南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

満観峰と朝鮮岩

焼津の北のほうにある山です。家族でちょっと歩いてきました。といっても足腰の軟なアッシは朝鮮岩で已めました。安倍川駅から延々と焼津駅まで歩ききった母と妹とは裏腹に、私は朝鮮岩からさっさと下り、また郡上の旅に勝るとも劣らぬ愚行をして帰りました。
それは、安倍川駅から徒歩20分余り(カナ?)、旧東海道の宿場町丸子(このワードやばいぞ、丸子は正しくは「まりこ」と読むのであって、「まるこ」ではない。宿場町も正確に表記できないのか)尤も読み方なんぞは現地へ行って知ったのだが、そんなことはどうでも良い。今知っていれば、それ以前に知らずとも良いのだよ。へ行きました、と結び忘れたじゃないか。どうも結びが変だが、そんなことは最近の新聞でもショッチュウやっていることさ。新聞で日本語を勉強しようなんて、さっさと已める事だ、外国人諸君。結びは正しくは、である。というのがいいだろう。
また馬鹿な滑り出しの文章だが、これはほんねとーくに指定しないので、穏やかに読んで欲しい。
何故丸子に行ったのかというと、母からも唆されていたんだが、とろろ汁が食べたかった。それで、丸子の丁子屋に入る前に、大変恐縮なことを断っておかねばならない。これはもし丁子屋の店主様がお聞きになられれば、もう身を打ち砕かれてもしょうがない様なことである。帰ってから、母親に「アホか」と一蹴された問題である。それは、
とろろ汁というのは、麦の混ざった御飯に高価な山芋を擂ったお汁をかけて頂く立派なお膳ではなく、店先で200円くらいで一杯買ってズズーっと啜るおやつだと認識していたということである。これが全ての失敗と奇行の元であった。もう一つ前置きしておくと、このときの私の所持金は900円弱である。4桁も持ってないのでありました。
それで丁子屋の前にはお土産屋さんがあった。だがとろろ汁らしいものが無い。ここで気づけばいいようなものだが、ここまで来た以上どうしてもとろろ汁の食ってみたい(飲んでみたい、なんだが)この間抜けは、のこのこと店に入ってゆく。客の出入りが良かったのが、また拙かった。何のおやつの休憩だ、と甘く見て入った途端、座敷に通され、客は皆遅めの昼食。昼食だろうがブランチだろうがとろろ汁の定食なんざ、そう気安く食えるもんじゃない(らしい)。そしてテーブルにあったお品書きを見て、これは嵌ったと思った。定食は皆1500円以上。そんなお腹じゃないとは言っても、単品ですら500円を越える。まさかこんな店に来てとろろ抜きでアイスなんかだけ頼むわけにも行かんし、何と言ってもとろろ汁で売り出す観光地丸子の丁子屋のお座敷席だに。まず汗を拭く。これは郡上のように、「予算が合わないから」と出ることもできん。次に出されたお茶を飲む。入ってくる客は皆定食「丸子」を何人前と頼んでいく。さらに財布を覗く。何度見ても数は変わらない。仕方ない。「山芋まんじゅう」を一皿頼んで、510円で落ち着かせる。万が一があったら帰れない。店員さんは嫌な顔一つせず、以上でよろしかったですか、アリガトウ御座います、と去っていく。
因みにここから事態は妙な方向へ進むので、先に山芋まんじゅうについて。これは大変おいしかった。何せ僅かな財布から510円も支出して食べるのである。たった一個のダンゴでも味わうものだ。山芋を擂った即ちとろろがハンペイ状の皮に包まれ、おろし生姜とともにしょうゆ系の汁に浸っている。お茶を飲みながら、これをおやつにして食べていると、他人がどんなに高価な物を食っていようと、いい土産になった、と思ったものだ。
ところが、
これを4分の3ばかり食べ終わった頃、一人の女性店員がとろろ汁(これはワシの馬鹿なイメージでなく、列記とした御飯である)を運んできた。私はそ、それは注文してないです、と口に出しそうになった。間違いなくテーブルを誤ったのだ、と。しかし彼女はその膳をまんじゅうの横に置き、「それだけではお腹が空くだろうから、食べなさい」とそっと言って去る。厚意だろうとは察したが、こっちにも事情がある。躊躇っていると、「とろろは嫌い?」と尋ねられる。「いや、そうじゃないんですが。持ち合わせが無くて」と説明すると、「そう」。別に後で金を請求しようとか、そんな素振りは無く、私は信頼して大変ありがたくそのお膳を頂いた。全くとんでもない太い野郎である。実際、そのとろろ汁を単品で食べようにも900円するのだ。それを510円に含めていただいてしまうのだから。後で家族から猛烈に感心されてしまった次第である。
全く若いということは怖いもので、イヤハヤ。それにしても、丸子の名物とろろ汁をこんな形で食べることになろうとは、本当に予想だにせぬことでありましたので、厚意には厚く御礼申し上げます。それと、お座敷に通されながら、この店の古さとか某という有名な方が訪れられたかと話して下さっていたんですが、やや汗を額に感じ始めていた私は何も課も聞き落としていました。どこかで調べられないものでしょうかね。