この上海特化旅行は、09年の「帰郷旅行」より1年半を経て自分の中国語がまだどれだけ通用するか、語感が戻るかどうかを確かめるのと、朋友に会いに行くのを主目的としたものである。また、これまで乗継など立ち寄り地に過ぎなかった上海をまじめに見物して、日ごろからストックしておいた市内の景点を適当に消化するのも狙い。
お盆も正月も自主的には休まず、閑散期ならいいだろうと思った。それでも安全策としてGW内を狙い、且つ直前にフライトを予約しても空席のありうる9日帰国にした。それだけ迷いに迷ったのは数日とはいえバイトを疎かにできないのと、東日本大震災による自粛ムードの中で悠々海外に出ていいものかという思いであった。しかし仕事や気運より、せっかく過去に養った自分の能力を保っておくことのほうが大事だ。
1年半ぶりの出入境とフライト
フライトは午後便なので午前中は出勤し汗を流す。正午退勤、30分で帰宅し簡単な昼飯と身支度。不十分なカロリーは機内のオヤツに委ねる。土休日の名鉄特急ダイヤは不都合で、フライト15時40分の2時間前に間に合う私鉄無料特急がない。金山13:19発の準急を予定していたが、父がGWにギリギリではいかん、と13:24発のミュースカイ全車指定に乗れという。やむなく350円のミューチケットを買い、初めて指定席に座った。超特急でセントレアに着くも、国際線のなんと空いていることか。チェックインを済ませ、ギフトショップで知多半島の新発売らしき和菓子「ふところもち」を、朋友への土産に買う。いつもならここでスカイデッキに上がって昼飯となり、さらに余裕さえあれば展望風呂でも楽しんで出国するところだ。出国チェックで新規取りたてのIC旅券に印がつき、ベルトで金属探知機が鳴った他はトラブルなし。人民元は中国に入ってから買えるもんだと思っていたが、免税エリアの両替所にRMBのレートが出ている。ここで購入はしないで数値だけ参考に計算しておく。ところが、浦东机场の手荷物受取場にある両替所で、ここより良いレートだと喜んで両替したら大ハズレに悪くてガックリした。15000円で1200元は期待したのに1089元しか得られず、甘かった。なに、河南暮らしに倣えば何とでも倹約できる。
さすがGWも帰国時期、CA上海経由成都行きはガラ空きだった。ところで私がチケットを買った先月20日頃、四川省内でチベット仏教徒による暴動があり、同省は外国人の入境禁止になったはずだが何故かこの便は運航されている。いつ解禁されたのかな。つまみの落花生も含めて、出されたものは全て胃に通した。口にしたくない味覚は一点だけ、インチキホットドッグもあって何だか機内食も向上してきたなと。香港映画を音声なしで観て時間をつぶせば、まもなく上海に到着。入国審査も特記なし。貴重な1,089元と1年半前の残金5元少々を財布に収納して、準備完了。
上海地铁
これまで浦东机场より上海市内へ向かうには机场巴士(五线,火车站まで22元)を利用していた。帰国の際には時間の関係上リニア線を使うのが専らであった。机场巴士は乗ってしまえば安心だが、市内に入ると渋滞に左右される。特に黄浦江を潜るトンネル内は酷いもので、終点まで2時間半かかる。今回これを利用するなら地下鉄2号線の张江高科站か龙阳路站まで乗り地下鉄に接続するルートでないと、朋友が予約してくれた旅舎の到着予定時刻19時に到底間に合わない。先日書店のガイドブックを繰り、六线が张江高科站に停車することを確認した。ところが、同書の地下鉄路線図を眼にした途端、計画は一変した。地下鉄2号線は张江高科からさらに延伸し、浦东机场まで開通していた。近年の上海地下鉄の成長は目覚しい。私の離れた1年半の間に既成路線は距離を伸ばし、新しい路線が郊外に枝を生やし市中に蔓を絡ませた。総延長は東京都のそれを抜いた。2007年夏、初めて中国に降り立った私を泣かせた浦东-虹桥両空港間の移動。いまや2号線に乗れば渋滞を気にせず着けるのだ。初めて海外に持参した携帯のカメラ機能は、鉄道ファンとして先ず地下鉄路線図を捕らえた。
今回結局最後まで新しい地図を買わなかったので、この画質の悪い路線図が随分参考になった。
上海浦东机场より南京东路までは7元。安全ドア付のホームは撮影が難しいので電車は撮らない。机场から广兰路までは郊外線。路線図上は同じ2号線だが、直通ではなく广兰路で一度電車を乗り換えなければならない。これは輸送効率の関係だろうから理解できるが、广兰路での接続が全然できてない。郊外線の到着した目の前で市内線が発車するという、とんでもないダイヤが組まれている。混雑解消のためか停車位置もずらしてあり、駆け込みすら厳しい。人の流れを考えていない。
日本人はふつう地下鉄の一駅間を2分程度と読む。郊外線は駅間が長いから多少プラスしても良い。この乗車区間の駅数は15個ぐらいだ。どんなに要したって1時間に収めてほしい。ところが実際には1時間半かかった。原因は各駅発着時の効率性にあると思う。とくにドアが閉まってから電車が発進するまでの間がやけに長い。本数は十分(大体6,7分間隔)にあるのだから、もっと停車時間を短縮しなければならない。
まだ新しい匂いのする郊外線は高架線部分が多く、巴士の走る高速道路と並行していて爽快だ。市内線に入るとラッシュアワーらしく混雑度が増す。車内には液晶モニターがあってCMとニュースを流し続けている。朋友のお告げどおり19時きっかりに南京东路到着。当駅も10号線が交差するターミナルに変貌していたが、3番出口に味千ラーメンはまだあった。
上海福州路外滩老船长青年旅舍
いつも上海での宿泊は、江西中路にある上海明堂旅行者青年旅舍と決まっている。南京东路から北へ10分ほど歩くのだが、今回は逆方向。実は日本からの国際電話が煩わしくて、朋友に予約を頼んでおいたのだが、旅行日程を決めるのが遅れて我家@上海は満室だった。そこで彼女の機転で新しいマイホームを見つけ予約してくれたのだ。寝床は確保されるわ、世界は広がるわで非常に感謝している。駅からの距離は明堂と大差ない。明堂と同様、租界時代に建てられた近代建築群の中にある。
フロントで予約を確認しても、私の名がない。予約カードを自分で見れ、と手渡され、パーっと繰って適当なのを摘み出してやった。予約が成立してなくても取っ掛かりになるし、言い張っちまえば何とか通るものさ。1泊70元×4日間と押金100元の計380元を一括前払いで納めて部屋へゴー。电梯を見過ごして4階まで駆け上がった。このYH、明堂よりかなりボッサい。ベッドもロッカーもトイレもシャワールームも、明堂より20元も払いたくない。409号室は6人部屋。重荷を片して、速やかに晩飯へ。
晚饭
明堂ちかくの馄饨店が閉まってより、私の上海での食堂は山东中路に移った*1。今回の宿はこの美食街に近いことも大きなメリット。このたびは何軒か出入りしてみようとも思うが、まずは1年半ぶりのあの店へ。福州路から南へ入って、ちょうどファミマの向かいにある。回锅肉や鱼香肉丝を差しおいて大好物の宫爆鸡丁饭。辣椒と花生の甘辛さがたまらない。ここは鸡蛋汤もつく。感動して口内涙。帰りがけ、宿に隣接するファミマで冰红茶を購入。中国で飲料といったらこれしか買わないくらい愛飲している。
30度にもなると聞いて薄着ばかり持ってきたが、夜は肌寒いくらい。
深夜の交流
予定の香港便に乗りそこなって急遽上海滞在となった大阪の方。先ほど入室時に明かりの在り処を教えてくれた西安出身の男性。二人とも私より英語が堪能で、オランダ人も交えてロビーで騒がしくしていた。私も中国語と日本語で附いていけるうちは良かったが、とかくここに泊まるような中国人は外国人と出くわすや見境なしに英語を優先するので話しづらい。タバコもお酒も勧められなくなったら休息に入る。まだ日程は始まったばかりだし。
つづく
*1:2009年11月04日記事参照