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南蛇井総本気

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

中国​反日デモ(2012)​考

日本の尖閣諸島国有化を契機に中国・台湾で起こった反日運動。柳条湖事件(9.18)81周年と重なり、大規模で過激な反日デモが大陸全土に拡大した。上海では旅行中の邦人が暴徒に襲われ軽傷を負った。日中国交正常化40年記念式典は延期、数々の文化交流も中止が相次いだ。あれから3ヶ月。デモこそ沈静化したが、日本製品ボイコットの継続で自動車などの販売は落ち込んだまま。中国に工場をもつ日系企業は東南アジア諸国やインドへ新たな市場開拓や拠点移転を検討中。漸く台湾が回復してきたものの、中国大陸への旅行ツアー広告は一向に戻ってこない。
私自身はといえば、予想以上に激しく吹き荒れる反日デモの嵐に怯え、とくに9月15日には开封でも発生したと知り衝撃を受けた。9月17日静観宣言し、事態が落ち着くまで持論を発しないことにした。とまぁ慌てたくせに、今は個人旅行で歩くには問題ないだろうと思っている。来年3,4月には厦门の友人に会いに行こうと計画しているくらいだ。国同士でも民間でも、信頼と協力の仕方を誤らなければ殴られることはないだろう。国を背負って歩く外国人としてのリスクはあるが、この原則を盾にすればさして怖くはない。逆に言えば、この原則を取り違った故に、9月の邦人は殴打を受けたのだといえる。その辺を主題に、反日運動に対する見解を2点述べておきたい。先日自民党が政権を奪還し日中関係の動向も不透明であるが、2012年に書き残して悔やまないよう今年中に吐いてしまう。

1.主谋是富人

ちょうど日本の尖閣国有化による日中紛争が勃発した頃に職場で知り合った中国人女性と、この問題について何度も議論した。彼女は日本での報道による分析を信じていて、穷人恨富人(貧しい人は富裕層を憎む)構図だという。反日デモに参加しているのは皆貧民で、働けど楽にならざる経済格差に対するやり場のない不満を小日本鬼子にぶつけて発散しているのだという。その格差の要因として、地域の経済力や職種以上に、地位、とくに党や政府の職位を利用して富める者と、それらと縁のない者との不平等なシステムがある。事実を知っていても、政府批判にもつながるため容易に抗うことはできない。
けれども、俺は反論した。世の中そんな単純なもんだろうか。たしかにデモ参加者や暴徒の多くは憂さ晴らし目的の貧民かもしれない。だが反日デモが激化する前の8月27日、日本大使館の車が北京市内で2台の車に挟み撃ちされ、日本国旗を奪われる事件があった。2台とも外国製の車で、少なくとも格差を嘆くような市民が容易に買えるものではない。この辺はどう説明するのだろう。一連の反日運動の首謀者・仕掛け人は富裕民で、貧民は結局乗せられたに過ぎないのかもしれんではないか。たとえバレて逮捕されても自身や親類のコネで刑罰を減免できる、身の安全が保障された者だからこそ気軽に騒ぎを起こすことができる。小さな切欠さえ作れば、あとは貧民が勝手に事を大きくして暴れ罰も代わりに受けてくれる。
中国人と日本人ではまだまだ生活観が違うという。高度経済成長を終え、バブルも崩壊し、デフレスパイラルに陥る国と、漸く急成長に陰りが見えてきたばかりの国とでは、確かに豊かさの感覚を共有できないかもしれない。しかし、日本の辿ってきた道を倍速で追いかける国なのだから、現代社会の抱える諸問題も倍速で進行してきているはずだ。その証拠に、物的豊かさや金銭的豊かさを享受しきってしまい、精神的豊かさに飢える人民が出現してきたことをこの仕掛け人の行動に見て取れる気がする。改革開放以前ほとんどの市民が平等に貧しかった時代から30年、皆そろって食うには困らない水準になったのは事実だ。けれど、一部の人間はそれにとどまらず一般人とはかけ離れた豊かさを既に達成し、日本人と同様に新たな価値観を渇望・追求している、ということに多くの人はまだ実感が湧かないようである。こういうのも格差の一種なのかなぁ。

2.日系企业是真正的对手

もし今回の反日デモが貧困層の、富裕層とくに官僚の職権濫用による金持ちに対する不満の爆発だとすれば、それは筋違いな発散(息抜き)ではない。中央や地方政府へ鬱憤の溜まっているところへ、偶然尖閣諸島問題が発生し怒りをぶつける相手が現れたからではない。現地の日系企業は、暴動で店舗や工場に甚大な被害を受け操業や営業の停止に追い込まれたうえ、不買運動の影響で今も苦しい状況にある。国際問題に翻弄された被害者であるかのように伝えられている。しかし、中国に進出している日系企業こそ彼らが対峙すべき敵なのだ。たとえば、トヨタやヨーカ堂はどうやって中国に進出できたのか。それは世界的なブランド力ではない。自動車メーカーは第一汽車など中国の旧国営メーカーと合弁して初めて、現地に法人を置ける。また、工場や店舗を建てるには地権者や地方政府幹部への手厚い接待が欠かせない。一方で付近住民への説明や調整は要らない。企業と地方政府との間に密接な関係さえ持てればよい。日系企業の大陸進出こそが汚職官僚の私腹を肥えさせる資金源なのだ。上手に誘致すればするほど、彼らの懐は潤ってゆく。逆に善良な民の土地は官の意のままに接収され、工場への就労という目晦ましを掴まされる。労働者は比較的高い賃金に喜ぶかもしれないが、それを遥かに上回る報酬を官は独占している。
だから反日運動は、尖閣諸島を国有化した日本政府だけでなく、日本企業にも直接矛先を向けている。日本企業を中国から追い出せば、地方政府官僚の収入は減る。また、その地方政府が日系企業の退去をあからさまに拒めば、贈収賄を炙り出せる。最近はそれをネットで暴露するのも流行っているらしい。破壊行為に至るのは一部の愚民だが、反日を声高に叫ぶ者は必ずしも無知とはいえない。腐敗に加担するものを叩き出し、万人が平等に富める社会を築くための正当な戦いだとすれば有理ではないか。
中国進出過程における地元政府とのコネは、とくにブランド力を持たない中小企業にとっては重要である。企業だけではない。外国人留学生だってそうだ。エライさんと親しければ外国人特権を利用して、夜中に外遊しても寝ている守衛を叩き起こして門を開けさせ宿舎に帰ることができる。コネさえあれば卒業後も容易に就職できる。私みたいに底辺の人民に同情してそんなチャンスを逃すと、こうして日本でフリーター生活に没することになる。外国人が中国で上手く生きてゆくためには、一般市民よりも地位ある人と蜜月になっておくことが必須である。けれども、それが本当に正しい現地との信頼関係の築き方か、がいま正に問われている。経済的利益のために外国人優遇を利用して進出させてもらいながら、ともに恩恵を分け合ってきたのだからwin-winのはずだ。と勘違いしていて、地元住民との関係を疎かにし、尚且つ反感を買う官職腐敗を自ら助長していることに気づけなかった日本企業の醜態。これは叩かれても致し方ないのでは。
中国中央もこの騒乱を民のガス抜きと捉え、政府批判に発展するのを恐れ一定のピークで抑え込んでしまった。が、発展するまでもなく既にこの運動自体が支配者権益への挑戦状なのであり、教育の操作と洗脳により尖閣を奪われた怒りに燃えているのではないということに、中央は気づかねばならない。外に国威を守ることも大事だけれども、この愛国的高揚を単なる外交戦略への賛美と見てはならない。内なる力が愛国運動の名を借りてする告発を真摯に傾聴し、支配層の腐敗浄化に努めること。そして再発防止を兼ね、外資誘致を抑え自国ブランドの形成を推進させること。広大な領土と多民族、巨大人口であるがゆえに、人民に対して常に強硬な中央政府であるが、この一連の運動はお上が民の提醒を受けることの必要性を示している。
デモに恐怖を覚え不買運動で経営再建が困難な企業は、中国から撤退したければすればいい。どのみち合作の方法は間違っていたんだし、そのツケを思い知っただろうから。また、そのほうが大多数の民意に沿っているといえるのだから、最後ぐらい人民の力添えになってあげましょう。そして、中国に残る方は付き合い方を再考しましょう。