南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

上海plu苏(Su)企画 2:约会的一天

日曜なので朝食は考えずに8時半いっぱいまで寝床に。待ち合わせは「地下鉄1番出口に9時」。手土産は大きくないが、万一混雑した地下鉄車内などでつぶされる場合を想定。駅から近いので、一日遊んでまた戻ってくるなら駅に待たせて取りに来てもいいし、遠方で別れる予定なら会ってすぐ断って取りに来ればいい。ということで、ロッカーに保留。9時頃出口付近で待つも空腹がひどくなる。朝飯探しに一寸巡ろうと思案しているところへ彼女は現れた。今回は一人。

朝マック

一昨年と同様に、3番出口近くのマクドナルドでオープニング。2人前の朝食セット*1を運ぶ途中バーガーのパックを落とし、またテーブルで口に運ぼうとした瞬間再び床に落ちて食えなくなった。これは不吉な予感がしたが、旅行にはいかなる不幸ももたらしていない。せいぜい乞食が執拗に金をせびってきて、彼女を不快にさせたくらいだ。昨日の地下鉄車内では笛吹き童子親子に遭ったが、偽者も多く、また一時的な収入を与えることは正しい貧者の救済法ではないので、いい加減この手の活動を諦めさせるようもっと周囲が煽っていかないと。
さておき、彼女は上司の不正な増収取引を見かねて前の会社を辞め、いまは本科卒業資格取得試験にむけて勉強しながら求職中である。毎日2時間もかけて通勤し身を削るほど忙しく働いていた環境から離れ、少し精神的に余裕ができたかな、と感じる。当人もその新鮮な感触を実感しているようだ。それでも退職前からいくつもの日系企業へ応募し面接を受けるうちに、かなり不安を覚えるらしい。自分の日本語能力や英語力、知識不足などを気にしている。でもここ3年余で培った営業の経験にもっと自信を持ったらいい。無いものに怯えるより、今あるものを活用しな。また日本の企業は未婚女性の結婚計画を非常に気にする。結婚どころか交際すらない彼女には辛い質問だ。この辺の事情もあって、彼女のやりたい営業の仕事を任せない企業もあるようだ。
同世代の中国人から見ると、中国に進出している日本の企業は仕事も収入も安定していて女子にはある程度人気が高いそうである。一方で創業の古い企業が多いせいか、経営方針は頑固な日本式で中国の手法を全く受容しないところがある。また、技術の提供や共有が乏しいことも不満であるらしい。いっぽう欧米系の企業は、能力主義の傾向が強く休暇が多くて給与も高いといい、着実に人気上昇中。尖閣問題や反日デモの影響というよりは、日本企業の体質そのものに「日本離れ」の原因があるらしい。まぁ日本企業にはかれらなりに半世紀にわたり国際市場で勝ってきた実績があり、それを否定されるような評価は日本人として不愉快であり、合弁ならともかく日本企業本体が中国でビジネスするのに日式で何が悪いとも言いたくなる。けれど、昨年9月に起きた大規模な反日運動の根本的原因について書いた「ほんねとーく」の片隅に、就業する中国人から見た日本企業への不満という項目も加筆しておきたい。そんな複雑な思いは心中で押し殺し、冷静に話を聞く。

南京路ウォーク&人民公园

いつしか11時近くなり、外に出て人民广场方面へ。昨日地下のレストラン街から消えてショックだった味千拉面は、影を潜めるどころか堂々南京路上に移転していた。

人民公园

地下鉄の乗継で幾度も通っている人民广场だが、そこにある人民公园を散策するのはこれが初めて。公園の一角に、結婚適齢期の子を持つ両親が婚約者を探す婚活コーナーがある。夥しい数のプロファイルが張り出されていて、学歴とか年収とか仔細な情報と要求が書かれている。大概1980年前後生まれで、俺よりやや年上ってことは危険ラインなワケだ。とりあえず俺は身長条件で対象外だと思った。ここへ連れてきてくれた彼女も結婚の不安を抱えていて、家族も心配してるらしい。でも理想の相手なんか聞いてみたら、白馬の王子様じゃないが結構レベルが高い。もともと仕事熱心すぎて異性を寄せ付けないオーラがあり、これが30過ぎたらもっと強まるのじゃないかと。本格的に婚活するなら敷居を下げたり、苦手だという家事も練習しないとね。他人のこと言える立場じゃないですが。まだ両親はこの婚活コーナーに来ていないようだが、30歳になっても未だ結婚できなければ自分一人でここへ来るつもりだという。

南翔(古镇・小笼包)

軽い空腹を覚えて南京路に戻り適当な食事処を思案していると、家の近くに美味しい小笼包の店があるから行こう、という。また、その付近に一昨年の七宝みたいな古镇があるとのことだ。急ぎ宿へ土産を取りに寄り、地下鉄に乗る。2号线を江苏路で11号线に乗り換えるのは嘉定のときと同じ。その途中に目的地南翔(Nanxiang)はある。因みにこの11号线、今月末には安亭から昆山を経由して苏州までつながるのだという。各駅停車の地下鉄で行く苏州ってどんな旅程なんだろうな。*2
高架駅で正面に巨大な日系SCがある南翔。公交ターミナルからバスで2,3区、慌てて飛び降りたところが古猗园前。南翔小笼包のマスコット*3がある。

南南と翔翔

ここ南翔は上海小籠包発祥の地とされ、南翔といえば小籠包といわれる有名なところなんだそうだ。知らんかったわぁ。さっそく近くの店で小笼包に舌鼓。普通の豚肉餡と蟹粉餡の小笼包、それに一杯のスープ。何年も上海を出入しているが、上海蟹を口にするのは初めて。开封名物灌汤小笼包と同様、包から溢れる熱々の汁に気をつけながら頂く。
口福のあとはノンビリ古镇へ。方向音痴な彼女が珍しく道に迷わないw。

双塔が出迎える南翔老街

町の中心核ともいえる留云禅寺は閉園間際、無料で覗かせてくれる。

关羽像と钟楼

嘉定や七宝よりずっと小さな古镇だが、環濠の内側に3,4筋の古装建築の街並みがある。

长兴楼と人民街
报济桥上から望む水路、こんなに空の狭い通りも(共和街)

入居する店舗が皆現代的なのは些か残念だけれど、雰囲気だけでも十分楽しい。太平桥のたもとには、八字桥を解説する日本語があった。概ね上手かった。
一周してきて、彼女が人民街をもう一度通りたいというので何かと思ったら、1軒の店に入り“木锤酥”という菓子を買ってきて「お土産です」という。先ほど店頭で餅つきのように原料を練っては搗き、練っては搗く様子が印象的だった。落花生や胡麻を材料とし、开封の花生糕にも似ているがもっと「おこし」のように固めてある。これがとても素朴な味で食べやすく、家族にも大好評だった。もっと空港などで広く販売してもいいと思う。
帰りはバスに乗らず道なりに歩いてSCの中を突っ切って駅へ。AEONのように吹き抜け構造の綺麗なショッピングモールだが、まだ人気は少ない。すき家が「好家」でなく「食其家」と半ば音訳されているのが意外だった。ユニクロのほか“Shimala”という衣料品店があって、これも日系だという*4
初めて水入らずで丸一日一緒に過ごした気がする。お互いたくさん話し合えたし、グルメも観光も満足させてもらった。ホントにこの時間をつくって良かったと思う。つい「このまま帰国してもいい」なんて呟いてしまい、私が苏州も楽しめるよう苏州で日本語教師をしているK先輩に連絡とろうと試みてくれる。単にこのまま別れるのが惜しくて出た甘えが面倒をかけさせた格好だが、結局QQなどを駆使しても掴まらなかった。友人とは、普段往来がなく、自分が必要なときだけ呼んでも応えてくれるとは限らない。そんな教訓を示しているようだ。「あなたは中国で出会った最好な朋友だから、また時間をつくるよ。」この言葉をお礼代わりに贈って改札を通った。
デートの満足感と別れの寂しさを紛らし明日へ切り替えて楽しむため、少し撮り鉄しながら帰る。

上海地下鉄風

第二夜の中華ミッション、烩面

烩面は西北系の飯屋へ行けば食べられるはずだ。开封の兰州拉面と同じ外観の店が、广东路の山东中路との交差点付近にあったと記憶している。実際は山东中路の中だった。切欠がてら店頭で烩面の有無を聞く。开封で慣れ親しんだトマトスープ烩面は2年ぶり。やっぱ美味ぇわ。でも、去年の开封で5元をキープし一昨年の上海嘉定でさえ8元だった値段が、15元とは物価高騰痛し。
ちなみにこの店の真向かい辺りに、Hiker近くから移転してきた*5皮厚ワンタン食堂、旺好旺特色馄饨がある。今回訪れる機会はなかったが、山东中路レパートリーの一つなので敢えて店名紹介。

つづく

*1:ハンバーガーとスクランブルエッグとコーヒー味豆浆

*2:上海の江苏路から始まる江苏省への道ってどうよ?

*3:ゆるキャラ?

*4:妹によると「しまむら」のことではないかと

*5:と思っている