マネー成立者のプレゼンテーションは大概、流暢で落ち着きがあって聴き心地が良い。だが、稀に不成立の志願者の中にもそういった聴いているだけで癒されるような話し方をする人がいる。内容の良し悪しはともあれ、志願者が自分の企画に絶大な自信をもち、印象深い話法で伝えようとする姿に純粋に心動かされるものだと思われる。
【マネーの虎】ありえない態度のおにぎり志願者、加藤が「俺帰りたい」
よぉく聴いていると、これは手品みたいなプレゼンだよね。特別な具材は使ってない、とか、二種類の塩にこだわっている、とか、包材にこだわっている、とか、いうけれど、彼がこのとんじき(屯食)屋をやるにあたって本当にこだわっているものが何なのか、実は一言も言及されていない。彼の伝えたい真意はじつは「普通のお米をいかに美味しく食べさせるか」ということであろう。彼の商品の主役は紛れもなくコメなのであって、それを最大限に引き立てるための塩や特殊素材のバーガーパック、食感を調整できる型や奇をてらわない脇役の具材なのだ。しかしコメの産地もブランドも炊き方も何一つ明かすことなく、コメの一語すらない。敢えて主題を明言しないところに巧さがある。1:12で尾崎社長が唯一、見事に言い当てている。