南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

紀伊半島一周の旅 4:伊勢志摩

紀伊半島一周の旅 3:太地、新宮、熊野よりつづく)
早朝に目覚めるも、外宮お参りして昼前に鳥羽行けばいいので、の〜んびり発つ。まずは朝風呂。コロナ禍の最中だというのに、ここキャッスルは満室なのか駐車場の整理誘導も要るくらい混んでいる。昨夜の浴場も密に近い状態で内風呂も露天もゆっくりできなかった。湯処入口にはマグネットボードで現在の入浴者数をわかるようにしてあるが、任意申告なので参考にならない*1。今日こそは空いてる露天風呂を、とせっかく期待していったのに、未明を境に男女入替制を導入したらしく、今朝は内風呂のみのほう。女湯ってこんな狭いんだと思い知る。朝風浴びたかったなぁ。
テレビでニュース観ながら、おもむろに成人チャンネルへ切り替えると、ちょうど篠田ゆうちゃんが出てたので100円落とし込んで暫し愉しむ。朝一番で篠田ゆうは粋だな。
空腹を覚えるとともにチェックアウト。コンビニ真向かいだけど、買って部屋戻るの煩わしい。

伊勢

ファミマで軽食摂り、神宮のほうへ思うまま歩く。伊勢市(宇治山田)は尾崎行雄ゆかりの地らしい。明治5年に当地へ移り、宮崎文庫英学校*2へ入学している。

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尾崎咢堂像(宇治山田駅前)

拝殿前で密にならぬよう常に流動を促される外宮参り。

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伊勢神宮外宮

大抵まっすぐ元来た参道を戻るのだが、今日は拝殿の後ろへ回って北御門へ。御厩なんて初めて見たかもな。
敢えて外宮の北へ出たのには訳がある。かつて近鉄の前身参宮急行電鉄が伊勢方面へ進出(現在の近鉄山田線を敷設)したころ競合していた、伊勢電気鉄道(現在の近鉄名古屋線などを敷設)の伊勢終着駅、神宮前駅跡を見に行く。伊勢電はのちに参急へ合併され、本線の津(江戸橋)以南は伊勢線となるも重複と見なされ徐々に廃止。路線跡は「近鉄道路」などへ転用された。当時参急の神宮最寄り駅は宇治山田だろうから、この大神宮前のほうがやや近い気がする。

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伊勢電大神宮前駅

この先松阪方面へしばらく軌道跡の道路が続いており、鉄道トンネルも残る。一度ゆっくり歩いてみたいね。
伊勢市駅へほぼ真っすぐに延びる北御門通りは風情あって良かった。

鳥羽

伊勢市駅の駅員が紅インクべったりで日付スタンプ押すものだから、乗車中も全然乾かずに結局ポケットを汚した。携帯することを考慮した押印求む。
さて、鳥羽の目的は唯一つ、ふる里館で美味しい魚介を食べることだ。キャッスルイン伊勢と同様、母に薦められて訪れて以来すっかり虜となってしまった。駅前の飲食店街などには目もくれず、一心に同店へ向かう。牡蛎のシーズンではないので魚お造り定食をいただく。

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ふる里館の魚お造り定食

新鮮ぷりっぷりのお刺身は絶品。魚の煮つけを美味しく頂くと、「キレイに食べてくれた」とまた褒められる。この後デザートの杏仁豆腐もいただける。ごちそうさまです。
早い時間でスムーズに食べられたので、予定の電車に余裕があり駅ビルの土産物屋を冷かしていく。

二見

近鉄線では行けない二見浦へ寄っていく。途中、昨春で廃止になった池の浦シーサイド駅のホーム痕がチラリ。快速みえも停まるのにこの時勢、コンクリート質のガランとしたホームが寂しすぎる二見浦(ふたみうら)駅。海水浴シーズンでないときの名鉄内海駅に似ている。無人駅なのも静寂を助長しているな。

夫婦岩

海沿いの表参道には向かわず、国道42号線をまっすぐ夫婦岩へ。駅前はあんなに殺風景だったのに、景勝目前の旅館街へ入るとふいに観光客で賑わう。表参道は松原にだけ付き合う感じで二見興玉神社へ。

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二見興玉神社参道

ていうか、夫婦岩ってこんな岸壁ギリギリの、しかも岸から間近な位置にあったんや! もちょっと広い浜と、岸から多少離れたところにあるものだとイメージしてたわ。思い込みは怖い。

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夫婦岩

細く狭い境内だけに密となりがち。また縁結びに絶好なことから、やはりカップルの姿が目立つ。鳥居越しに拝んだあとは、散策道のより間近なところで愛でる。そうか、有名な初日の出ってこんなとこで遥拝しているのか。

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夫婦岩近景

一ノ鳥居前のお土産店を冷かしていく。お茶や酒の地産品がちょっと魅かれた。ニューパークのほうは格安商品が多く、丹念に見て回ったのは紀州柚子もなかを補いたかったのか。

音無山

午後は薄曇りで直射日光を浴びるような日ではないが、気温の高い時間帯なので夫婦岩と半々に過ごすつもりだった音無山。二見の旅館街を海と挟むように聳えている。じつはさっきの夫婦岩に迫っていた山地も音無山の延長である(国道42号がトンネルで貫通)。木陰に潜ってしまえば暑さも避けられるだろうと踏んだものの、いざ登り始めると思いがけぬ急坂に息切らした。汗まみれで九折を登りきると眺望はよかった。標高約120m。

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音無山からの眺め

やや遠くに見える島々は答志島方面になるのか。展望台傍らに音成神社がある。
一旦馬の背に乗ってしまえばなだらかで、駅方向に向かって自然歩道を進む。かつて二見旅館街と音無山遊園地を結ぶロープウェイ、二見浦旅客索道(1932~42)が運行しており、山上の音無山駅が草木に埋もれながら遺構となっている。

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二見ロープウェイ音無山駅跡

コンクリートがっちがちの乗降台は簡単には朽ち果てぬわな。辺りは鬱蒼と木々が茂り二見の町を見下ろす術もないが、基礎がこれだけ残っていると架線柱などを脳内で組み立ててしまうな。また山上遊園地は一切面影を残していない。
最も駅寄りと思われる登山口、高松稲荷に下山。本旅唯一のささやかな山歩き、疲れた脚には適量だったか。

おわりに

快速みえを津で亀山行き普通に乗り継ぐ。松阪〜津間の快速車内検札で行き先を聞かれ、津より先も引き続き乗車の場合は伊勢鉄道線運賃を徴収される*3。かつては降車駅での自己申告もあっただけにこの業務は必須。今回は伊勢鉄回避というより、紀勢線完結のため。記録で抜けてた津〜一身田間を埋めて亀山に至り、きっちり紀勢線を締める。関西線で電車と再会し、18時ちょうど名古屋帰着。紀伊半島を大きく一周し環をとじる。
まったく未知の和歌山沿岸部と、幼少の記憶薄れた南紀から伊勢に至るまで、JR紀勢本線でつらつらと辿ってみた。奇をてらうネタは目立たなかったものの、取りこぼしも少なかったんじゃないかな。積年の夢だった鯨も食べられたし、若干台風に濁されたものの美しい海原を望めたし、締めは鳥羽のお造り定食と、思うままの海沿い鉄旅でございました。

*1:スリッパの数と一致しないw

*2:豊宮崎文庫。外宮に隣接する

*3:青空フリーパス伊勢鉄道込みなので不要