ささやかな夏休みのリフレッシュ旅として独りで企画していたのを、急遽両親と3人で行くことになった。目的は、スーパー銭湯でない本物の温泉を堪能し、丸1日のんびりと過ごすこと。6月にこの勤務時間帯となってから、また夜勤の利を活かした一泊温泉旅行を近場で模索したりしたが、予算と時間に押されない候補としてこの猿投温泉をキープしていた。もしお一人様で決行しても(無料送迎バスの発着する)藤が丘駅までの地下鉄線しか鉄道要素がないので、日帰り鉄路遊び集を更新できなくてもさほど悔いはない*1。家族ミニ旅行もたまにはいい。
猿投グリーンロードなどを突っ切って、1時間ほどで到着。ツクツクボウシの鳴き声がお出迎え。お盆休みの真っただ中といえど、入泉料の高さから客入りは適度に抑えられている。「お得な食事付き入泉プラン」華コース2800円。
天然ラドン温泉。愛知県で初めて飲泉許可を受けており浴場内で飲用が可能なほか、一人10リットルまで持ち帰りできる。脱衣場と浴場の出入口付近には10Lペットボトルの手提げ袋が並んでいる。詳しい事情を知らない私は一口も飲んでいない。いつもどおりの入浴を楽しむ。猿投の泉質なのか温泉らしい匂いがなく、「竜泉寺の湯」と大して変わらないじゃないか、というのが第一印象。カルキ臭がない分、天然温泉らしい。岩づくりを基調とした天井の高い内湯は、スパガーラにも似ている。そして、事前に聞いていた通り、露天風呂は狭くて湯舟が小さい。内湯の大風呂ははじめ熱いが浸かっているうちに適温となり、長湯できる。だが、露天の涼しい空気に身体を慣らしてしまうと、この快感も浴場に籠る熱に敗け、素直に味わえなくなる。これを学んだ食後の入浴では、一度も露天風呂へは行かなかった。せっかく都会を離れ西三河の山中に来たのだから、新鮮な空気を吸いながら外湯を楽しむのが本来はいい。でも、夏場は日が高くなるにつれ直射日光が当たるし、次々続々と入浴者が上がってくるたびに湯池のスペースを配慮せねばならず、ちょっとゆっくりできない。
貸し浴衣にポケットはなく、iPhoneを携帯できず。したがって、食事や庭園散策の写真はない。まぁ電話を肌身から外すリラクゼーションも大事だ。昼食は、予てから決めておいた「自然薯の麦とろ御膳」。大汗かいた湯上りに生ビール(中)を干したため、ほろ酔いでの麦とろ飯と蕎麦はたしかに美味しかったけど、落ち着いて味わえないほど手元や調味がフワついていた。また勢いで小ジョッキも飲んでしまう。でもなんか、妹が嫁いでってしまってから、家族3人で外食したのって初めてじゃないかと思うくらい久しぶりだな。テーブルに置かれた源泉水かき氷の写真が鮮やかで美味そうだったので、デザートにする。私が選んだのは、豊田産の桃をつかった数量限定のかき氷。抹茶やきな粉と黒蜜よりやや時間をかけて運ばれてきたかき氷は、甘みを抑えたシロップに桃本来の味が映える逸品だった。かき氷のシロップが酸っぱくさえ感じられるのは初めてだ。
外出用の下駄を借りて、園内散策。200m先という鈴ヶ滝湖へは足場が悪く、諦めた。鈴ヶ滝の前で涼んでいるうちに暫しうたた寝。中国人や欧米人など外国人も往来する。施設の無料休憩所は狭く、どこも昼寝に占有されている。ホテルに併設する温浴施設なので、さきの露天風呂もそうだけどホテルよりは豪勢に造れないのが原因と思われる。
それら心象や考察はともあれ、帰りの車に乗り込む頃には昨今の煩悩や疲労もすっかり取れて快眠。そのまま夜も熟睡と相なった。