚の臭いがむっと立ち込める漁港の一角に、マルトマ食堂はある。もともとは漁師や魚市場関係者の食堂なのだが、獲れたて新鮮な海の幸を味わえることから、大勢の観光客が集まる。私もここにホッキカレーを食べにやってきた。昼時の小さな小さな食堂に、何十人もの客が押し寄せるからたまらない。30分は待った。漁業組合の人と我々旅行者が同じ列に待つ風景は妙なもんである。尤もバイクツーリングの方々はごっついので、漁師と見分けがつかないが、服装が違う。ま、そんなことは置いといて。
食堂は、おばちゃんが数人で切り盛りしている。カウンターが数席と6人掛けテーブルが3つあったかな。やっと順が回ってきて席に着くときに、気づいた。他のライダーと話していて向こうは気づいていないが、カウンター席にいたのは有馬君である。たぶんあの後出会った人からこの場所を聞いたのだろう。小樽側から上陸しているから苫小牧は初めてのはずである。残念だが盛況すぎて声をかけられない。
新鮮なホッキ貝のごろごろ載ったカレーが出てくる。意外とこのカレーが辛い。組合員のパワーになるカレーなんだろう。大きさはホタテだが、プリプリとした食感は初めて。すげーうまかった。あとからあとから人は並ぶので多少急かされるように食べたが、それでも量があって大満足した。
魚市場を覗いたり、潮風に当たりカモメと戯れたりして食後のリラックス。

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苫小牧漁港

市科学館とミール館。プラネタリウム20分

これもYHのパンフレット集で見つけたもの。市内でちょっと観光できるものが欲しかった。JR苫小牧駅のある市街地とは、国道を挟んで南側の区域。どちらが新しい町かは分からないが、たぶん南側は埋立地ではないかと。しかし苫小牧港は掘り込んだ港ではなかったか?じゃー海岸線は自然のままか。
そんな地区にある市科学館。「科学」をイメージさせるようなモダンな建物ではない。エントランスにテレビがあって、職員が二人甲子園を観ている。なんだかなぁ。けれど、館内の展示はさして悪くなかった。名古屋でいうと、理工館の半分と天文館を合わせたくらいだな。比較になってる?
陸海空における交通の発展。時計や電話など身の回りの科学を知ろうという展示。平衡感覚を狂わせる斜めの部屋もあった気がする。ドライブシュミレーションなんか弄っていたら、プラネタリウムの時間になった。小ぶりなドームには、私を含め4,5人の鑑賞者がいる。30-50人くらい入れそうだが、この人数は平日だから仕方ない。季節の星空と星座にまつわる神話。旅先で幾度も眺めてきた空が、人工的な形でそこにあった。
科学センターに併設された最後の展示、ソ連の宇宙ステーション「ミール」。先の細々した展示は何だったのか、と思うほど広いスペースにミールは置かれている。苫小牧市制50周年を記念して、平成10年に寄贈されたものらしい。名古屋市科学館のエントランスにもスペースシャトルのエンジンが置かれているが、天文的目玉を展示できることが科学館の知名度やランクを上げるものになるらしい。

一旦港で土産を物色。

いよいよ北海道滞在も大詰め。熊笹茶とムックリは買ってあるが、メインのお土産は最後に買えばいい。まず港のショップを見て、物足りなければまだ苫小牧中心部へ戻ればよい。9日ぶりの苫小牧フェリーターミナル。祖母も食べやすいものということで、なるべくチョコっぽいものは避ける。北の大地の象徴ジャガイモ型のまんじゅう、その名も「じゃがまん」をメインに据えて、昨日白老で買えなかった三色団子を探してみる。どうしてもあれに似たものが欲しかった。表の菓子類を主体に売る店と、その奥に地元の味を売る物産展がある。この中に「かぼちゃもち」というのがあった。真空パックで密閉されており、3日くらい常温で運んでも何とかなりそうだった。何より、手触りを舌触りに還元すると、三色団子にどこか似ていた。これをサブ土産に決定。駅周辺に行く必要はほぼなくなった。

ローソンとセブンしかない苫小牧でパンとキャラメルを買い、港に戻る途中から大雨。

ただ、付録で付け加えたいものがここには無かったので、ちょっとそこまで行ってくる。何度かコンビニに入るたびに目にした、北海道限定の明治キャラメル。かなり興味があった。「ハスカップキャラメル」と「富良野ラベンダーキャラメル」、それにフェリー内での飲食費を節約するためにパンを買って外へ出ると、雨が降り出していた。一日中どんよりとしていたから不思議ではなかったが、朝よりは大したこと無いと思っているとあっという間に大雨に変わった。ほんと中心部まで行かなくて良かったよ。
ちなみに二つのキャラメルのうち、ハスカップというのは苫小牧周辺で栽培されている果実で、珍しい産物である、と初日に苫小牧で得た地図に記してあった。が、旅中に実際に見ることも食べることも無かった。

手続きから乗船までの待機中、雨にさらされびしょぬれでフェリーに逃げ込む。デッキにも出られず、窓ガラスも雨露で曇った寂しい北海道との別れ。

ともかく港にたどり着くと、もう乗船を待つ人々や車両で混雑していた。ほぼ同時刻に大洗へ出港するフェリーもあり、間違わないか心配になる。駐輪場が無いので、建物の近くに自転車を置いて、混雑の中乗船手続きを済ませる。暫く待合席でテレビを見ていたが、いつ乗船可能になるか分からない。外に出て自転車とともに軒下で待機。バイクの人々は降りしきる雨の中、既に車両乗船待機場所で濡れながら並んでいる。風邪を引くのはやばいが、それ以上に乗り損なうのが怖い。自分も濡れるのを承知でその列に加わる。15分くらい待って、車列が動き出した。やっと乗れる。もはやその気持ちしかなかった。名残惜しさも何も考える余裕無く、搬入口へ一気に走りこむ。
帰りはB寝台をとってある。狭くてもプライベートでゆっくり休めるように、だ。長旅だから、隠していたって疲れは出る。行きとまったく同じ船なので、EVを降りてチケット確認が済むと、迷うことなく寝台室へいける。そして、さらに躊躇うことなく出港までに浴場へ行く。雨に濡れた体でいては、幾ら空調のいい船内でも風邪を引いてしまう。
風呂をあがっても、まだ雨はやんでいなかった。吹き付ける雨でガラスは曇り、最後の北海道を窓の内側からすら収めることはできなかった。最後の最後まで、樽前山を撮れなかった。港の明かりが辛うじて反射するのが感じられる中での、離岸となった。

ラウンジショー。

上流階級の方々がワインやカクテルを味わいながら楽しむところなんだろう、というイメージで行った。場所はそういうところだが、ショーはそうでもなかった。「テキーラ」が乗りが良くて面白かった。洋上の一つの記憶。
つづく