下調べ:市区より南へ38km、駅前からバス有、約10元。山頂までは行かず、鸡公山バスターミナルが終着。鸡公山景区入場料は30元程度。
鸡公山は、自然保護区であると同時に、民国時代欧米諸国の別荘が数多く建てられた四大避暑地の一つでもある。景区内に蒋介石の別荘や、列強の西洋式近代建築物が残る。
6時半、お目覚め。外を覗くと、傘をさす者ささない者、両方居る。相変わらずすぐれないらしい。朝飯屋の湯気は望めるので、退房して出る。けれども結局食えなかった。スタートは今ひとつ。
駅前にバスが、というが、それらしいものが分からず、まず汽车站へ。鸡公山の項はない。ところが、街を鸡公山行きが往来している。これはどこから出ているのだろう。足跡をたどっていくと、駅前広場と市バスターミナルの間、「旅游专线」というベンツワゴンの溜り場に行き着く。これがぎっちり満員で一人10元。一時間もしないで麓の町に着く。本当に38kmかと思ったりするが、実際運転が荒い。老师の言うほど、下車から山門まで距離はない。完璧に人気のない参道を軽く登って、入山ゲートに着く。
ここで某旅行団体が盛大なセレモニーをやっている。実はこの団体との遭遇はここが初めてではなく、信阳汽车站に隣接する高級ホテルからバスの軍団が発車していくのを見ている。どうやら南阳市の某会社職員とその家族辺りの集まりで、信阳の信运集团(長途バス会社)が企画した鸡公山登山大会なのらしい。信阳や郑州のお偉さん方も姿を見せている。小雨降る中、花火を上げて儀式を行った後、若手20~30人程が号砲と同時に山頂へ駆け出していく。そうしてやっと入山ゲートは解禁になった。寂れきってしまったのか、AAAA級なのにもはや無料らしく、今回はイベントのドサクサに紛れて進入したが、售票処は機能していない模様。
鉄路をくぐってしばらくコンクリロードを登ると、頭上に「鸡公山景区直進、景区管理局右折」の指示板があるが、イベントのためか警察が張っていて直進できない。仕方なく従い右折する。と、間もなく登山古道にすんなり入れた。やはりイベントに感謝。
初めて足を踏み入れる中国の登山道。石段がやや苦になったが、整備は良好である。日本の自然歩道となんら変わりない。鬱蒼と茂るキギは「もののけ姫」の実写なんかやったら似合うと思った。河南にもあるんだな、こういうところが。登山大会参加者の列が長く、森林浴を楽しむには邪魔だったが、小学生の頃登山デビューの切欠になった御在所岳登山大会を思い出した。にしても皆さん山歩きに慣れていないのか、始めからスパートかけすぎ。すぐ疲れるよ。果たして、中腹ぐらいからへたばった声が響き始めた。休憩しまくり、山頂はまだかまだかとあえいでいる。大体ヒールとか革靴とか、運動靴なんて滅多に居ないんだもの。そして幾ら何でも一時間そこそこで山頂に着くわけないだろ、あんたがたの足で。「一級火災区」にもかかわらず、疲労に伴って喫煙率が上昇。駄目だ、こりゃ。レースに参加しない方々にも一定の目安時間が有るらしいのだが、もっと自然を味わってほしいと思った。
中国人はさておき、私は私なりに山歩きを満喫する。人民の観察も楽しいが、雨天だからこそ、程よく空を木々で覆われた山道は格別である。「头道门」の观景台は、霧に包まれ何も望めず。その次の观景台はまったく視界が開けないところで、喫煙所と化している。大深沟生态园へ続く入口は、完全に剥げあがって先は真っ暗。見に行かないほうが身のため。その先に初めて渓流と出会う。ちょっとゴミが目立つが汚染はしていない。滝まで見えると最高なんだが。と、突如目前に検票所が出現。一瞬ドキリ、取るなら取られるまでと割り切る。勿論スタッフが雑談してるだけで、何も取られない。帰りは無人小屋になってたっけ。そして間もなく、一応のゴール地点、龙子口に到達。私も団体メンバーに混じって、最後の一段をスタッフに引き上げてもらう(笑)。山荘ホテルの広場で表彰式ののち、参加者に弁当が配られるが、さすがにそこまで図々しく貰わない。売店の飲食物や板栗を横目にみて、报晓峰を目指す。
廃れたんだか、造りかけなんだか分からない街(「千と千尋」の冒頭シーンみたいな)を抜ける。本当に視界が悪くて、数メートル先の霧中から人影が現れる始末(怖い)。月湖を右手からぐるりと廻って、また一頻り登ると云中公园。さすが名の通り、ここだけやや晴れている。強風吹き荒れる中、最後の岩山を登り*1、三角点にタッチ!! 晴れて(ない?)登頂!! 岩を積んだだけの危なっかしい頂であるが、これぞ鸡公山の名の由来、即ち鶏の頭の形なのだ。そんな5人も立てないほどの空間に写真屋は来るし、様々な角度から撮りまくる輩は居るし。しかし怖いながらも、雲の上の孤島って新鮮だな*2。疲労と空腹で足を踏み外さぬように。
月湖をさらに廻るようにして下ると、灵化寺。少しだけ物産店が溜まっているが、寺は有料の模様。ちなみに龙子口から道なりに歩いてきたが、地図を持ってない上、方角が分からなくなってきた。此処から先、鸡公山のもう一つの顔、別荘地帯を巡るのだが、龙子口に戻るのに結構苦労した。
広くしっかりと舗装された林道に出たら、頼れるのは方向指示板のみ。一度だけ景区全体図を見られたっけ。活佛禅寺とか変な名所もあったが、美国大楼とか挪威大楼といった往時をしのばせるものを探し歩く。林道には国際避暑地の名残を示すべく、万国旗の街灯が並ぶ。そういえば蒋介石の别墅なんて、案内板にも見なかったな。どこにあったんだろう。
ここまで来ると団体さんの姿もまばらで、急に孤独感が沸く。前方から怪しげな爆音が響いてきて、霧の中から突然トラクターが出現。結構怖い。雨もフードではカバーしきれなくなり、少し寒気が。木立が途切れると巨大な豪邸がふいに現れ、覗いてみるとビックリ人影がある。一部はホテルなのだ。いや非使用保存であっても霊が出てきそうな不気味さである。諦めかけながらも、やっとのことで探し当てた外国大楼なるエリアは未整備なようで、かなり瓦礫広場だった。まぁ幾つか類似した豪邸を見られたので良し。
が、龙子口へ戻るのが大変。一度ゲートを出てしまい、日本で言う「○○山スカイライン」のような、下まで40kmあるという道路に迷い込んだ。即行ミニワゴンの客引きに遭うが、拒否してまた景区内にもぐりこみ、新たな道を探す。割と小さな、番地のついた別荘群を縫って歩いていくと、何とか記憶の残る場所に出られた。
あんなに騒がしかった龙子口もウソのように静まり返り、売店も片付いている。まだ14時、ゆっくり2時間かけて下ってもバスはあるだろう。往路とは打って変わって、人気ゼロの登山道を独り下る。もしかすると多くの参加者はバスで下山したのでは? 朝からミカン3個で活動しているせいか、足がなんとなくガクガクしてきた。石段が多く、疲労で軟着地できない為だ。休憩所全所で10分ずつ細かく休みを取り、静けさを満喫。それでも1時間で下りきってしまって自分でも驚き。五合目を過ぎると、何人か登ってくる者に出会った。午後からでも手軽に登れる山なのだ。とはいえ、大音響で曲を聴きながらリズミカルに下ってくる若造仙人には驚いた。なんだアレは。窓も壊れて廃墟状態の景区管理局の前で、登山成功のガッツポーズ。ちょっと吠えた。
ゲートを出た途端、ハイエースに拾われ市区に帰る。ちなみにこっちのワゴンは、行きの「旅游专线」とは違い、公交5路という市バス路線にあたる。運賃も7元と安く、してやられた感じだ。でも最後まで分からなかったよりマシ。「旅游专线」の目立つ一角に惑わされず、公交ターミナルでハイエースを探してほしい(後に続く者へ)。こいつも運転が荒かったが、涎を垂らして一眠り。
安宿街の飯屋でやっとまともな食事。この炸酱面は塩辛すぎ。駅の売店で地図(信阳も地図を買える店は少ないと見た)を買って、さらに広場の一角で板栗を購入。信阳といえばお茶(信阳毛尖)の産地だが、茶葉は开封でも買える。それに対して信阳に来て初めて見る信阳の特産、板栗は目を引いた。宿でまず味見。イケたらお土産。
その宿だが、昨晩と同様19時頃客引きに従って案内される。部屋を見て40元でOK出して登記するといってパスポートを持っていったが、暫く戻らない。上着脱いでテレビをつけくつろぎ始めたところで、主人が戻ってきて「良い所を紹介する」という。来た!まさに「信阳にガッカリ」と心中で叫んだところだ。が、そこは昨晩の信阳である。外国人の「不要那么好的」が通じた!高い宾馆ではなく、お隣の招待所でもちょっと良い部屋を提供して40元は変えない。早合点はいけない。信阳は温かい町だ。
少々頭痛を感じ、20時半には就寝。
つづく
(map:信阳鸡公山)