南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

大和路の旅 2:生駒・馬見古墳群

大和路の旅 1:大和郡山・天理よりつづく)
寝つけぬ夜のせいか6時過ぎに目覚めず、平日アラームの06:45に跳ね起きて朝飯食う時間がないじゃないか、とやむなく宝山寺参拝時間を少々削って15分ほど捻出した。出発時にお声かけ頂いた宿主さんから、「生駒聖天は水商売関係の方がよく参拝に行く」と教わる。ちょっと特殊なお寺だとは感づいていたけれども、貴重な情報を頂戴する。ホントに寝るだけであったが、一夜の宿を有難く思う。今日が仕事始めの方々も多く、近鉄電車は概ね通勤客で埋まる。昨日二度も通過した筒井をはじめ、西大寺まで各駅に停車。さらに快急など優等種別が豊富な奈良線さえも、生駒ケーブル接続に円滑な普通電車で行く。3日間計画で泊まる予定だった菖蒲池駅は、傾斜の下にホームがあって駅前風景がまったく見えない。北から合流してくるけいはんな線には今回は乗らない。

生駒

近鉄沿線で現在最大の未知エリア、生駒。鋼索線生駒ケーブルと、山麓を走る生駒線それぞれからアプローチしてみる。

生駒ケーブル宝山寺

賑やかな生駒駅と連絡しているのに、生駒山上遊園地が休園ということでまったくしんとしている鳥居前駅。麓側の宝山寺線は通勤路線でもあるというが、もはや廃線間際じゃないかという人けのなさ。

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生駒ケーブル鳥居前駅

空気に怖気ぬように駅員へフリーパスを提示してミケ号に乗車。人生でも滅多に乗らないケーブルカー、階段型の車内に座席は下方向へ固定で上りはバックすることになる。走りはじめは踏切もあって緩やかだが、留置線のある区間*1を過ぎると勾配がきつくなる。まるでエスカレーターからエレベーターに変わったような急上昇を味わう。みるみるうちに生駒ターミナルが小さくなり、後方の景色が開けてくる。乗客は10人足らずだから、この眺望をほぼ独占している気分になる。
山上線との接続駅は、薄暗い洞窟みたいな雰囲気の駅だ。一歩外に出るとさっきの絶景を望める。

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生駒ケーブル宝山寺駅前にて

生駒聖天

土産物店や宿屋こそ並んではいるが、山上の宗教都市のような異様な空気を感じる門前町。天理よりもずっと神域に踏み入ったような錯覚がある。

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寶山寺参道

真言律宗大本山。本尊は不動明王鎮守神として大聖歓喜天(聖天)を聖天堂(天堂)に祀っている。
寳山寺公式ホームページ
崖にはりつくような境内。本堂に礼拝する間も背後の崖に穿たれた佛洞が気になって仕方ない。初詣や観光らしき参拝者は少なく、信仰熱心な方々が目立つ。

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寶山寺境内

奥の院へ向かって徐々に登ってゆき、観音堂の裏手でようやく弥勒菩薩を遥拝することができる。

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弥勒菩薩

多宝塔を拝んだ後、地図アプリを頼りに梅屋敷駅へ。山林の中で方向を失いかけながら進むと、木々の陰から不意に架線が見え安堵。

生駒ケーブル山上線

生駒聖天へは宝山寺駅よりも、この梅屋敷のほうが最寄りとされている。ケーブル線の途中駅乗車も面白い。駅前の簡素な踏切を渡ると、線路構造がよくわかる。

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生駒ケーブル梅屋敷駅

電車が宝山寺を発するとレールの間のワイヤーが激しく動き出す。たとえ電車が接近してなくても、この状態で踏切渡るのは不慣れだと足元が怖いだろうな。せっかくなので入場シーンを撮影してみた。
www.youtube.com
宝山寺からのトンネルを出て緩いカーブを曲がり姿をあらわす。この車両はバースデーケーキを模したスイートと呼ばれ、この先もう一つの途中駅霞ヶ丘との間でドレミと交換する際それぞれのテーマ音楽が流れる。当便は山上線の始発だが、遊園地休園にも関わらず満員なみの乗車率である。もちろん家族連れなどではないけれど、宝山寺線の閑散さを思えば異様と言わざるを得ない。

生駒山

遊園地入口が生駒山上駅に直結していると調べてきたので、休園中なら駅前から身動きとれないんじゃないかと危惧するも、個々のアトラクションが休止しているだけでゲートは開放されていた。乗客の多くはそのゲートを進み各アトラクションへ散っていったから、メンテナンススタッフか年初のミーティングでもあるのだろう。静まり返った園内を、生駒山三角点を探して歩き回る。

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現存最古の飛行塔

1929年開園当初からある遊具で、貴重な産業遺産として必見。戦時中は監視塔としても用いられたという。アームの下は展望台になっており、塔内エレベーターで上ることができた。
三角点は諦め、こんどは見晴らしのいい場所を求め始める。東側はなだらかに開けており、遮るものはないが定点のビューポイントもない。立入禁止区域でない場所をうまく入り込んでいくうちに、レストランのテラスに出た。ここは大阪平野を一望できる絶景スポットだった!

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大阪都市圏を一望

誰にも邪魔されず思う存分眺めることができる。ところで、生駒山地大阪市街の間はまたも近鉄沿線未知エリアの一つで、俯瞰していてもサッパリ地理をつかめてないのが現実。信貴山とか布施の辺りでまた企画組まないとなぁ。

近鉄生駒線

生駒山地と、東側に平行する矢田丘陵との谷あいを走る路線。ケーブルカーからは矢田丘陵に遮られない奈良盆地を望めたが、生駒線では平野部と隔絶された地域を行く。本数の多い奈良線はともかく、鋼索線とはダイヤ接続があまりよくない。生駒駅で繋がってはいるが、あとで乗る田原本線とともに孤立線扱いなのか。
先ほど登った頂付近を見上げるように車窓を愉しんでゆく。当初計画では奈良盆地をぐるぐる回るため生駒線は計2回乗るつもりだった。ただ乗りつぶすだけじゃつまらないので、ちゃんと途中下車を考えてある。

往馬大社

生駒と同じ「いこま」と読む。生駒山の神、伊古麻都比古などを祀る。生駒から二つ目の一分駅下車、徒歩10分程度。山頂からはちょうど真東にあたり、回り込んできたものの未だ全然離れていない。

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往馬大社

初詣でほどよく賑わう境内にて、厳かにご挨拶し生駒へ別れを告げる。
少し離れて行基墓もあるらしく、いつか訪れたい。

一分以降の駅名には山がらみが目立つ。また奈良の地名で聞き馴染みのある平群(へぐり)というのはこの沿線にあたる。生駒山地の南端に位置する信貴山は、生駒線にも信貴山下駅があり、山の東西両裾にケーブル線があったことを窺わせる。しかしまぁ、全体に谷あいということで、昼間ながら薄暗いところが多かったな。
王寺駅前の吉野家でカレーを食い、新王寺田原本線に乗り継ぐ。発車直後、JR線を越える手前の眼下にSLがチラリと見える。谷あいでこそないが、田原本線も丘陵地帯を縫うような路線だ。池部駅下車。奈良盆地一巡完結のため、今回は完乗できない。

馬見古墳群

昨季の古市古墳群につづき、今年もやります 古墳巡り。前回に限らず、年末年始旅は古墳巡りが恒例となっているらしい。
元旦ドニチエコ徒然行 - 南蛇井総本気(2018年)東谷山古墳群
大阪ぐるめぐりの旅 2:大仙古墳群、阪堺電軌、新世界・通天閣、生國魂神社 - 南蛇井総本気(2005年)百舌鳥古墳群
吉備路の旅 2:倉敷・吉備史跡群・復路 - 南蛇井総本気(2004年)岡山・三輪山古墳群
主だったので思いつくのはこれぐらい。ほか、伊勢斎宮三河吉良、岐阜本巣などでも古墳(群)を訪ねている。
さいしょ馬見塚古墳群と読み違えていたのは、地元愛知に馬見塚(まみづか)遺跡というのがあるからだ。ここの馬見は「うまみ」と読み、塚は付かない。ところが現在の丘陵地帯に造成されたニュータウンには、真美ケ丘という地名がつけられており古墳群も「まみ」と読みがちで紛らわしい。馬見古墳群は、大型前方後円墳の分布により、大きく北群・中群・南群の3つに分かれており、今回訪れるのは中群にあたる。
北葛城 馬見丘陵の古墳群を散策する|歩く・なら~歩く楽しさが見つかる!奈良県のウォーキングポータルサイト!!~
こちらに掲載されている散策マップのショートコースを辿り、池部から大阪線五位堂駅まで約10㎞を踏破する。昨日の郡山市内で足をやや痛めているので、古墳探しみたいな無茶はせず従順になぞる。コース前半は概ね奈良県馬見丘陵公園内を通っており、道に迷ったり車などに邪魔されたりせず安心して歩くことができる。総合スポーツ公園内の緑道には年表や出来事などを追いながら時代を遡っていく工夫が凝らされている。そうして古墳時代にたどり着く。
公園名のとおり起伏に富んだ地形をしているが、北エリアの池上古墳をパスすると乙女山まで目立った古墳はない。中央エリアに入ってややコースを間違えたので、下池の湖畔沿いに女山古墳を半周する。古墳は大きすぎて絵にならないので、

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女山を背に下池を望む

下池西岸でショートコースに復帰。円筒埴輪が並び、前方後円墳の形がくっきり露出されたナガレ山古墳

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ナガレ山古墳

墳丘上からの眺めも格別。

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ナガレ山墳丘からの眺め

前方後円墳が道路で分断された、佐味田狐塚古墳。陸橋の両端で円墳と方墳をはっきり見ることができる。
中群最大級の巣山古墳を、光吉2号墳墳丘より望む。

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光吉2号墳と巣山古墳

丘陵公園内の古墳は以上で、残りは宅地に散在するのを拾っていく格好となる。子供たちが戯れる竹取公園を出ると間もなく、光吉石塚古墳新木山古墳。光吉石塚はナガレ山と同じ裸山、新木山は周濠に囲まれた小山だ。

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光吉石塚古墳と新木山古墳

ラストは丘陵公園から少し外れた位置にある、牧野古墳にのぼり生駒山地方向を望む。山ではなく丘ばかりなので見通せないことはない。

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牧野古墳からの眺め

あとは、真美ケ丘ニュータウンを南北に貫く歩行者専用道、かつらぎの道をまっすぐ五位堂駅へ。概ね下り坂なのでへたばる足も宥められる。ウォーキングやジョギングを愉しむ市民が多く、自転車道は分離されている。道路はほとんど跨いでしまうので横断注意は必要ない。途中のショッピングセンター、近鉄プラザ真美ケ丘店(エコール・マミ)でお土産を買っていく。マップに書かれた「柿けーき」は見当たらず、柿もなかを購入。柿は、前回泊まった吉野地方の特産。ここで買えない場合は大和八木で途中下車するつもりだった。

帰途

タイムスケジュールどおりの急行まで20分以上余裕あったけど、先発するどの電車に乗っても名古屋着を早めることはできなかったのでそのまま待機。脚はすでに限界に達し、近鉄線南側の狐井城山古墳どころか駅前の飲食店すら覗く気力もない。帰りは伊勢中川4分接続の急行2本で完璧に組まれており、3時間余でスムーズに完結。

年末の思わぬ予定変更による縮小のおかげで、本来の目当てである生駒を際立たせられてよかった。また、大和路に散る古都関係以外の見所も発見できて、コロナ禍のさなかながら充実した1泊2日を過ごせた。

*1:ミケが通過すると間もなく、留置線待機のブルが鳥居前へ入線する