読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

予定を早めて桃花台

桃花台新交通ピーチライナー)は今月30日で廃線を迎える。ブックマーク「何まるけ」を参照していただければ分かるように、この最終日にだけ(一日フリーの)記念切符が700枚販売されるので、よし行ってやろう、と考えていたのだが、よんどころない用事が出現してしまった為、急遽1週早めて今日乗ってきた。一日乗車券は8月31日までの販売で、記念乗車券は17日と30日しか販売しないのらしい。よって、大人の私には今日は何もない。子供と家族連れには、相応のサービス切符があるようだ。ここまでは、同社HPで確認していた。
さて、今回の企画は鉄路遊びというには少々御幣があるほど、大変小規模なものである。上に述べたように、フリーで遊べる切符がない。いかに効率よく安く、楽しむかが問われる。まず、小牧から桃花台西までは自転車でうろついたことがある。駅周辺には多少馴染みがある。よって、桃花台ニュータウンの2駅に重心を置くこととする。またこの交通で計画を立てるのに、両端駅と有人駅ははずせない。この交通システムは、片側にしかドアがなく、両端駅でループを回って向きを変えるシーンが見られる。有人駅では、何か記念になるものをゲットできるかもしれないという期待があった。これらを参考にして、小牧原⇒桃花台東・・・(徒歩)・・・桃花台センター⇒小牧・・・(徒歩)・・・小牧原というイメージを出発前に描いてみた。

ピーチライナー初乗車

小牧までは自転車で1時間。午後4時前、到着。新交通と雪崩状に、年内に閉館となってしまうイトーヨーカドー小牧店は、まだ一応盛っていた。始点を小牧ではなく小牧原としたのは、小牧原のが駐輪場が整っているからである。高架下なので鳩糞の空爆は怖かったが…。
小牧から小牧原まで移動中、上り列車の行くのが見えた。かなり乗車率は高そう。あと1週もないのだから無理もない。今日が最後の日曜日である。
小牧原駅(無人)で時刻表を眺める。16:00があった。あと3分。慌てて切符を買おうとして、気付いた。桃花台東までは250円だが、桃花台センターまでは220円。節約するなら後者だ。即決で220円にして、改札を通る。ガラスに囲まれた島ホーム。3人ほどのカメラ持ちが待っている。そうか、ここもやはりいるのね。マニアに例外はないのだと改めて知る。
城北線と同じように、長年高架上を行く列車を眺めながら、一度は乗ってみたいよなぁと思いつつ時が過ぎていたピーチライナー。いよいよ、これに乗車する。
1駅だけ立ち席で、すぐ空いた。ホーム上に改札があるわけではないので、おそらく多くの初乗車の方が切符1枚で途中下車をしている(ホントはいけないのだよ)。ホームで写真を撮る為だ。だから客はソコソコ入れ替わる。
狭い4両の箱。1両に一つだけドアがある。左側はドアがなくすべて2人掛けの席。右は1人席がドアを挟んで4,5ある。この列車に初めて乗って、まず感じたのは、モノレールだな、ということ。東山動物園にあるモノレールに昔乗った記憶がよみがえってくる、そんな乗り心地。まだ開業して16年にもかかわらず、どこか古さを感じる。もう30年くらい使われてきた車両のようだ。接地部分はゴムタイヤだけのはずなのに、妙なゴトゴトというバイブレーションを感じる。その辺がまた古さを助長するようだ。高校の修学旅行で乗った広島アストラムラインを思い出したが、同じ軌道システムを用いていても、こんな揺れを感じただろうかなぁ?
全区間を15分で結んでしまう割には、意外とゆっくり走る。平均速度はせいぜい40-50km/hくらい。高所から、存分に小牧・犬山の山並みを眺めるのには最適。列車は、下を走る道路に合わせつつ、緩やかに丘を一つ一つ越えながら次第に登っている。いつも自転車で走り回っている地域でも、上から眺めると違ってみえる。

桃花台センター

これまで高所を走ってきた列車が、この駅で突如半地下に入る。変わった構造だ。有人駅だから、と期待してきたのに、記念グッズ売り場が全くなかったのは残念。切符は勿論改札機に消えた。駅周辺に多少外部の人間が見られるほかは、普段通りに見える。駅を出ると真正面にアピタ(ピアーレ)桃花台センターがある。ごく普通のショッピングセンターで、おそらくこのニュータウンで最大のものだろう。私としては5分もいれば飽きる。
隣にも小さなモールがある。若者や外国人が屯するところらしい。このほかゲームセンターも併設してあり、三つ合わせて馬鹿でかいレジャー施設の様相だ。ここが小牧市の僻地といわれるニュータウンかと思うほど、妙に盛っている。小牧駅周辺のほうが衰退してきていると思えるほどだ。ただ、プリンシェイクが見つかれば話は別だけども、鉄路遊びの趣向としてはこういうところに入り浸るのは物足りない感がある。

ニュータウンの最高峰

少し離れたところからニュータウンを眺めると、すぐに目に付く一つの建造物がある。それは、奇妙な茶色いキノコ雲の形をしており、異彩を放っている。モールの近くに、そいつが間近に見えたので、興味津々で接近してみる。ところがそれは、白い別の建物と共にフェンスで覆われ、「関係者以外立ち入り禁止」となっている。遊歩道っぽく整備された階段があるにもかかわらず、突然途切れて「立ち入り禁止」と書かれているのには笑えた。なんでも桃花台地域のテレビ受信発信基地なのらしい。電波の届きにくい僻地、桃花台の存在を風化されないための大事な施設である。
そういえばここは桃花台ニュータウンの中でも、もっとも小高い丘になっている。施設を背にすると、西の方角に視界が大きくひらける。まだ太陽のまぶしい時間だけども、新交通の軌跡がかすかに望める。施設の裏手に回ると東側が望めるはずだが、こちらは木々があって若干遮られた。

桃花台中央公園

はじめは桃花台センター駅から、軌道づたいに桃花台東駅まで歩くつもりだったけど、最高峰に登ったことで軌道に戻るのが面倒になったので、それっぽい方角に行きずりで歩くことにした。
施設の東側に適当に下ると、子供たちの声が響く公園に出た。アスレチックや芝生広場のある、なかなかいい公園だ。ニュータウンというと、山を崩し森や林を切り開いて住宅地を造成し、公園は後付けのように如何にも人工的に設けられるイメージがある。ところが、これから歩く桃花台東駅までは、雑木林の残る準自然的な公園なのである。勿論テニスコートもあるし、アスファルトで固められた遊歩道もある。10数年前にできたニュータウンというのは、一体何を考えて造られたのだろうか。
公園の中の案内板に、「古窯」という文字があった。いいもの見っけ。こんな超人工的な街に、期待もしていなかったものがあるらしい。テニスコート脇の林の中に、うっそうと茂る木々に紛れるように古い窯は展示されていた。奈良・平安期に使われていたもので、小牧ジャンクション付近を中心に数多く見つかっているものの中から一つを移設したのらしい。県境をはさんで隣の多治見が焼き物で知られるから、この地域に窯が多く見つかっても不思議ではない。それにしても、こんな陰に展示してはすぐに寂れてしまうよ。小牧市教委は何を考えているのやら。

桃花台東駅はどこだ?

行き当たりばったりで歩いてきたけれど、16:58発の列車に乗ろうと思っていたので、時間が迫ってくると不安になる。公園の東側入り口付近では中央自動車道と新交通がクロスしている。これが私の方向感覚を狂わせた。一体新交通はどの高架だ?桃花台東駅はどこにある?近くにカメラを持ったマニアな人があったので、さっぱり分からないけどもその人をつけてみた。と、東西の低い高架を列車が通過していった。あー、そこが駅か。列車が来てしまったので、折り返し時間も短いし、次まで待つことにした。次までは約20分ある。

ピーチライナーの車庫

実はカメラさんの行く先に、野外展示のように停車した新交通の車両があるのに気付いていた。列車を一つ見送ったのは、これを眺める為であった。野外展示というのは誤りで、実際は車庫である。桃花台東駅を出て50mほどの地点から分岐した線が、くるりと廻って敷地内に入ってくる。
敷地はとても広々としており、屋外に2編成、クリーム色の建物内には3編成分入る雰囲気だ。こんなにも入れるべき車両があるのかどうか、疑わしいところだが。ちなみに列車はすべて頭から突っ込む形で納入されており、始動時はバックで桃花台東駅に出すことになる。
ホーム上はガラス張りなうえ、乗客やカメラさんでごった返している為、人気の少ない車庫でじっくりと新交通の軌道システムを観察させてもらう。基本構造は、コンクリートの2本の軌道とそれに挟まれた1本の鉄製レールがあり、前者の上を普通のゴムタイヤの車輪が走り、後者は横向きにした2つの小型ゴムタイヤで挟み脱線を防止する、というものである。動力となる電気は真ん中のレールから取るものではないか、と思われる。間近に眺めているとなかなか面白い。

未完の土地

中央道を歩道橋で渡ると、真新しい一戸建て住宅が規則正しく並ぶ区域が一望できる。土地割りは済んでいるものの、整地も建設もまったく手のつけられていない土地が2,30軒分くらい残されている。土地は既に売れているのだろうか。それとも造成過剰で処理に困っているのだろうか。何となく不自然な光景ではある。

名物Uターン

桃花台東駅は、東海地方の駅100選に選ばれている。その決め手となったのが、この列車の向きを変えるためのU字カーブである。まるでジェットコースターのように、ゆるい坂を登って、急カーブを廻って降りてくる。ただ廻ってくるだけでなく、やや高度差があるのが特徴だ。数少ない新交通の名所なので、カメラが集中する。皆さんカーブを廻ってくる列車に釘付けになってたか知らないが、徐々にカーブを廻る毎に西日が4箱の窓ガラスに反射して、順々にピカピカと光って面白かった。始めはカメラのフラッシュかと思ったが、あそこまで届くものか。ピーチライナーの1日中続けられる所作の中でも、夕方ならでは光景である。

帰りはやっぱり先頭車両

でしょう。ただ日曜ということもあって、運転席の周りには子供が群がる。基本的に展望はあまり良くない。雰囲気を味わうにとどまった。ちなみに運転士は優しそうなお爺さんで、運転中に子供が傍にいても特に注意しない。自動運転ではないから、列車の扉とホーム上の扉の位置がずれないように気をつけないといけない。さすが16年のプロだから大きなずれはない。どんなに下車率が低くても、到着時のアナウンスは忘れない。遅れもなく速度は一定。近頃の大手鉄道が忘れてしまっている基本である。
既に代行循環バスが始動しているとはいえ、まだ定期券などで利用する学生や地元住民も少なくない。というのは、この廃線間近になって運賃がかなり値下げされた。つい最近までは、小牧−桃花台東間が380円(現250円)であり、これまで乗るのをためらい続けてきた理由の一つでもある。先ほど桃花台センターで下車した際、「はじめからこれくらいの運賃にしておけば、廃線にならずにすんだのにねぇ」と話すおばさんがいた。建設コストの関係から運賃が設定されたのだろうけども、やはりおばさんに同感である。
往復とも左席に座ったので、今度は南側の景色が望める。金色に輝く実りの稲田が綺麗だった。

切符を記念にゲット

自転車を置いた小牧原でなく、あえて終点の小牧まで乗ったのは、全線乗りたかったのと小牧駅側のU字型を見たかったのともう一つある。小牧駅側のU字は、ちょうど階段の陰になって全く望めなかった。ひっくり返した列車を桃花台方面に見送ってから、改札に向かう。少々ためらった後、駅員に「すいません、切符を記念にもらえませんか。」「いいよ」いとも簡単に、しかも笑顔で返事がかえってきた。〔無効 小牧駅〕の判を押してもらって、記念切符となる。フリー切符はない、ウォークラリーにも参加しないとなるとホントに記念が何も残らない。それでは寂しいと思って、最終日ではないから厳しいかなと思いつつ、駄目元で頼んでみたら聞いてもらえた。とてもすがすがしい気分で、小牧原駅駐輪場に向かって歩き始める。
おわり