北宋の開宝7年(974年)、开封市東南の歴史ある繁台の上に築かれた塔。広い公園内にそびえる鉄塔と違って、こっちは塔だけである。しかも高さは、黄河の砂などで随分と埋まって、往時の3分の1近くになっている。龙亭公园や山陕甘会馆の宋都時代復元模型では、現在の姿を思い浮かべると別ものかと思うほど、立派な塔だったことが分かる。
さてアクセスであるが、北側には鉄道が走っていることもあって、塔といえども頂すら望むことができない。また周囲を古い住宅地に囲まれ、車一台分程度の道幅の路地を入らねばならないうえ、案内も乏しいため案外容易にたどり着けない。多少広い道から唯一望める場所はといえば、南側の最も接近した位置からくらいのものだ。景区内だと接近しすぎになってしまうので、塔のいい写真を撮りたい場合は、この場所が適当。鼓楼広場から8路か15路、火车站から11路に乗車して、いずれも禹王台で降りるのが良い。繁塔のつく停留所は存在しない。ただ、下車してから塔にたどり着けるかは保障できない。まず鉄道を南に越えて、禹王台公園の西側住宅地に踏み入り、絶えず視界上方に注意していると、突然仏塔が現れるだろう。春節期に歩く際は、爆竹の大音響にもご注意を。ちなみに入場ゲートは西向きである。
軽いスロープを上がって左手に民家がある。というか、民家の庭先にお邪魔して塔を見学するような雰囲気。门票は10元。売り場に人気がないので素通りしようとすると、おばはんに声をかけられる。おもむろに年票を差し出し、刷卡してもらう。景区内には、塔以外にほぼ何もない。しかも塔も現在修復中。下一層分ぐるり一周足場が組んである。今は住宅街に囲まれながらポツリと建っているが、いずれ禹王台と統合した景区になるという話もある。
現在はわずか三層しかないが、それでも中に入ることができる。塔北側から入り、人一人通るのがやっとの階段を登ると、2階に達する。塔内は薄暗いが、案外広々としている。壁面には数多の仏像が彫られている。前述のとおり、一応台の上に築かれているので南には少し遠望できる。軍事用の空港も望める。
もっとも印象に残ったのは、内外の壁面に彫られた仏像が、下から約三段分は確実に破壊されていたことである。おそらく文革時代やそれ以前の歴史を尊重しなかった時期、少なくとも人間の手の届く範囲は破壊しておきたかったのだろう。面倒くささが破壊行為を徹底させなかったのは、幸いといえる。
それと、繁台は周囲より比較的ひらけたところなので、ここで凧揚げをした場合、軍用空港に離着陸する輸送機などに障害となりはしないか、と思った。そういう規制はちゃんと行われているのかな。もうそれくらい空港と人家が接近した状況なのだ。それほど頻繁に離着陸しているわけでもないが、いくら人口飽和都市とはいえ、騒音公害を考慮すべきでもある。余談でした。
完
(画像はいずれも2017年撮影)
(map:开封繁塔)