南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

みちのくの旅 6:ムーンライトながら

東北旅行第六日目(帰路)
《主な移動行程》
東京→<東海道本線>→名古屋
《印象に残ったこと、その他諸々》
前日23時43分、快速ムーンライトながら号に乗車。俺は、名古屋で切り離される予定の7号車後部窓際に落ち着く。予約前にネット上で、東京=名古屋間としては満席とあったので、小田原までを購入。後で調べて、名古屋切り離し号車であることが判明。爆睡しても名古屋止めだ、と逆に安心した。皆が夜食を頬張りだしたが、俺は飲料一つで我慢。口寂しい。できるだけお土産に温風が当たらぬよう、配慮して睡眠体制に入るも、日付が変わるまで車掌が来ぬので、それまで起きていなければならん。普段は車内でも瞬く間に寝てしまう俺だが、なぜか夜行列車においては寝付けない不思議な体である。周りに倣って、シートを適度に倒すけれども、逆に疲れる。そんな中、うざい事件が起こった。

事件は、小田原到着、すなわち俺の座る車両を含む4〜9号車が自由席に変わった直後だった。おそらく弱度の知的障害者だと思われる一人が小田原で乗車した。俺もはじめは、こんな夜中だから眠い子供がふらついているのだと思った。ところが、彼は極度に通路の乗客に体当たりする。突き飛ばされた(と後で主張した)人もいたくらいだ。異常なまでのふらつきに、眠さや疲れで刺々しくなっていた乗客の一人が堪忍袋の緒が切れたらしく非常ボタンをプッシュ。不気味で頭痛を引き起こすようなサイレンが車内に響き渡った。まったく、よりにもよって俺の車両、しかも俺の真後ろでその事件は起こった。当の彼は、「私だってこんな混雑した電車に乗りたくないよ。インフルエンザで体がふらふらなのに仕事だから乗ってんだよ。仕事なんだよ」とやけに八つ当たりしてくるし、ボタンを押した男は、「お前は乗る資格なんか無い。こいつを降ろせ」と駆けつけた車掌に食って掛かる。第一インフルエンザで密室電車に乗るなよって感じだ。また、やけに冷静気取る方は、「子供の病気なんだ。仕方ない。君も降ろせなどと妙なことを言うね」などと通報者をたしなめるし、車掌は車掌でブザーも喧嘩も止められずオロオロ。ともかく、頭に響くようなそのサイレンだけは切ってくれ、後は話し合いで済むから。ということで、ついにドライバーなんか持ってきて音源を壊して消音したのは15分あまり後。慣れてないもんだから、ブザー一個も容易に止められないんだよ、と乗客連に揶揄されながらとりあえず20分遅れで発車。一時は、「ブザーを停止させられないため、別の車両に乗り換えていただく」なんてことになって、さらにこの車両に乗っていた人は既に自由席区間なので、新しい車両で席の早い者勝ちとなったりしたら、東京〜小田原間の俺の既得権はどうなるんだよってことで、冷や冷やして車掌の後姿を睨んだものだが、なんとか収まってくれた。その後の喧嘩処理の様子。
通報者「こいつを降ろせ。他の乗客の安全はどうなる?」
車掌「君は突き飛ばされたのか?」
通報者「いいえ、しかしこの人は随分やられていた」
車掌「君は何もされていないんだろう」
通報者「しかし、この人はやられたし、危ない人を乗せて置けないでしょう」
車掌「君は被害者じゃないし、、、
みたいな論争で、とにかく実際に突き飛ばされた人はそれほど被害意識も無く、また大きな揉め事にしたくないらしく、憤慨する通報者を逆に宥めようとしている。しかも、当の加害者はいつのまにか他の車両に移動しているし、これじゃ実況見分も何もない。結局、通報者が警察や鉄道会社への報告書がなんとかと心配したりするのも、こちらのことですから、と押し宥めて車掌は姿を消す。

そんなわけで、もともと寝れない俺の気分はさらに台無し。東京=小田原間と静岡=浜松間の転寝で終わった。浜松の長時間停車で、タバコを吸いながらこっちの車内を眺める人間の様子が、どうも車内盗の下見のようで気になって仕方なかった。どの席の人間が不注意で寝ているか探っているようだ。というのは疑いすぎなんでしょうかね?

午前6時02分、金山駅下車。転寝とはいえ、多少寝たせいか、外に出ると激寒い。00分到着と勘違いしていたため、中央線乗継が一本遅れる。この先は我が家を推定されかねないので省略。無事、帰宅。

《後記》
水戸の梅」と「ずんだ団子」はほぼ3日以内に家庭で食されてしまいました。お土産魔の綽名を持つ俺でも、今回はさすがに移動距離が長いので、多くの土産を購入できず、家族にとっては呆気なかったかもしれません。大学関係者など、俺の東北旅行の物的お土産を要望されます方は、後日CD『宮沢賢治の世界』を貸し出しますので、その旨連絡を。