朝はセブンイレブンで弁当を買う。2日間、人に立ち合ってもらったんで、自分で人と会って飯を得る勇気を失っている。食後、またふらりと地下鉄駅に行って一日票を買う。ガイドブックでは紙製のものとなっているが、今は磁気カードで改札機も通すことができる。価格は1枚200元で、使用後に返却すれば50元のデポジットが返金されるが、やはり記念品として持ち帰りたい。表面は中正紀念堂と板南線車両の青を基調とした鮮やかな図柄、裏面は注意書き。朝一に買っておくのは準備で、結局午前中は使用していない。
松山慈祐宮
久々に薄暗い台鉄台北駅地下構内に下りた。券売機で近距離切符を買って、鈍行乗車。あえて窓口で揉めることもないと思った。地下を出て、貨物の操車場らしき広々と線路の並んだ松山駅に到着。この近くには国内線用の空港もある。台北駅が地下駅で場を取れないので、台鉄の工場はここになっているらしい。あと八堵もそうっぽい。名鉄名古屋と栄生の関係みたいな。
駅の北側にその寺院はある。そこまでどうやってたどり着いたのか、よく分からないが、線路を何本か越えるような踏切を渡ったので、たぶん南側にでてしまったのじゃないだろうか。寺院内は、さすが正月なのでごった返していたが、2階、3階と登ると敬虔な参拝者で神聖な空気が漂っていた。観光客が気軽に写真など撮れる雰囲気ではない。表から一枚だけ収めた。1階ではおときが振舞われているようだった。この寺院の西側に、比較的観光ガイドでも知られた夜市がある。表通りは静かだったが、アーケード街的な裏通りは食堂が開いて栄えていた。けれど9時10時にモノを食べる気にはなれなかった。
松山で、南に行くバスを探したがサッパリ分からないので、適当に見当をつけて歩く。途中のコンビニで、プリンシェイクに似た飲み物を買う。一度、観光者など通りもしないような住宅地に迷いこんだが、なんとか大通りに脱出した。このあたりは、飲食店よりも被服・ファッション店が多い。軽い空腹と都市の喧騒で目眩がしそうだったが、官庁街の中にやっと台北101を見つけた。
台北101
普通ならアジア一高い商業ビルを官庁街で探し回ることはないのだが、だいぶ疲れが来ている。高さ508m、101階建ての中は高級なショッピングモールで、なんだか自分が不似合いな格好の旅行者だと感じた。展望台までのチケット(350元!)を買うと、スタッフがまるで迎賓様のようにエレベーターまでご案内してくださる。エレベーターを軸にして、360度四方を見渡せる展望階。ほぼ足元からガラスなので、うつ伏せて真下を眺めてもいい(勿論そんなハシタナイ行為ができる雰囲気ではないが)。真下を見下ろすと、階下の人やモノの小ささによってその高さに衝撃を受ける。が、遠くを望む分には裾の部分がないだけで、山に登ったのと同じ感触である。やはりこれは都会の真ん中にあって、日ごろのセカセカした生き方を視点を変えて見下ろしてみる癒しの場かもしれない。割と近いところに国内線用の松山機場が見えた。
国父紀念館
国父、孫中山すなわち孫文先生のメモリアルホール。地下鉄国父紀念館駅から向かうよりは、台北101からのほうが正面で入ることができる。すなわち南に大きく開けた公園である。衛兵に厳重に守られた孫文像。毎時ごとに衛兵の交代が行われるが、この厳かさを理解できない幼子が闖入しそうになった。カメラ撮影はいいのらしい。中華的と非中華的の混在する光景。
西洋学問を究め、医術をもって人を救い、革命をもって国を救う。革命によって中華民国を建国し、三民主義(民族主義、民権主義、民生主義)を掲げて民国を理想の近代国家へと導いた。その生涯を詳しく見ることができる史蹟展覧室。卒業研究に少しでも糧になればと。館の周囲をめぐる回廊には、日本の燈籠のような淡い彩りの天燈が吊るされて、涼しさを誘っている。空腹が厳しいところまで来た。国父紀念館駅から地下鉄に乗り、板南線東端の昆陽駅まで。終点まで乗ってみたかっただけで全然意味はない。何か美味しい店でもあるかと思ったが、さすがに15時。ぐるりと一周してすぐに地下に戻り、折り返して西門へ。
西門で牛肉麺
西門といえば、台北の若者が集まる歓楽街だが、もはやそんな気分になれないほど空腹であった。張家清真黄牛肉麺館というのがガイドブックに載っていて、ここに行ってみようと思った。確かに地図の通り在ったが、やはり入ろうか入るまいか迷う。そのとき、ちょうど食ったばかりのおっさんが「食ってけ、食ってけ」というように声を掛けてきた。おかげできっかけが出来た。せいの高い男性店主が私を見下ろすように、何食うと聞いてくる。「ニウロウミェン」言うのがやっとだが、「ホンスー、ハイシ何なに」とスープの味だか2種類聞くようだったので、先にまともに聞こえたほうだけ繰り返した。それでやっと入れ、となる。何にせよ、やっと食にありつける。
たしかにホンスーというだけ、スープが赤かった。麺はうどん。「日本人か」と聞くので、そうだと答えると、メニューを持ってきて一番下の注を指差した。「麺、スープのおかわり自由」と日本語で書いてある。量はあるので十分だったけれども、お気持ちが大変嬉しかった。迷っていたところを呼び込んでくれた男性と、店主に謝謝。
龍山寺と華西街夜市
牛肉麺を4時に食ってしまったので、夕飯ともなんともつかない。あとは観光夜市で何かとつまめば良いや。いったんYHに帰って*1休んで*2、再び夜の街へ。板橋線で西門の次が龍山寺。
天燈祭りはここでも盛んで、境内にも提灯がいくつか。明かりの下をくぐるとご利益があるのか、皆が並んでいる。私も同様に再拝してきた。
華西街夜市で印象的なのは、やっぱり蛇を食わせる店で、目の前で蛇を取り出して腹を割いてみせる。肝を取って小皿にわけ、さぁどうぞというわけだ。調理を目前でやるわけだから、信用して食ってみてもよかったが腹を壊す危険もあるし、お値段が一番怖い。マジで入店していく人も結構あったよ。さすが台湾人。
乗り鉄をやっていいのかな
今夜は士林夜市をたっぷり歩こうと思っていたので、龍山寺は早めに引き上げた。が、板橋線をストレートに台北駅まで戻るのはつまらなかったので、小南門線を経由してみた。要は乗り鉄精神丸出しに過ぎない。これは西門駅から中正紀念堂駅まで、台北駅をバイパスする連絡線で、間には小南門駅しかない。2両編成くらいで、当然乗車率も低い。最短ルートじゃないし、乗換えも多いから、一日票でなかったら台湾でもやってはいけないのだろうね?
士林夜市
剣潭駅のほうが近かったのに、士林駅で降りてしまった。台北最大というか、最も過密で盛況だといえる。一晩にどんだけゴミが出るのだろうと心配してしまう。一昨日、最もおいしい奶茶が飲めると聞いた店はどこだっけな。車内で、此処って指差されたもんで、車窓を思い出しながら表通りを歩いてみるも分からず。だいいち人通りが多すぎてダメダメ。
ココナッツに穴をあけてストローを挿しただけのジュースを買う。ところが、これも強烈な甘さでやはり萎える。味付けはしてあったか。日本人の皆さんには殴られるか知れないが、台湾甘味と臭豆腐どっち取るかって言われたら、後者だな。
市場を隅から隅まで覗きとおして、食いもん屋も一通り見た。揚げまんみたいなのを一個食ったきがする。そして、西瓜シェイクを目の前で作ってもらってがぶがぶ飲んだ。これは自然な西瓜の味で、嫌な感触がなくてよかった。夜市といえば、海賊CDなんか買って行きたい気もするけれど、持ち込んだら首とられちまうから。
帰りにはやっぱり台北駅前で果物を買って、ベッドで食う。新鮮で瑞々しくって止められない。
つづく