南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

不安と焦燥のチャイナ

文革の混乱に翻弄された知識人が、改革開放と同時に無秩序な市場主義競争に走り、儲かるだけ儲け続けるのは、自由に活動できるようになった解放感からではない。いつ途切れるとも知れない現体制に対する不安と焦りからなのではないかと思った。
中国は政治的闘争の時代を反省し、改革開放を経て新しく変貌した、この先段階的に民主主義の国になるという人もいる。けれどこれだけ格差が拡大したといわれながら、平和的に保守勢力を抑えていけるかどうか怪しいものである。先に資本主義社会を確立させた上で、改めて社会主義に取り組もうという改革開放の考え方からすれば、ある程度豊かになった段階で再び回帰する可能性は十分にある。共産党内に改革を支持する勢力と保守的な勢力があり、国民の中にも経済の自由化を歓迎するものと恩恵を受けられないものとに分かれている。政府としては、いずれを抑圧しても返り血を浴びるのは必至で、均衡崩壊に怯える様子を少しでも感じ取られないために内外の政治問題に視線を逸らさせるのに躍起である。では今儲けまくっている成金どもは自由気ままで苦悩なしなのかというと、実は始終不安にかられ、それを見せまいと金儲けで紛らしているにすぎない。いつ、この自由な経済運営が断ち切られ、資産を回収されるとも知れない不安、いわば死を宣告される瞬間に追われながら、一年一分一秒でも逃してはなるまいと利益確保に奔走する悲惨な心境なのではないだろうか。歴史上、幾度も蓄積を全否定するような大転換を繰り返してきた国である。人民それぞれが良くわかっているはずだ。