南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

周口-驻马店編4:周口淮阳(Huaiyang)太昊陵

留学中、お昼過ぎのテレビで放送されていた「本日の河南省各地の観光地の天気」の中で聴きなじんでいた、淮阳。名所太昊陵や一面の蓮が浮かぶ風光明媚な映像が印象に残る。今回日程を1日追加することで企画入りした。衛星画像によると、县城の中心部は湖に浮かんでいるらしく一層心惹かれる。本編は河や湖と関わる景点が多い。
周口-驻马店編3:周口关帝庙よりつづく)

周淮新能源公交

前夜まで頭を悩ませたアクセス方法。ここで一つの賭けに出た。周淮新能源公交の開通時の周口側発着点、华耀城まで行ってみることに。そこは周口市の北東郊外、淮阳との省道上に位置し、小さな汽车站もあり公交の往来は確実と考えられる。中心部から华耀城への市バスは幾筋もある。16路で終点华耀城(建设大道-大成路口)。果たして新能源公交は建设大道を往来し、この交差点で呼び止めている人もいる。ところが「华耀城」なる商業施設群の傍に汽车站はなく、さらに郊外へ出たところで見つけたのは貨物用ターミナル。意を決し、先の华耀城交差点で大きなスーツケースを携えた人々と一緒に新能源公交を停めて、路上から乗った。この一群には周口学院の週末帰省する学生たちが多い。なんか都市間バスの乗車方法が回を重ねるごとに無秩序になっていくのは気のせいか。
運賃は6元。さすが新能源(ハイブリッド?)、走行音が静かでトロリーバスみたいだが、加減速は荒っぽくなる。淮阳側の終着点も知らないので適当に見定める。とりあえず汽车站は通過し、西关?は降りそこねて湖岸を暫く走り、運よく太昊陵前で下車。たぶんこの先の北关で折り返しっぽい。

太昊陵

昼近いので観覧前に馄饨をすする。湖岸と景区の間の広場には民芸品の露店が立ち並んでいる。一見高級そうな品揃えだが、執拗に売ってこないので気楽に冷やかせる。
太昊陵とは、古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王の一人である、伏羲(とその妹の女娲)を祀った廟である。伏羲は八卦を画き、文字をつくったとされる。また、伏羲と女娲は大洪水で生き延び、人類の始祖を造ったとも伝わる。この話は淮阳の民芸品とも関わってくる。
拝観料は40元。チケットは葉書形式。ここまで訪れた景点すべて、下調べの料金より割安である。

午朝门
「天下第一陵」の名はCMでも聞いたような。
先天门

奇抜な様式の門がいくつも連なる。基本的に道教の色合いが濃い。古代神話の帝王といえば、前回訪れた濮阳县挥公陵もそうであったが、これほど異色ではなかったな。

统天殿
太始门
伏羲陵
陵园の東側にはなぜだか岳飛庙もある。
伝説信仰は解せないので西側はパスして、先天门前の涼しい木立で一休み。

広場の露店で目当ての土産を見つけてある。出発前から既に着目していた淮阳の民芸品「泥泥狗」である。様々な動物の形をした黒い焼き物に、極彩色の文様が施してある。先述のように、大洪水で生き延びた女娲が泥をこねて人間をつくったという伝説をもとに生まれた民芸品とされる。
参考:『人民中国』
ネット上では一匹数元から数十元まで値幅はまちまちだとあった。そこで一つ30元くらいまでなら値切らずに手に入れようと決めてきた。勿論旅もまだ半ば、あまり大きなものは買えない。サイズも決め手となる。
明らかに漢族ではなさそうな店主に値を聞けば、なんと一匹3元だという。質量を見定めて犬2匹(豚っぽい)、猫1匹(鼠っぽい)購入。紛い物かもしれないが、少なくとも本場淮阳で買ったものであり個人的には貴重な戦利品である。

泥泥狗

湖上城市

では湖上に浮かぶ淮阳县城を歩いてみよう。実は湖の大きさと西关までの距離を些か見くびっていた。神龙桥を渡りかけて地図を確認し、これは真剣に歩かないと今後の予定が危うくなることを悟った。おかげで橋上の画卦台をスルーした。

橋上より太昊陵を振り返る

街は島であることをあまり感じさせないが、入り組んだ川などが湿地帯であることを窺わせる。淮阳一中の古風な門が構える中心地で右折。西关との間にもう一つ小柄な島があり、大同街は2度橋を渡る。

ハスは枯れ気味

一面ハスの葉とはいかぬが、その片鱗を感じていただけたら幸い。
ぴっちり15時前に散策を終え、バス停で新能源公交に飛び乗る。周口市中へは7元。今度こそ発着点を突き止めてやる、と息巻いたのに、ちょうど中心汽车站付近まで達したところで車掌がいきなり乗客を選別しだした。この先の方向性が分からぬ私は、言われるままに降車。結果よければ、まぁいいや。

周口~漯河

驻马店単独企画の段階から、帰着点は漯河(Luohe)と決まっていた。交通至便な京广铁路沿線であることと、現在未踏の漯河を最低でも乗継の形で踏むためである。周口と合体編になった理由の一つには、上蔡より周口のほうが利便性の高いことも挙げられる。
初めて入る中心汽车站は、週末帰省する学生を中心に物凄く混雑していた。どの窓口も何分待たされるかしれない長蛇の列に圧倒されかけたが、ほかに逃げ道もなく並ぶ。久しぶりに正規の乗車券を購入した。16:30発、運賃22元。さぁ、これから徐々に普通の外国人になるぞ。
乗車場内で鹿邑行きのバスを見かけ、やっと2012年に訪れた同县が同じ地级市であることを実感した。周口市は広いので、鹿邑と淮阳が隣接しているのも全然ピンとこない。
バスは夕暮れの高速道路をひた走り、1時間半ほどで漯河駅前のバスターミナルへ到着。

モダン建築の人民路

本編完結へ

漯河から帰途あるいは次の旅程への道筋をつけた時点で、本編のフィニッシュだと考えている。
西方系食堂で炒拉条を食べてから*1、明朝郑州へ向かう列車の切符を買う。中国の大動脈京广铁路といえども、漯河で午前の早い時間に乗れる上り列車は意外にも僅か1本しかない。この点は計画時から非常に悩まされた。郑州行きにこだわるのは7日の武汉へ帰る列車の切符確保もあるため、高铁の漯河西はあり得ないが、長途バスなら郑州火车站前の中心站まで53元で所要約3時間という手段は考慮していた。しかし結果はといえば、「没有座位」ながら意中の列車を射止めてしまう。〔列車情報:K600次、漯河09:08発-郑州11:36着、无座21.5元〕

心晴れやかに仰ぐ駅舎

この3日間、いま駅前広場に集う農民工のような人々の郷里を渡り歩いてきたんだな。一人の日本人として、彼らと暫し寝食を共にし同じ空気を吸い同じ空間に居るんだということが、とても不思議で貴重だと思う。そんな感慨に浸りながら、呆然と人民たちを眺めて時間を潰した。それから、広場を囲む超市や便利店を須らく回り、時には飲料などに浪費しながらチリ紙と髭剃りを買い求めた。ほどよく投宿タイムとなる。
出站口付近で私を捉まえた婆は、小さな旅社の玄関先の一室へ通した。パソコン前で寛ぐ家族を追い払っての入室である。登記も外国人対応も思ったほど激しい動揺はなく、さぁゆっくり足を休めて寝られる、と安堵もつかの間だった。私を日本人と知るや、「女の子紹介してあげる」と執拗に迫ってきたのである。登記の際は軽い冗談かと思いきや、数分後にはマジで女の子を連れてきた。日本人好みだと考えたのか、地元の田舎ぽい肌ではなく、濃いめに化粧した明らかに水商売と分かるギャルで、正直逆に萎えた。婆は「全然騙しじゃない。150元でどう」とか巧みに言い寄ってくるし、女の子も艶めかしく股間とか触ってくる。会話とかお触りだけでも良いし、たまには遊んでみるかという気がないでもなかった。でも脚は完全に疲れ切っているし落ち着いて寝たいだけなので、頑固にその旨で拒絶してしまう。旅の半ばじゃなくて終盤だったら、違う展開もアリだろうな。南阳のときを思い出し、男心を擽られて面白かった。

周口-驻马店編 完(「开封帰郷旅行2017」は8日までつづきます)

(map:周口淮阳太昊陵)

*1:そろそろコメが食べたいと思いつつ