南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

あぶり出し

ここ2~3年、中国新疆のウイグル族に対する漢族同化政策が強化されているらしい。なんでも、再教育キャンプ(再教育营)という名の強制収容所自治区各地に造り、ウイグル族を片っ端から収容して民族の風習を捨てさせたりイスラム教の改宗を迫ったりしているそうだ。収容者数は100万人以上とも数百万人ともいわれ、国際社会からも人権問題として認識されつつある。
私の中国在住時からウイグル族は中国全土で特異な目で見られていた。長距離列車に乗るウイグル族の出稼ぎ労働者は、常に軽犯罪予備軍として乗務員から他の乗客よりも厳しくチェックされていた。風貌だけでなく、外国人のような片言っぽい中国語を話すことから、一目で民族がバレる。大学の先生ですら、「ウイグル族の多くは貧しく、テロリストや独立運動とも関係が強いので危険である」と、同じイスラム教徒の回族チベット族に比較しても尚差別的な見方を我々外国人の前で話したことがある。
たしかに中央アジアイスラム圏に接する新疆は、東トルキスタンイスラム運動という独立派組織もあり、またタリバンなど過激組織が暗躍する紛争地域アフガニスタンが近いこともあって支配者としては過敏にならざるをえない。実際2014年にはウルムチ駅で爆発テロが発生し、この事件がテロ対策の契機となって再教育キャンプの設置に繋がったともいわれる。かつて2009年の暴動を機に話題となった「世界ウイグル会議」など、ウイグル人団体への弾圧は概ね落ち着いているかに見える。しかしゲリラ的なテロ攻撃までを常に監視し続けることは難しい。そこで同化政策を推進して中国人への帰属を迫り、危険分子をあぶり出そうというのが再教育キャンプの狙いと思われる。
あぶり出しといえば、

中国当局は16年、ウイグル人に対して従来厳格だったパスポート発券要件を緩和。多くのウイグル人が新疆から海外旅行などに出掛けたが、17年に入ると一転、海外に行ったり、海外に家族・親族がいたりするウイグル人が一斉に強制収容所に連れて行かれた。海外の「テロ勢力」に関係していると主張し、不当拘束の口実にしている可能性がある。

ウイグル収容所で多数の死者か=「文化消し、中国人に」と絶望感(時事通信) - Yahoo!ニュース
これ、完全に国外のテロ関係者と接触させる(接触したと口実を与えさせる)卑劣なあぶり出し戦法だろ。イスラム運動だけでなく、欧米の人権団体等との接触も危険分子の認定につながる。手を汚して帰ってきた者は家族ごと収容所行きだ。
かつて旅行先の西安で、中国人学生と民族政策について論じあったことがある。多民族国家を標榜しながらウイグルチベットに対する人権蹂躙の民族浄化はさすがに正しくないことを指摘すると、「中国の歴史は、漢族と辺境民族による征服と王朝建国の歴史だ。今は漢族が支配者なのだから他の少数派が再び盛り返して征服し返すのを防ぐために、ある程度同化させるのはやむをえないことだ。中国には中国のやり方がある」というような反論を得た。国際常識に囚われない中国独自の国家運営は尊重したいし、この歴史を踏まえた見解も一理あると深く印象に残る。が、現在進行中の同化政策は以前よりも些か度を過ぎているように思われるし、テロと独立運動抑制を口実としたウイグル族殲滅ではないことを強く祈りたい。願わくば、何千年ともいわれる中国史の中で版図を塗り重ねるように征服し合ってきた同志として、今現在を互いに尊重し合えるような多民族社会であってほしい。すでに人口趨勢で圧倒的多数なのだから他面において寛大な心を漢族はもつべきである。