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南沙諸島紛争の原点と信託統治―春学期末レポート2章1節

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 当時成立しつつあった冷戦構造を背景とし、アメリカの戦略的価値観に基づき、共産化を防ぐために、サンフランシスコ条約にて帰属未定処理とされた南沙諸島。筆者の見解だが、フランスが一部諸島のベトナム委譲を明言しなければ、冷戦における戦略的重要性を英米は認識しなかっただろうか。日本の放棄後、国際機関が統治することとなれば、その機関が必ず冷戦上の中立的な視点において、管理を行うだろうか。恐らく、国際機関をも米国が擁立し、その下での半植民地化、委任統治の名を帯びた脱ソ連圏政策を講じるのではないか。
 そうした感を抱かせるのが、次に示すミクロネシア諸島処理との比較である。大戦時、日本が軍事基地として活用し、末期には米軍の対日爆撃の拠点となったミクロネシア諸島は、サンフランシスコ条約信託統治を規定されたが、これに基づくアメリカの政策は特殊なものであった。まず1節では、信託統治について理解し、2節にて、その信託統治の中でもアメリカによる戦略地区という特殊なシステムに置かれたミクロネシアの処理について分析する。
 第二次世界大戦後の国際社会秩序を目的として創設された国際連合は、《その目標の一つに非自治、非独立地域の独立を目指した保護・管理を掲げた。これが、総会における信託統治理事会の設置に繋がる。》国連は、戦勝国の秩序形成を果たす目的で作られ、その背景の中で非自治地域に対する信託統治制度も整備された。ヤルタ会談で決定され、国連憲章にも盛り込まれた信託統治の基本合意には、以下の地域を該当対象としている。
①従来の国際連盟委任統治地域
②敗戦国から分離される地域
③施政責任国が自発的に本制度下に移行させる地域
《このような信託統治とは、要するにその時点では自治、独立の能力を持たない地域を施政権国が管理、協力し、将来的に自治、独立に導いていこうとする暫定的統治形態である。信託統治領はこうした主旨に基づいて独立を果たしてゆく。》【2005/11/21/AM】