南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

EU拡大の目的と限界①

Nanjai2004-06-25
 EUの事をまだ書いてなかった。2稿に分けて書いておく。
 EU(ヨーロッパ連合)は、5月1日にポーランド、ハンガリー、マルタなど10カ国が新たに加盟し、歴史的な拡大を遂げた。《拡大EU25カ国の人口は今回増える7500万人を加え4億5300万人となる。これは日本の約3.6倍、米国の約1.6倍である。ちなみにGDPで見ると日本の2倍以上、米国にほぼ匹敵する規模となる。 EU拡大が意味するところは、欧州のより広範な単一市場の形成によって、単一貿易体制が構築され、欧州域内取引が大幅に簡素化されることである。物とサービスの移動が自由になり、新しいビジネスチャンスの増加も期待される。 》というのは、EU本来の目的が充足される期待と展望なのだが、EUはいまや単なる経済同盟ではない。
 このたびのイラク戦争で、アメリカの戦争方針に反旗を翻したドイツやフランスの一方で、タッグを組むイギリスや経済的事情からアメリカとの親密な同盟関係を絶つことのできないスペイン・イタリアなど、同じ連合内でも意見が割れている。もっともスペインやオランダは国内テロ等の影響もあって、イラクからの撤兵を唱えてもいるが。というような、連合全体としての対外政策へのまとまりが求められてくることもあろう。スペイン・マドリードテロ後の選挙で成立したサパテロ政権は、ヨーロッパへの回帰を宣言したが、EU内の南北経済間の格差を考えると、実現は程遠そうだ。
 EU拡大をアメリカ単独至上主義、世界一国支配に対抗する新しい勢力の構築とみる動きがあるが、これはどうも考え物だ。EUは経済的団結にとどまる。いや経済的統合すら、この拡大で東欧諸国という新しい問題を抱えた国々が加盟したことで、揺れ動くに違いない。さらに、経済以外の統合を図ろうとすれば、そのための統一理念の形成が必要となる。それがどうして、アメリカの思想と対抗しうるものになるという確証があろうか。アメリカもEUも根元は同じヨーロッパ人。アジア人に対する何らかの蔑視を払拭することはできない。結局は、アメリカの思想に追随するものとなりはしないか。私は、まだEUが国際的影響力をもつ組織になることに期待はできない。
結:EUはアメリカの付録、西欧に対抗すべきはアジア諸国だ。
【2004/05/17/PM】