雨天は出発前から想定されたが、敢えて予定を大きく修正せず決行。午前中はほとんど降られず、午後も東へ移動のため愛媛県内はほぼ逃げ切れたw
愛媛 その2
松山
道後温泉つづき
朝食は7時半からなので、6時過ぎに起床し椿の湯へ朝風呂に出る。折り畳み傘を持って階下に降りたが、フロントでキーとともに預けビニール傘を借りた。旅の道中強く感じたことだが、四国の車は総じて運転が荒い。運転が荒く交通事故死の多いことで全国的に知られる愛知や北海道を嘲えないくらい、ルールやマナーのない走行が見受けられる。一方警察側も積極的に取り締まる姿が各県で見られた。
本館より銭湯の色合いが強いと思われた椿の湯は、隣に「飛鳥之温泉」が建ったことで同時改築したのか、意外と真新しかった。本館より10円安い400円で得した気になれたかと思いきや、コインロッカーでしっかり回収されガッカリ。本館の古風な浴槽を模したツルツルピカピカの浴場。じんとくる熱さに身体も目覚める。
本旅唯一の宿提供の朝食。海苔、卵、焼き魚などのシンプルな和朝食。会場のレストランには5組ほどの膳が用意され、静かで落ち着いたムードが漂う。施設の性格から退職者などが多いと思ったけど、意外に客層は普通だったし素泊まりよりはきちんと朝食を付ける方が多いようだ。
8時過ぎにチェックアウト。晴れていたら道後公園(湯築城跡)を散策しようとも考えていたが、天候上割愛。ハイカラ通りをゆっくり覗いて回る。今治の「バリィさん」よりも「みきゃん」ちゃんグッズのが圧倒的に多かった。とくに「みきゃん」ちゃんTシャツは寝巻用に買いたくもなった。また、ポンジュースが愛媛原産であることも初めて知った。さすがミカンの国。
坊っちゃん列車
2月に道後温泉を訪れた両親は乗らなかったというが、私はたとえ一区間でも都合をつけて乗ろうと思っていた。子供連れに交じって始発の切符(800円)を買う。
引き込み線より方向転換して入場するところから必見。
www.youtube.com
そもそも坊っちゃん列車とは、伊予鉄道が軽便鉄道時代に運行していた機関車がけん引する列車のことで、夏目漱石の小説『坊っちゃん』に「マッチ箱のような列車」と記述があることが愛称の由来である。観光の目玉として幾度も復元構想が持ち上がり、2001年に運行開始。現在は沿道の煙害などを考慮し、ディーゼル動力で運行している。路線は古町~道後温泉(JR松山駅前経由)と松山市駅前~道後温泉の2系統。
さて整理券順に客車へ案内され、二両目へ乗り込む。意外にも即時満席とはならず、車掌らが呼び込みをして車内で切符や割引券などを販売する。木製のトロッコのような客車で、一両目と二両目は移動できず走行中はデッキに出てもいけない。それでも汽笛を鳴らしながら市内をゆっくり走り、沿道から注目を浴びるのは存外気持ちいい。カーブを曲がる際、一両目の屋根にパンタグラフが載っているのを目撃。本物の汽車が引っ張っていると思い込んでいる子供たちの夢を消すよな。まぁ実際はポイント切替専用で、動力には一切関与しないらしい。当初は松山城最寄りの大街道で降車するつもりだったが、終点の松山市駅前駅構内で機関車の方向転換が見られるということで乗り続ける。
www.youtube.com
渡り線の中央で車体下部からジャッキを出して持ち上げ、鉄道員が回転させる。このあと機関車は自走するが、客車二両は人力で転がして折り返す。せめて片方向くらい汽車に牽引させられないものか、と鉄道員を気遣わずにいられない。この列車を見送った後、環状線内回りで大街道方面へ戻る。ちなみに松山市駅近くにあるという「坊っちゃん列車ミュージアム」を乗継の合間に訪れようと思うも、見つからず。
松山城
一般に松山城(および坂の上の雲ミュージアム)へは大街道が最寄り駅とされている。しかしそれは観光客を商店街へ誘導するためであって、アプリの地図をひらくと東雲口(ロープウェイ乗り場)に最も近い電停は上一万であることが分かる。(帰りはさらに道筋が分かりやすい警察署前電停を利用。)道標などは一切ないが、六角堂を目印に曲がると意外と迷わない。東雲神社脇からリフト沿いに急坂を登る。木立が雨を遮ってくれるのは有難いものの、濡れた斜面は滑りそうで怖い。20分ほどと聞いていたが、15分足らずで登りきる。団体ツアーと前後して解説を聴きつつ、高く精巧な石垣や筒井門などを見学。本丸広場より望む天守は木々に遮られてあまり絵にならない。大天守をふくむ本壇は複雑な門で囲まれ、堅固な造りだ。
松山城は、「賤ケ岳の七本槍」の一人である加藤嘉明により築城が始められた。大天守は日本に現存する12天守の一つで、1933年に焼失し復元された本壇の建築物とともに重要文化財に指定されている。大勢の見学者で混みあい梯子や通路は狭いので、あまり歴史を追わずにざっくり観覧。天候のわりに天守閣からの眺望は良かった。高知と同様、松山の高所からも海は望めないことを知る。
本丸広場の茶屋で、いよかんソフトクリームを買う。高知のアイスクリンよりは特産活用らしくて宜しい。果肉のジュレがたっぷりのっていて美味い。
伊予鉄道
坊っちゃん列車も間近で見ると猛スピード。そもそも機関車列車がプラットホームを通過するのも時代錯誤だし、ましてや併用軌道ってのが異次元。
そうして呑気に電車ウォッチを愉しむうちに、次また次も道後温泉行きばかりなのに気づく。一応時刻表どおりではあるのだが、しだいに不安になってくる。せっかく住宅街を縫って走る専用軌道区間を優雅に愉しむつもりだったのに、分刻みでJR松山駅前までの時間を先読みしながらハラハラする格好に。それでも、病院前とか停留所付近の小さな商店街だとか、生活密着型の交通機関の側面が垣間見れて良かった。城南の中心部区間とは対照的な、単線で観光っ気に乏しい裏の素顔だ。
宇和島のリベンジというか、さすがに松山なら駅弁くらいあるだろうと期待。しかし短時間で探し出すことはできず、またもコンビニ弁当に甘んじる。今日は特急しおかぜに乗りこんでの昼食。バースデイきっぷ使用3日目の午後にして初めて、電車に乗る。もはやJR四国に電化路線はないのか、とさえ思ったものだ。特急電車は気動車と揺られ方が異なるので気をつけたい。
西条(鉄道歴史パーク)
プランの起草段階では、空腹のまま今治に降車し「バリィさん」のモチーフとなった名物焼き鳥を食べるつもりだった。ところが、本来焼き鳥は酒の友であり、夕刻以降にしか提供しない店ばかりだということが判明。また、B級グルメの焼豚玉子飯にも惹かれたが、より執着の強い焼き鳥か今治通過かで選択を迫りつつ、一時間ほどで楽しめる予讃線沿線の途中下車駅を探していた。すると、石鎚山登山口でもある駅前に鉄道博物館、市内随所に「うちぬき」と呼ばれる地下水の自噴井がある伊予西条を発見。「バリィさん」断念に踏ん切りがついた。
伊予西条に降り立ってみて、ちょっと苦になる弱い雨と小一時間の制約から「うちぬき」巡りは中止(駅ホームにもあるのは知らなかった)。駅前東側に位置する、鉄道歴史パークin Saijo。まずは四国鉄道文化館(北館)から。入館料は北館・南館共通で300円。初代0系新幹線と、DF50形ディーゼル機関車が迫力満点で屋内展示されている。DF50形は予讃線から引き込み線で収められており、日本で唯一走行可能である。
むかし名古屋市科学館にも展示されていた0系新幹線の運転台が懐かしくて、我も我もと特等席を奪い合う子供たちの合間を縫って拝見させてもらう。またリクライニングでない客席も珍重である。ほか、特急のヘッドマークなど鉄道パーツも展示されている。それにしても板張りの床から実物の鉄道車両を見上げ、じかに触れられるのは本当に強烈で圧巻。
愛媛県出身で国鉄総裁や西条市長などを務めた、十河信二記念館。「新幹線の父」と呼ばれ、東海道新幹線建設の実現に尽力。大阪から遊びにきた孫に「おじいちゃんが大阪まで2時間くらいで行ける電車をつくってやるからな」と言ったエピソードが、新幹線への並々ならぬ情熱を感じさせる。そして、四国新幹線の実現は彼の遺志を継ぐことになろう。
跨線橋を渡って、四国鉄道文化館(南館)。
四国の名勝古跡を散りばめた大型鉄道ジオラマを、ナレーションを聴きながら小旅行。アンパンマン列車が走り回り、子供たちは大はしゃぎ。
そして、DE10形ディーゼル機関車がズラリと鎮座している。とくに急行列車のシートは居心地よく、窓下に設置された小テーブルにはセンヌキがついていることを発見。ささやかな知恵に心中拍手。好きな鉄道展示で昼飯以上にお腹いっぱいになる1時間であった。
香川
東へ進むにつれ、海岸線を望む機会が増える。とくに県境近い箕浦の辺りでは、手を伸ばせば海面に届きそうなほどギリギリを行く。古銭「寛永通宝」の砂絵がある観音寺も、駅との距離により却下されたスポットの一つ。土讃線と合流する多度津にて、快速サンポートに乗り換え。都市圏の快速電車というよりは地方鉄道の急行と形容するほうが相応しく、ガタゴトとかなり気張って走る。この頃はもう土砂降りな雨。
高松
讃岐の県都、高松にて四県制覇。
ここは駅ビル撮るだけで、すぐに普通列車へ乗り継ぐ。高徳線はふたたび非電化路線。
栗林公園
特別名勝に指定され、日本三名園*1よりも木や石に風雅な趣があるとされる庭園。修学旅行では全く対象外だった高松の名所を見ておきたくて、開園時間が日没までということで、予讃線行程をやりくりして16時半に滑り込めるようにしたのだ。しばし小康状態だった雨も栗林公園北口駅から入園したとたん、本降りになった。湖畔のあずまやもそう長くは凌げないし、商工奨励館や民芸館も17時までで閉めてしまう。終始傘をさしたまま遊園することに。
一番の絶景は、偃月橋や芙蓉峰から望む湖。背後の紫雲山に抱かれた感じがいい。
園内で次の行程を考える。じつは「バリィさん」の埋め合わせじゃないが、高松の骨付き鶏というのをちょっと注目していた。夕飯はまず軽めの讃岐うどんを食べてから、骨付き鶏で一杯飲もうと目論む。東門と琴電栗林公園駅の間を検索すると、「上原屋本店」で讃岐うどん、「骨付鶏・あづま」でテイクアウトし高松駅近くで休憩しながら飲食というコースが生まれた。ところが、さっそく「上原屋本店」へ赴くと営業している気配がない。うどんの町だから一軒にこだわることもないが、雨のなか歩かされ空腹は切迫している。さらに骨付き鶏のほうも開店前で肩透かし食った。もはや移動するエネルギーもなくて、コンビニでパンを齧るひとときが空しかった。
琴電
さすがに撮り鉄する気力はないけど、琴平電鉄にはちゃんと乗る。190円の切符を買い、通勤客や学生で混雑するホームに立つ。わずかに3駅分だけど、ターミナル瓦町も通ったし地方鉄道のムードを味わえてよかった。
晴れていたら夜景を楽しむ予定だった高松城や高松港の脇を通る。公園は有料なのでまぁ外せてよかった。
さぬきうどん
高松駅前へ戻ってきて、すぐに目についためりけんやへ飛び込む。釜玉系は断られて残念だったものの、肉ぶっかけうどん冷(大)を頼む。これが普段食べている丸亀製麺のうどんと全く同じだったので、少し物悲しかった。本場だからもっと感激するかと思ったのに。
うどんの量と肉量が相まって物凄い腹ふくれた。思えば本旅、昼は夜須のラーメンを除き簡素な弁当、その対照で夜はボリューム満点の名物料理ばかり食べているなと。
食後は無理に遊び歩かず、キヨスク高松銘品館のお土産を冷やかして過ごす。香川のみならず四国全域の物産を取り扱っている。めりけんやの贈答用讃岐うどんが並んでいて、店選びは間違ってなかったことに安堵。ちなみに高松の歓楽街は、片原町方面にアーケード街があるらしい。天候と余力があれば十分行けたし、そのための約4時間滞在でもあった。
一周を遂げて
一周の締めくくりとなる特急「うずしお」は、唯一自由席が満席並みの乗車率。帰省や行楽の家族連れなどで埋まっていた。この列車、高松始発ではなく、本州岡山から渡ってきている。当然車窓は真っ暗なので転寝していく。鳴門線が分岐する池谷で気がついた。ここから短距離を鈍行に乗る案もあった。
三日ぶりに徳島駅へ帰ってきた! 四国一周完遂とちょっと懐かしい徳島帰還に、ヨーグリーナで祝杯。この21時過ぎ着でもまだ、徳島線や牟岐線の乗継列車があるのは驚き。また、駅地下には真新しい飲み屋街があり大いに賑わう。
「バースデイきっぷ」で完結し0時過ぎの夜行バスに乗る原案を、徳島の配分のため1日延長した。そのため、今晩の宿泊費と明日の帰路費用を合わせて高速バス利用以下に抑えたい計算があった。そこで選ばれたのが、リラクゼーション&スパNEXELというちょっと特殊な宿である。男性専用の半個室タイプを9時間滞在で2500円という格安ホテル。22時inで翌朝7時に出れば十分休まると考えた。また大浴場が入り放題なのも魅力。チェックインしてみれば、何のことはない、PCのないマンガ喫茶である。中からカギがかけられ、ソファは既にベッド用に敷かれ、Wi-Fiは使い放題。よくいうカプセルホテルより快適かもしれないぞ。貴重品は部屋置きできないが、ロッカーで管理できる。またタオルやバスローブも提供される。ただし、室内は飲食禁止。
スパガーラみたいな開放感ある浴場で汗を流し、空調の良い部屋に傘とマイタオルを干して就寝。隣ビルのカラオケが耳障りなのと、全体照明が淡いくせに気障り。目覚ましセットは控え体内時計に頼る。
つづく