南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

引用

 近頃は日本の産業の海外進出の為めに、日本は経済的に優越な國と見られる傾向がある。日本の強い事、富めることは多くの外國から羨望の的とせられる資格がある。併しこれだけでは國の人格といふものがまだ完全とは云はれない。此の上に必要なのに、日本の政治的良心や文化的発展が世界の尊敬の的となる所まで行かなければならぬ。世界に何か変わったことでもあると、世界が日本をたよつて其の解決をして貰はうといふやうになる。恰も個人の社会で困難な問題が起ると、社会全体に信用のある人に仲裁を求める。國家の地位もこの程度に迄高まることが望ましい。個人が自分の人格を高めることに修養する如く、國家も亦、國家の人格を高めることが必要である國家が國家としての信用を増すに従つて、日本は精神的に世界を指導することになり、黙ってゐても國際的に基礎強固な國になるのである。
馬場恒吾 「國に人格がある」 1935 より
※一部現行漢字に革む。仮名は原文の通りとす。