食に後悔したくなくて、滞在中に一度は食べようと思っていた。適度な乾きと適度にモチモチした食感は、断然パンより美味かった。どうしてこんな素晴らしい技術を持ちながら、中国のパンはあんなにパサパサで不味いものしか作れないのか不思議でならない。留学中は主に学食で1個0.2元のを2個で主食としていた*1。また、黄さんの家では自家製のものを頂いた。甘くない餡子を入れた、正に「元祖あんまん」も作ってくれた。一度だけスーパー三毛でも買ったことがある。学食と同様に美味かったが、戸棚に保存しカビを生やしてしまった。学食で多めに頼んでお持ち帰りした馒头を、学生食器を使って加温する方法を研究したこともある。蒸したてのような状態にするには随分苦労した。
学籍もなく食堂卡も無効になってしまった今、学食で買うことはできない。三毛ではまだ売っているか定かではない。身近ながら今まで一度も試したことのない手段、河大南门口に毎日来ている馒头売りの婆ちゃんから買うことにした。馒头が冷めないように分厚い布をかけた大きな籠とともに、いつも路頭に佇んでいる。二三年前はともかく、こんな飽食の時代でも馒头売りは消えていなかった。
「兰州拉面」で晩飯を済ませて三毛へお土産を調べにいく途中、おやつ程度に買っておこうと思った。馒头てのは個数をいえばスンナリ買えるもんだと思っていた。あるいは果物など量りもののように凡その値段をいえば、相応の個数を出してくれるものだと思っていた。ところが、その何れも通じなかった。「1元くらいほしい」と言うと、布をめくって、茶や紫など色のついたのと小さく袋分けにされたのと2種類を見せ、どっちだと聞く。俺は普通に白い馒头が食いたかったから後者を選んだ。手にして早速確かめると、なんとただのパンだった!! 一口大サイズで特に味付けも混ぜ物もないパンが5,6個。でも食感は馒头なみにモッチリして妙に美味かったので、歩きながら一気に3つほど食べ、その晩のうちに平らげてしまった。馒头自体は空振りに終わったけど、それに近い美味いものに出会えたので良し。馒头は次回へお預け。
*1:1個や3個を試した結果、2個半くらいで大米1碗と等しい腹持ちになることが判った