南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

汴京八景

(および汴京)は宋都开封の別称。もし中国にご当地ナンバーがあったら是非、豫Bに代わる开封市を表す一字として推薦したい。原付や軽車両では見たことあるような。汴(bian、ベン)は日本では馴染みのない漢字だが、実は高校世界史の資料集に載ってたと記憶している。古都などの風光明媚な都市ではしばしば、際立つ名勝古跡をいくつか集めて○景と称し世に広く知らしめている。近い記憶では2019年に訪れた济源(Jiyuan)が思い浮かぶ(济源九景)。
jaike.hatenablog.jp
とくに中国人は数字の六と八を好むので、ベスト8選はイチオシだろうよ。
じつは、
tpakira.hatenablog.com
こちらの記事で、市民広場に設けられた赤いモニュメント、正面のパネルに「相国霜钟」を読んだとき、ふと、これって”开封八景”みたいなやつじゃね?と思った。モニュメントが八角形じゃないかとは後で気づいたのであり、前述の济源も八景だと思い込んでいたので八景は咄嗟の直感。铁塔の土台も八角形だしね(無関係)。即調べて汴京八景を知り、納得したところで生活に戻ってしまい、1か月以上もネタ保留になってた。
baike.baidu.com
汴京八景は早くも明代より文献にあらわれ、幾つかの古文書に宋代から明代、清代とそれぞれ若干異なる八景が示されている。現在は清代版本のものが継承されているようだ。以下、八景を具体的に列記。

1.繁台春色

繁塔
jaike.hatenablog.jp

2.铁塔行云

铁塔
jaike.hatenablog.jp

3.金池夜雨

金明池
jaike.hatenablog.jp

4.州桥明月

州桥
jaike.hatenablog.jp
最新の発掘現場と再現された景観が見たいなぁ。

5.梁园雪霁

梁园は現在の商丘市睢阳古城。(名残?として、行政単位の商丘市梁园区がある)
jaike.hatenablog.jp
距離的に近いため开封の範疇に含めているともいえるが、決して突拍子もない組み合わせではない。北宋時代の複都制(四京制)で、東京開封府に対して南京応天府の置かれたのが商丘だからだ。南宋初代皇帝の高宗は、ここ南京で即位している。古都の盟友といっても過言ではなく、景勝一枠与えるに値する。

あるいは、別の説では禹王台を指すこともあるらしい。
baike.baidu.com
jaike.hatenablog.jp

6.汴水秋声

汴河
baike.baidu.com
开封市街では現在地中に埋もれ、当時を偲ぶことはできない。州桥発掘調査でその一端が現れ、今後再現されると思はれ。
jaike.hatenablog.jp

7.隋堤烟柳

上に同じく、汴河風景。隋堤は、現在の商丘市永城にある汴河の古い河道。既に河道は変わったが堤は残されているようだ。第二次商丘編に永城も含まれるので、行けるところだったら足延ばしたい。

8.相国霜钟

相国寺
jaike.hatenablog.jp

現代の开封市中(とくに城壁内)で際立つ観光スポットがほとんど含まれず、意外に思われるかもしれない。ぎゃくに八景が選集された時代の当時を思えば、人の密集する都市を一歩離れて郊外の風流な景色を愛でる、そんな志向が読み取れなくもない。そのころの市中心部に該当するのは州桥と相国寺くらいだからね。まぁ开封は中国国内でも比較的ゆるやかに時の流れる町なので、铁塔公园や金明池、禹王台などは未だ十分同じような風情を味わえると思っている。時代を問わず、悠久の古都に相応しい八景だなと。