南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

七宝焼アートヴィレッジ

七宝焼とは、ふつうの陶磁器などと違い、銅板の上に多彩な釉薬を盛って焼く工芸品のこと。花器などの形に加工された銅板の表面に描いた下絵に合わせて銅線で輪郭をとり(植線)、鉱石を原料とする様々な色の釉薬を注いで(施釉)800〜850位の温度で焼く。銅線と釉薬の段差がなくなるまで施釉と焼成を繰り返す。中国から伝わった技術が江戸末期、七宝出身の梶常吉、林庄五郎らによって究められ工芸として日本内外に広められた。施釉の精緻を極めたもの、「赤透」など透明感を作り出したもの、泥七宝とよばれる沈着した色合いのもの等々、陶土の立体的造形に匹敵するほどの釉薬が魅せる色彩の奥深さを知らされた。
小学生のとき、名古屋市科学館サイエンスクラブで七宝焼体験をしたことがある。焼き物といえば瀬戸、常滑、美濃と次々思い浮かぶほど陶器生産の盛んな地域だけに、講座で初めて触れる形態の焼き物に拍子抜けしたのを覚えている。そして、これは伝統工芸を現代に順応させる新しい姿であって、本来の七宝焼はやっぱり製陶なのだ、と勝手に納得してしまっていた。あれが正真正銘の七宝焼、植線をしない無線七宝であることを今日学んだ。残念なことに当時の作品(マグネットとキーホルダー)は手元に残っていない。思い思いに盛った多様な色合いの釉薬の焼き上がりに改めて触れてみたかった。
この施設は、誕生したばかりのあま市七宝町遠島、県道甚目寺佐織線沿いにある。観覧料310円。西風に抗いながら走った価値は有り。勉強になりました。
ところで、展示場のある「七宝焼ふれあい伝承館」は上から見るとの形をしている。形に依らない工芸をテーマとする施設にして、こんなところに拘りを見せるのも愛嬌あり。