陽明山温泉
朝はYH近くの食堂で、広東粥(クワントンジォゥ)を食べた。味付けがかなり薄い。香菜と麩みたいなのが簡単に載っているだけ。それでも、近くに手軽に朝ごはんの食べられるところはちゃんとあるものだと感じた。
呉さんの車で陽明山に向かう。途中、温泉で使うタオルを持ってないので、コンビニに寄って買う。忘れたのではなくて、出かけるときは腰ポーチひとつなので、貴重品を入れたらいっぱいなのである。ついでにインスタントカメラも買ったのだが、2つとも400元して、カメラは相応だがタオルに400元はないだろうと思った*1。山間部に入ると道に迷い、何度も「ブーハオイース」と言っては、道行く人に尋ねていた。陽明湖の近くらしく、温泉とは言わないで湖を手がかりに聞いている。登り下り行きつ戻りつがあって、着いたところは陽明山公共浴場*2。陽明山温泉は、手持ちのガイドブックではさほど大きく取り上げられておらず、同じ台北北部の新北投の方が有名に書かれているが、昨日の車内でも陽明山のほうが推されていた。ちょっと秘湯なのかも知れない。それにしては割と大きな駐車場で、決して寂れてもいないスパが造られている。温泉リゾートよりは、療養とか休息の場的な温泉地だと思われ。
さて、そんな元療養所的な建物は、食堂と温泉の二つで構成されている。入湯料は昼食代込み?で400元ぐらい(だったと思ったら、調べてみると無料だそうである。ただの受付だったのか、かなり金銭的なことまでお任せしていたので払ったか否かも定かでない)。礁渓に次いで2度目となる台湾の温泉。ここも水着の要らない、裸で付き合える温泉だった。一部、温泉というよりは、湯船や周囲にかなり造型の施された温泉水プールの様相でもあったが、庇に覆われた建物寄りの一帯は、腰まで入るのも辛いほど熱々の風呂があったりと、温泉らしい温泉を愉しむことができる。さまざまな湯池に身を沈めて廻る。呉さんはよく、「温泉放題」という語を使った。全く以って相応しい表現だと思う。片隅に湯上りを楽しむ老年男性の集まりがあって、ここから日本語が聞こえてきた。中国語に混じった数句のようだが、熟した響きがあった。あぁやっぱり各所で使われているんだ、と実感する。入浴で落ち着いて生じた空腹に、担担麺を食べる。天井の高い、大きな座敷のような食堂。食事中、新島先生から電話があって、この先何か困ったことがあったら連絡してください、と言ってくださる。旅行中少しでも頼れるところがあるのは有難い。謝謝。
陽明山公園
市街地の喧騒を露ほども感じさせない、台北北方山間部の森林緑地公園。嘗ては、温泉と合わせて、総統がたの休養地だったかもしれない。公共浴場から車で数分移動する。春節只中の行楽地で、散策客も多い。南方のため、早くも新緑(あるいは常緑か)茂り、春の訪れを告げる春節に相応しい光景。野山の景色やところどころに咲く花と写真を撮って歩く。鮮やかに裂いた梅の前でも撮ってもらったが、祖父によるとこれは高山梅だそうである。
剣潭駅で、ありがとう
兵役中の春節休暇に車を飛ばして会いに来てくれた呉さん。今夜には郷里に戻らなければならないそうである。台北より北から高速道路に入るため、手前の地下鉄駅剣潭まで送ってくれる。途中通った天母は、国際学校のある地区だというようなことを教えてくれた。
北海道のユースホステルで一夜を共に過ごしただけの友人が、ほぼ丸2日も知り合いと一緒に台北を案内してくれたことに感謝するとともに、どんな出会いでも友人とはかけがえのないものだなぁと思った。2日間、移動も食も遊もまったく不安・心配が要らなかったのは本当に助かった(逆に行動力が鈍ってしまった面もあるけれど)。一人では行きにくいところも行け、一人旅では出会えない人ともまた交流できて充実した。呉さん、本当に謝謝!!謝謝!!
中正紀念公園で天燈節見物
独りYHに帰って一休み。大雑把だった台北市内観光をきちんと練る。今年の元宵節のランタンフェスティバル(天燈節)は12日から始まる、と出発前に聞いていた。今夜が初日だ、見物に行こう。今朝粥を食べたストリートに食堂が幾つか集まっていたのを思い出し、晩飯をここで取ろうと歩いたが、入る勇気が出ずに仕舞う。結局表通りのベーカリーで、よく分からない味のパンを2つ買って歩き食い。今日最大の敗北感。
そのまま南へ歩いて、中正紀念公園に行き着く。公園の外面から華やかな張り子でいっぱいだ。夕暮れから徐々に周囲が暗くなるにつれて、その美しさが際立ってくる。地下鉄の入口付近に、鐘楼のような形をした天燈があって、下をくぐることができる。会場となる中正紀念公園は、蒋介石元総統の記念公園で、この日は暗くてはっきり望めなかったが、広大な広場と荘厳な建物があるらしい(14日にあらためて紹介)。表門の「大中至正(何事も中庸が正しい)」がライトアップに浮かび上がる。園内は物凄い人出とフラッシュの嵐。もっとも広い藝文広場に、最大規模の天燈が大音響の音楽のもとロボットのように動き、観衆の注目を一点に集めている。これは左右に座する大庁からも眺めることができ、やや遠いが他人の混入を避ける撮影には向いている。私のようなインスタントカメラでは、多少の市民挿入を我慢して極力接近したほうが綺麗に撮れる。大庁からでは、ネオンならぬランタンの夜景が写った。紀念堂の周囲にも、規模は小さいながら精巧な細工を凝らした天燈作品が展示され、一つ一つ丹念に見て廻る。とくに干支などの新年祝いに関するものが多かった。最後に、公園の片隅で仮設テントを張り、荘厳華麗な龍のランタン飾りを披露しているところがあった。解説板も置かれているが、その空気は怪しげで奥までの見物を許さない。フラッシュを光らせた男性が管理者から制されていたが、私もこっそりシャッターを押す(ヒヒヒ)。どうも見料を払って金運などを占ってもらうところらしい。公園一周だいたい2時間ほど見物して、紀念公園駅から地下鉄で帰る。
今夜のルームメイトは、私と同じ年ぐらいの男2人で、夜市から帰ったところのようだ。台北市内の観光プランをたてている。世界各地の建築をミニチュア化したテーマパーク*3があるそうで、それに行ってみたいとか何とか。私は九份を薦めておいた*4。一人は結構ノリの良い方で、かなりいろいろと適当な案を出している。マンゴーかき氷がとても旨いそうで、これを食べなきゃ台湾に来た甲斐がないとまで。日本人旅行者に会えて心が和むと同時に、飽きた就活を切り上げて旅行に来たと言う2人に、少しだけ現実に帰らされた気がした。
つづく