南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

三河国一宮参り

名古屋−豊橋往復切符および名古屋市内−新城・長篠往復切符は、両側ゾーン内でも乗降自由ではないということを最近やっと知った。もしそれができたなら、新城付近の城跡めぐりを実施したかった。牛久保野田城長篠城、長山城など幾つも古城跡があって、一日では足りないかもしれない。少し勝手に計画を進めていたけれども、残念ながらそう思い通りにはいかない。それでも豊川や新城辺りというのは、たびたびのJR飯田線利用において常に通過地区でしかなかったので、一駅でも空白を埋めるのが上記切符の利用価値だと思う。今回のメインは本宮山登山だけれども、駅名でもある三河一宮こと砥鹿(とが)神社の奥院が山頂にあるため、上のようなタイトルになる。

豊川市一宮町長山へ

登山にしては遅めの9時出発。金山09:24の特快で豊橋へ。連休中のため降りるまで座席は得られなかったけれど、大府も通過の特快は堪らないね。慣れない人は酔うかもしれないが、あの不規則なようでリズムのある揺れは醍醐味。豊橋駅では発車待ちのパノラマスーパーをせっかくだからと撮ってみたけれど、駅屋根が暗くして今ひとつ。その対岸に停まった飯田線の列車はなんと一両。しかも新城止まりのくせに満員に等しく混んでいる。それが小坂井や豊川でも寧ろ増えた後、三河一宮で一気に半数ほど降りた。このときはウォーキングイベントでもあるのかなと思った。因みに私は登山に最寄の長山まで乗り、同駅はこの際は通過。この大規模な下車が、今日から3日にわたって催される砥鹿神社の祭りのためだとは、山頂で初めて知った。
留学などで暫くご無沙汰している間に、長山駅の雰囲気もだいぶ変わっていた。木造駅舎は白いコンクリの小屋になり、清潔なトイレも整備された。駅前に本宮登山のコースが何本か描かれた案内図*1があり、これからの行程を確認する。この登山前に長山城を探していこうと思っていた。家にある古い地図に載っているだけでなく、駅の史跡案内板にも表示があったはずだ。ところが、あらためて見回しても全然それらしい表示は見当たらない。登山を前に徒労はしたくないので、効率よく見つからなければ帰りに回せばよい。何となくスッキリしないまま駅をあとにする。

本宮登山

長山駅裏の秋葉神社から坂道を登っていく。田畑と点在する人家を見、木々のトンネルをくぐるうちに気分も多少治った。登山口のウォーキングセンターは月曜定休のためGW中でもちゃんと閉まっている(駐車場とトイレは利用可)。右手に広大な駐車場を有する「本宮の湯」を見やって進むと、砥鹿神社奥院の鳥居。渥美半島のほうからよく来ているというおばさんに声をかけられたが、長い足止めにはならず。

鳥居の先はしばらく急な階段が続く。道の脇に石の道標が設けられていて、一町目、二町目、、、と数が上がっていく。これは山の一里塚で一町は約109m、すなわち100mぐらい歩いたんだなと分かる(帰ってから意味を知ったのだけどね)。いつごろ設けられたのだか分からない朽ち欠けたようなのと、真新しい石材で作られ「町目」が「丁目」になってしまったようなのが道を挟んで対面している箇所もあり。奥院が五十町目で終結。つまり全行程約5kmということか。岩のガレ場などを歩きながら偶然道標が目に入ると「地獄の何町目」なんて読んだりしているときはマジには疲れていないなと。
話を少し戻して、一頻り登った十丁目付近に鹿跳坂という表示があり、屍坂を連想させる。むかし修行者や参拝者が山中で命を落とすことがあった名残ではないかと。

十町から二十町は展望の良い箇所が点在する。こういうスポットや休憩所も常に先客が居ってなかなか休息の機会をつくれない。登山道も家族などのグループが行きかい、頻繁に追い越しや行き違いをしなければならず、この面で少々疲れる。一日6,7往復し筋トレに活用している人も多く、狭い箇所や足場の危険な箇所で行き違う際彼らのペースに配慮するのも煩わしい。手軽な低山だから仕方ないか。
二十六町目辺りには「山姥の足跡」など巨大な奇岩も見もの。岩に刻んだような階段の箇所もあって注意を要す。山頂で昼飯を目標にしていたが、登り始めが遅くて空腹を催し嫌気がさしてくる。13時になっても着かなければどこでもいいから食おうと思っていると、漸く奥院の鳥居が現る。しかしこの鳥居がまだ序の口で、あちこちに巨樹の倒木が見られる最後の登りが過酷だった。それでもまぁ登山口から約2時間だ。

砥鹿神社奥院と山頂

頂まではもう一足あるが、奥院で昼をとってしまう。この社務所脇にある休憩所は男性専用で、女性の登山者は社殿裏のを利用するよう注意書きがある。おそらくこの山が女人禁制だったことを物語るのだろう。社へ正面から行き当たるのは登山道だが、向かって右手の筋からも多くの参拝者が上がってくる。これはマイカーで登ってきた人々だ。山頂付近をかすめる県道はツーリングのオートバイが姦しい。こんな神聖なる奥院でも、裏の境内では車の御祓いまでできるのだからまったく開発されてしまっている。それでも神域の厳かさを感じるのか、社の前でカメラを鳴らす人は極めて少ない。私も食後に5円投じてお参りする。
躊躇したけれども、やっぱり下山直前に。
社殿の裏には広くて景色の良い一服どころがあった。神前で慌てて食うことなかったな。一旦軽く下って県道を横断し、また急な坂道を登ると標高789mの山頂。大手通信会社のアンテナ基地となっている*2
 
こちらはマイカー族も登山客もほとんど上がってこず、リピーターなど知る人ぞ知るお昼寝処。私も暖かな陽射しを浴びて一眠りしたくなった。山頂付近は「レンゲツツジ保護区域(砥鹿神社管理)」となっており、眼下一面紫色の花が咲き誇る。

近づくとでっかいアブにぶんぶん言われますけど共有しましょう。木によっては薄紫色のもある。

本宮の湯

下りは1時間半程度と早かったが、下り始めの階段と岩の多い部分で足が震えだしヤバかった。登りで時間はかけたものの休憩を取りにくかったのが原因か。
麓には温泉施設「本宮の湯」がある。国道151号線や県道からも近く、高台の上に広い駐車場を有する(登山客も利用可)。この駐車場優先のせいでやや入口の分かりにくいのが難点だ。隣は情報センターのようだがしんとしている。
入湯料は600円。GWサービスで100円くらい割引いて欲しかった。浴場は何となく狭めでなかなか洗い場を確保できない。汗をかいた分だけ水分補給が足りなかったのか、湯煙の中で軽い貧血を起こした。それでも運動の後で湯に浸かって足をのばせるのは幸せなことだ。どこへ行っても温泉はないとな。湯上りはやはり牛乳である。地元銘柄でなくてメグミルクだけれども、一口含んで「甘いっ」と思った。
食事処「うまの背」には“豊川ぶた”の幟が立っており、豚が名産だと初めて知る。晩げに食べたいが時間的に合わない。エントランスの天井には大きなこいのぼりと五月凧?が吊ってある。

ふたたび長山

風呂の後だからノンビリ歩いて長山。長山城跡にリベンジ。国道に出たりしてくまなく探すも、碑等は見つからず。駅前付近が地形的に最も高い位置であることは分かった。たぶん小学校の中などにあるんだろう。地区最高地点より長山駅を望んで、ついでに電車を入れて撮影。

駅南西に、田畑でもなく工場跡のような馬鹿に広くて不気味な空き地があって、ここに砦を復元する気かと思った。

三河国一宮、砥鹿神社参拝

長山は幾分ロスタイムになった。余計に迷わないよう早めに国道へ出て西へ辿る。歩きながら吉野家などの飯処を探すが、いいとこなし。亥子角(いねずみ)*3交差点より南へ入る。ほどなく宮の森と、木陰に準備を済ませた出店の影が見える。さきほど奥院を参ってきた砥鹿神社である。境内が社殿より西方向(国道側)へ広く、その中に出店が集まっている模様。夏祭りではないので夜は静かに明日の神事を待っている。
西門より裏口進入。本殿を参り、三河えびすにも一礼。馬の試乗会が行われていたらしい昼間がウソのように、神前は静まっていた。

本門の外には土が敷かれ、明日はここを馬が駆けめぐるのだろう。俄作りの土の参道脇に的も設置されている。馬上から射損ねた矢は民家に飛び込んで危険だと思った。それだけ射手の技量が問われるのだ。

時間的な条件もあるが、奥なる聖域は賑やかで麓の本殿が静寂に包まれているという奇妙な三河一宮参拝でありました。

帰路

さすが駅の名どおり、三河一宮駅は神社から分かりやすいけれど、もう少し門前町があるといい。別の筋にあるのかな。駅舎の雰囲気は良さそうだったけれども、幸か不幸か駅に着いて1分と待たずに乗れたのであまり観賞できず。帰りも豊橋始発の特快を席取りで堪能。蒲郡でラグーナ土産と潮干狩りの袋を持った客が乗ってきた。
豊橋駅で構内のラーメン屋などを覗いたが、立ち食いは気が進まなかった。大曽根駅前にスガキヤがある、と思って悠長に帰ってきたらGWのため休業していた(実は20時閉店)。仕方なく国道19号沿いの松屋まで歩いて豚飯(豊川ぶたに触発されたのではなく単純に安いから)。
長山城は幾分惜しいけれども、一汗かいて温泉に浸って三河の守護神に参り終えられたのは良い出来だ。

*1:国土地理院の地図をベースにしているので、距離まで非常に分かりやすい。

*2:宮路山(蒲郡)や比叡山などよくある

*3:方角を示す地名。何が中心かといえば当然それは神社だと直感した。コミュニティバスの停留所も次が神社前になっていたし。