南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

郑州BRT(郑州2009年10月号)

BRTとは、Bus Rapid Transit(中国名:快捷公交)の略称で、要するに専用通行帯を走るバス交通である。名古屋で言えば基幹バス、特に道路中央を運行する基幹2号線とまったく同じスタイルである。システムや路線などについては中で詳しく述べることとする。そして、郑州市の1年近い時間における変化も記していきたい。
今回の郑州再訪でやらなければならないことは、すでに幾つもあった。まず郑开城际公交の系統の変化を把握すること。既に开封东站-郑州西站線の出現は分かっていたから、改変は大きいだろうと。次に、郑州市内の新しい地図を買うこと。路線バス網を研究したり、地下鉄の計画状況を把握するのに使う。また、今年2月ごろから建設が始まったという地下鉄の工事状況も見に行きたい。それから、中国鉄路の時刻表を買うこと。これは昨年に2008年版を買った書店に行くのが確実だと思ったから。ほかにも、将来整備されると思われる郑州新火车站(市東部)の予定地とか、味千ラーメン鄭州店、二七广场の寿司屋*1などの最新状況を確認する必要もある。
午後に予定を入れられるように、午前中いっぱいを使って行くことにした。ミカンと油栗を適量に食べて、東門から33路で金明广场。

郑开城际公交最新情報

予想通り、系統は幾分変わっている。また、ワンパターンではなく、組み合わせが多様で複雑化している。確実に便数のある系統は次のとおり。
开封中心站-郑州新东站
开封相国寺站-郑州陇海站
开封相国寺站-郑州万客来
开封客运西站-郑州陇海站
开封金明站-郑州徳亿站
开封东站-郑州西站
开封側は中心站と相国寺站、郑州側は新东站,陇海站と徳亿站が主力なので、これら発着の上記以外の結び方が存在する可能性はある。詳しくは、バスの運転席の後ろに全系統の運行間隔等が掲示されているので、参考にされると良い。上に示した系統は、基本的に20分間隔の随時発車システムである。このほか、开封河大南门-郑州北站(1日2往復程度、ノンストップ)も残存し、上記开封側ターミナル(中心站が濃厚)から郑州北站への発着もある。両市それぞれでの観光や移動などに応じて、ターミナルや系統を選ぶと良いだろう。
开封側のターミナルは东站(10月25日記事で解説済み)を除いて従来どおり。一方郑州は、新たに当公交で使用されることになったターミナルがあるので、アクセスなどを紹介しておこう。
まず、陇海站。これは南站の代替で、同ターミナルより1kmほど東にある。徐々に郑州側のターミナルが東部郊外へ移動してきている表れだ。これまでは南站が鉄道駅に最も近い(ギリギリ徒歩圏内)発着ターミナルであったが、さらに遠ざかってしまった。市南部に位置し、南站と同じ陇海路に面するバスターミナルで、存在だけは前から知っていた。当公交の系統も多めに設けられ、鉄道駅前にある中心站などから、中央バスターミナルの機能を委譲されて格が上がってきているようだ。しかし、全国の大きな移動はまだ鉄道が主流なので、駅へ行きたい人には市内交通がやや不便である。降りてから市バスの停留所を探したが、案外時間を要した*2。急ぐ人はタクシーや三輪に頼ることになるだろう。おそらく今後、観光地などで用いられているオープン型電動乗合自動車が運賃2元で運行されると思うので、それに期待したい。ターミナル内には既に公交専用の待合所などが設置されており、短命に終った二马路站の二の舞にならぬことを密かに祈る。また、後述するBRTはここを通らないので、市中アクセスの際は注意。
次に、万客来。これは初耳の地名であり、地図で頑張って探した(最初、ホテルか百貨店の名前かと)。十字に交差した鉄道の左下ブロック最下部、南西郊外に位置する。BRTが描かれている現行の地図では、ややターミナル化している。一度もアクセスしたことがないので、まったく状況をお伝えできない。もし郑州に達してから、外環路でなく市中心部を走行するとしたら、鉄道駅付近や客运总站などを経由してくれるありがたい系統かもしれない。先述の通りBRTが発しており、市内へのアクセスはいいほう。ただし、周辺には特に何もない。
西站。これは10月25日でも紹介したが、市街区のほぼ西端にある。やや行き過ぎだが、郑州大学老校区などへのアクセスに使える。BRTや建設中の地下鉄もここを通る。
北站。以前にも紹介したけれど、河南省博物院へお越しの方に最適。
こうして見てみると、中心部へのアクセスが苦しくなったかわりに、東西南北の外周に一つ以上の発着点が設けられたことが分かる。郑州側の発着点が多様になったことで、金明广场の售票处では行き先ターミナル名を言って切符を買う者が目立つようになった。実際はどこであっても、運賃7元も切符形態も変わらない。まぁ正直、郑州以外の注文はできないのに、窓口に何を言えばいいのかふと迷うことはあるな。人数か。

BRTと遭遇

ということで、やっと出発のところへ話が戻った。相国寺站-陇海站系統*3に立ち席乗車して、発車。行き先ターミナルが多様になったことで、発着を待つ列も増えたはずなのに、狭いホームでは分けきれなくて混乱している。係員が時々大声で整列させているところは、あぁなんか雰囲気が違うな、と。
経由する新东站でも降車が少なく、終点まで立ったまま。そんな中、ある車線の多い道路を横断したときのこと。道の真ん中に、市電の停留所のような建造物を目撃。何だ、あれは。ほんの一瞬のことで、確認する間もない。これは、他の些細なミッションを差し置いてでも、突き止めるべきだと思った。
陇海站より、火车站市バスターミナル(南)へ行き着く。点在する地図売りをそれとなくチェックすると、カラフルな路線の巡った地図が見受けられる。これが載ってないと買う意味がないので、観光用の3元地図を敢えて避け、大判の5元地図を買う。にしても随分値上がったね。一律2元だったのが、種類別に5元まで上昇ですか。この地図は、暫くお預け。

鉄道時刻表を探して

これが意外に手間食った。いつもの大書店(中原图书大厦)へ行けば、と高をくくっていた。まず勘違いで、购书中心へ歩いていき店内で、あっここじゃない、と*4。そのまま続けて徒歩で中原图书に行っても、時刻表など影も形もない。今回は短期だから、また次回では済まない。思いついたのが、人民が長距離移動の車内で読むような雑誌や新聞を売る露店。これに入り混じってないだろうかと。駅まで市バスで戻り、幾つか覗いてまわると、あったあった。俺天才。手にとって眺めると、おっちゃんが「それ、出たばっかなんだよ」と言いながら新しいのを下から取り出してくれる。もぅ、新版なら本屋で売れよっ。一冊10元。今回のはポケットサイズではなく、やや大判。一応、「2009.10」と付されているので、本来毎月出るものらしい(てっきり2009年と2010年兼用の意味かと)。これで自分への土産はできた。

いよいよBRT見学へ

駅前から、地図も見ないで北方面へ行きそうなバス路線を選んで乗り込む*5。途中通過した二七广场の、日本料理店のあった場所は、福建小吃に変わっていた。日本並みに美味い寿司がお手ごろな額で食べられて、学生らに奢るのにちょうど良かったのに。そうそう、地下鉄1号線の建設が行われる人民路は、早速工事用の柵が並木を覆うように立てられて、だいぶ物々しくなった。地下鉄とは関係ないが、駅北の解放路でも廃墟ビルの解体や道路工事が行われていた。駅周辺、二七塔周辺はまとめて新装されそうだ。
农业路付近で下車し次の路線を検討していると、またもあの停留所を発見。そして、専用通行帯を走行するバスを同時に確認した。地図によると、現在運行されているBRTは9路線。そのうち、専用の停留所と通行帯が設けられているのは幹線のB1だけで、农业路(北辺),未来路(東辺),航海路(南辺),桐柏路(西辺)によって市街地を囲むように環状運行されている。そのB1から枝葉のように分かれたり、市中心部へ入っていく形でB11〜13と15〜19がある。駅前への路線もあり、専用線がないため気づかなかっただけである。
さっそく試乗。停留所は道路の中央にあり、上下線別々のホームがある。駅舎の基調は赤。まだ非常に新しい匂いがする。入口に改札機と、料金箱、カード支払機があり、一応係員が常駐している。運賃は一律2元(カードの場合は多少割安かもしれない)。札でもコインでも可。投じると改札がひらく仕組み*6。専用ホームをもつB1ライン上での支線との乗り換えに限り、はじめの2元で乗れるようだ。たとえば、今回利用した东三街站にはB11が乗り入れているが、B11からB1に乗り換えて、さらに次の文化路站でB18に乗り換えて目的地へ向かっても一律2元ということだ。B1上の乗降する駅に支線が存在すれば、何も疑われることなく、初乗りの2元で延々と乗り継ぎまくって全線試すこともできるのだ、わはは。
f:id:Nanjai:20171107143433j:plain 金水路站。
停留所は、外部と完全に分離され、バスの到着毎に2箇所ほど扉が開く。到着予告アナウンスあり。最初はB1とB11の区別が分からず戸惑った。2路線同時に発着することもできるので、意外と長いホームである。運賃が2元ということもあって、利用者が若干限られてくる。ホームに人は疎らだったが、車内は外国人などでわりに混んでいた。車両は、電気自動車ではなさそうだが、ここまで本格的に造るぐらいだからハイブリッド車か何かだろうと思う。相変わらず運転は荒いが、走行音や振動が少なく滑らかに走る。低床車で2両編成、人が減ると結構広く感じる。B1は環状運転であり一周しても構わないが、基点となっている农业东路站で車両の乗り換えをしなければならない。この、運転手交代で延々と廻り続けている「わけではない」ところが、河南らしいというか面白いところ。
f:id:Nanjai:20171107144020j:plain B15入場。
という感じで、东三街站から农业东路站経由のB1右回り*7で、徳亿バスターミナルに近い金水路站まで乗車。同バスターミナル方面へも非専用線のB18が通っているが、ここは係員の視線を感じて改札を出る。なかなか興味深いトリップでありました。たぶん、これまで計画していた何路線もの地下鉄を全部造る工費がバカにならないと気づき、工費を節約できる代替交通として建設したのではないかと。以前に入手した地下鉄計画図と一致する路線が多いので。ただ、中国の都市交通政策は、無計画に手段を増やす傾向が強いので、油断はできない。「2元で自由自在」はかなりイケると思うから、うまく発展していってくれると嬉しい。

おわりに

徳亿汽车站までの道すがら、味千ラーメン鄭州店を発見。こんな身近なところにあったのか。もっと開発区みたいな辺りにあるのだと思ってた。BRTで1駅半、乗っときゃ良かったかな。
そうそう、郑开城际公交最新情报で言うの忘れてたこと。开封金明站と郑州徳亿站を結ぶ路線では、二階建てバスが導入されている。郑州市内公交で数路線、郑州発の長距離バスでも登封行きなどが二階建てバスを採用しているが、当公交では初。今回日本人留学生からチラリと耳にし*8、今日で実際に乗る機会となった。まぁ、二階建てにするには階段を車内に設けないといけないので、圧迫感を覚える(その点、2階はややゆったり)。とくに金明-徳亿線は広い道路しか走らないんだから、上に積まず前後に長くてもいいのじゃないかと思ったりする。いずれにせよ大量輸送が成り立てばいいのか。
同じ开封行きのバスが、後部を他車にぶつけられて立ち往生しているのを見かけた。取り残された乗客がいないようなのでそのまま通過したが、やっぱり事故にも遭うんだなと。いつもどおり金明广场で途中下車して帰る。

(画像はいずれも2017年撮影)

*1:元丽迴转寿司店。08年10月13日、友人と訪れ寿司やカレーを堪能。ブログペットの背景画像の一枚に使用。

*2:西へ向かう路線の停留所を探すとよい。

*3:一応101とか番号があるのだが把握できてない。

*4:その途中で、麻花(あまり甘くないカリントウ)を大量に買ってしまい凹んだ。腹はふくれるが、バッグ内は染み出す油でベトベト、量が半端じゃない。

*5:市バスターミナル(北)にて、ラフな格好のジャパニーズバックパッカーを2人見かけたが、知らぬ顔をしておいた。

*6:初期の東京地下鉄か。

*7:上述で混乱した人のために記す。

*8:展望はいいけれど、他車とのせめぎ合いが怖かったとか。たしかに。