南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

信濃路の旅 4:千国街道

信濃路の旅 3:上諏訪・大町よりつづく)
明け方にひと雨降り、湿った空気に包まれる簗場の朝。ちょっと肌寒くなり窓を閉める。

f:id:Nanjai:20200812062212j:plainf:id:Nanjai:20200812062528j:plain
納豆付きが嬉しい朝ごはんを、6時半から美味しく頂く。一人とはいえ接触に気を遣うこの時世、旅程のほかにあまり会話が弾むことはなかった女将さんだけど、随分もてなしを尽くしていただいた。上諏訪でリピートできなかった民宿すわ湖に匹敵する、美味しく満足した2食。感謝。
www.mjnet.ne.jp
本旅最終イベントは、昨日ちょうじやで学んだ塩の道を一部歩く。初日静岡で予定外の距離を歩いたのが原因で足の裏にマメをつくっており、ここまで庇いながら不自然な歩行を余儀なくされている。多少不安はあるものの、最終日だし余力を尽くしてもいい。ちなみに塩の道は大糸線に沿って南北に往来しており、民宿の近くでもコースに入れる。わざわざ小谷村まで行くのは大糸線JR東日本管内乗りつぶしのためと、当初の日本海回り計画段階で既に途中下車スポットになっていたから。
今日の18きっぷ使用開始は、無人駅(簗場)から乗り無人駅(千国)で降車のため到着時に運転士より日付印をもらう。念のため乗車時に整理券はとっておく。白馬から先は姫川と絡み合うように谷筋を走ってゆく。08:15、千国。

塩の道(千国越えコース)ハイキング

f:id:Nanjai:20200812083827j:plain
塩の道 千国街道

長野県小谷村観光公式サイト|雪と緑と温泉のふるさと、信州おたり|おたりを歩く&登る|塩の道:千国越えコース
このコースをベースに検討。ただ歩くだけじゃなくて史料館などの見学も選んだ所以。難所「親坂」をふくむ厳しいコースらしく、小谷村営バスを利用して栂池高原からの下りだけとしたり、千国から南小谷までJR移動するなどの軽量化を試みるも、結局は自らの健脚を信じ千国から親坂往復ののち下る勢いで南小谷まで歩く道程に。ラスト小谷村郷土館に隣接するおたり名産館で評判のざるそば頂くのを目標に、約3時間での完歩を目指す。
千国駅から国道148号をくぐり、街道筋に向かって谷を離れ登っていく。まだ雲をかぶる山々。

f:id:Nanjai:20200812081610j:plainf:id:Nanjai:20200812083143j:plain
前掲の銅板レリーフ番所跡を過ぎると本格的な急登へ。石仏群に目をやりながらつづら折りや滑り落ちそうな斜面の親坂を息切らして登ること20分。これは歩荷(ボッカ)(荷物を背負って運ぶ人)だけじゃなく、荷を積んだ牛馬もしんどかったろうな。鬱蒼と木々に覆われ暑くないことだけが救い。ただ、牛を引くためか道幅は広く石畳で舗装された箇所も。
牛方(牛を使い荷を運ぶ人)のための牛方宿千国街道で唯一現存する。

f:id:Nanjai:20200812092021j:plain
牛方宿(母屋)

親坂登り切って一呼吸置くと、ちょうど開館時刻。さっき通り過ぎてきた番所跡、郷土館との3館共通券500円で見学。牛方が牛の様子を見ながら寝泊まりできる構造になっている。土蔵のギャラリーで昔の小谷の暮らしを垣間見る。親坂の折り返しは足場悪く登り以上に膝とか酷使するかに思われたのに、まるでストンと呆気なく下りられてしまう。
あらためて、千国番所千国の庄史料館

f:id:Nanjai:20200812100258j:plainf:id:Nanjai:20200812100121j:plainf:id:Nanjai:20200812100223j:plain
千国番所

千国番所は松本藩出先の関所。300年近くにわたり、塩や海産物などの運上銭の徴収や人改めを行った。親坂以上に険しい表情の役人塑像が構えている。奥は千国の集落にあった古民家を移築し、当時の暮らしぶりを再現している。小谷のジオラマでは、千国街道のおもに越後側で時代により新旧幾筋も分かれたルートを鳥瞰できる。
ほか、庭に牛方道中の一行が彫像再現されている。まるで命宿るかのように生き生きしている。
給水ののち、未舗装の街道へ入って南小谷に向かう。その初っ端から諏訪神社と源長寺あたりで道筋を見失い戸惑う。下調べどおり概ね下り坂のため駆け足気味に進めるが、細かいアップダウンがある。また随所で二三軒の集落を挟み山道が途切れるところでは、道標に注意して散策道を見極めないといけない。道幅の広めな親坂とちがってごく普通の自然歩道であり、狭く足場の悪い箇所もある。

f:id:Nanjai:20200812105444j:plainf:id:Nanjai:20200812105907j:plain
鍾馗様と付近の集落

歩いているうちに時々日差しも浴びるようになる。いい汗をかいて、予定通り11時過ぎに小谷村中心部?へ下りてきた。昼食前に小谷村郷土館を覗いておく。牛方宿と千国の庄史料館で実際の伝統建築に設えられた古道具を見てきて、改めてガラスケースに収められたそれらを眺めることになる。いろり端に座るおばあちゃん(人形)が語る昔の暮らしぶりがふいに聞こえてくる。他の2館と比べ、千国街道関係でなく小谷の生活習俗に特化した展示が少しホッとする。
そうして締めくくりのざるそばを啜ろうとおたり名産館へ入るも、ちょうど座敷で大人数の家族連れがめいめい細かな注文をし、おばちゃんがなんとか聞き終えたところ。ほかにテーブルが一つ料理を待っていたが、私には「いらっしゃいませ」の一言もない。暫し座るが全く応対がなく、随分と手際悪そうだと見切り退出。帰りの電車に間に合わないのが一番怖い。幸い南小谷駅脇の売店に稲荷ずしのパックがあったのでおにぎり1個とともに姫川眺めて昼飯。

f:id:Nanjai:20200812115514j:plain
小谷の姫川

信州を一気に縦断して帰還

f:id:Nanjai:20200812115746j:plainf:id:Nanjai:20200812115800j:plain
南小谷駅ホームを挟んで並ぶ北行南行

惜しくもJR西日本区間は乗れなかったので、せめて並んだ姿を撮っとこうと。因みに以北は非電化。さあこれから信州を南北に突っ切るように、一気に帰ることに*1。ガラ空きだったボックス席は松本へ着くころには満席。JRと共通のホームに停まるアルピコ交通*2新島々行き電車は違和感あり。乗継に30分近い余裕のある松本でお土産を買い、ふと目に留まったアイスクリームをおやつに。

f:id:Nanjai:20200812141550j:plainf:id:Nanjai:20200812141654j:plain
さるなしアイス

BABY KIWIとあるが、たしかにキウイのように淡い酸味が感じられる。木曽路区間も窓際席に埋まってしまうと適度に転寝。お気に入りの流星観測基地「恋路峠」最寄りの野尻や十二兼へ至ると、まだ余力あるなら今晩観ていきたくもなる。つごう乗換わずか2回、南小谷からきっちり6時間で大曽根。大旅には珍しく、まだ陽も明るいうちの帰還。湯の城で旅の汗を流し帰宅。
コロナ禍のさなかに大胆な旅行は企図しづらかったけど、わりと身近ながら未訪の地域も多かった信州を新たに埋めることができて大満足。これまでの一人旅でやり残したこと、再訪したかった場所なども同時に実行できて有意義な18きっぷ旅であった。ただ、足のほうは酷使が祟ってマメが転移するなど半月ほど痛みに悩まされた。

*1:といっても縦断なら飯田線を使うべきだが不通区間があり、中央線で代用

*2:旧・松本電鉄