先週予告した「鉄道の日」企画は、休日出勤の午後からでも行ける「阿下喜温泉往復割引乗車券(1000円)」を利用した三岐鉄道北勢線乗車プランを実行する形となった。三岐鉄道北勢線(旧近鉄阿下喜線)は日本国内でも希少となったナローゲージ(狭軌)で、近鉄内部・八王子線とともに一度乗ってみたいと思っていた。猪名部神社やねじり橋など沿線の名所にも関心はあったが、午後からでは途中下車などの乗り遊びが難しく、また日帰り温泉を絡めたいこともあって、一日フリーきっぷより入浴券つき往復割引を選んだ。
14時過ぎ出発。桑名までは昨夏の養老鉄道の帰路*1の要領で快調、15:27到着。ところが、三岐鉄道西桑名駅を文字通り解釈して、近鉄改札を通り西口に出てしまう。やっと気づいて、駅を南に初めての3社分を渡る踏切を待ちながら、目前を走る15:35発阿下喜行きを為すすべもなく見送るしかなかった。
しかし、遠回りも怪我の功名。次の阿下喜行きは16:19だが、その間に16:04発の楚原行きがある。先の踏切付近でのんびり撮り鉄する余裕ができた。こ・れ・が大成功の何のって、もう満悦。十分引きつけて打ったら目茶苦茶タイミングが合った。
二枚セットの往復乗車券は改札機に通す。ローカルな鉄道だが全線基本的に自動改札だ。
いよいよ乗車。車内は狭い。狭軌だから車幅に合わせて狭いのは分かるが、上下にも小さく感じる。まるで地下鉄東山線のようだ。
ためしに普通に座ったまま短足を精一杯伸ばしてみると、その狭さがよく分かる。因みにこの行為は、店の冷凍庫に入って写メを撮ったり餃子屋で裸になったりするような類いではなく、決して業務は妨害していないと思いたい。
吊りかけ駆動の電車は、狭い道をゆく。軌道が細いからか本当に沿線の住宅や木々が迫って、間を縫っているように感じる。カーブでは対向車がひょっこり顔出すように現れる。一両一両は小造りでも大抵4両か3両つないでおり、1時間に2本以上確保されている辺りは需要が高そうだ。こんなに行き違うだろうかと思うほど、交換可能な駅では頻繁に対向車が来る。
車両は使い込まれて古めかしいが、駅の多くは新装されてバリアフリーが進んでいる。有人駅では女性駅員が目につく。終点阿下喜も女性だった。ヤクルトレディーみたいに目玉になるといいなと。駅でもう一つ面白いと思ったのが、駅名板。上下線の次の駅は、ふつう当駅名の下に左右対称で一直線に並べるものだが、北勢線では2段に分かれている。これはこれで見やすいかもしれない。帰りに一例撮ろうと狙ったが停車位置が合わなかった。
住宅密集地は桑名市の蓮花寺付近までで、その先は田園風景*2。その中に駅周辺の集落と雑木林が点在し、カーブを余儀なくされる。そして、楚原を過ぎると趣きは一変する。すなわち、まるでトンネルのように雑木林に挟まれた区間が続くのだ。林が滅多に途切れない。駅間も麻生田(おうだ)の前後は長い。別世界へ入ってゆくような気分になる。最後に視界が開けると、終点阿下喜。
時間があれば阿下喜の古い町並みを鑑賞するつもりであったが、もう暮れかかって楽しめない。阿下喜温泉あじさいの里は本当に駅から目と鼻の先にあった。
湯加減は非常に適温で気持ちいい。コンクリートの底面に小石で凹凸が造ってあり、マッサージ効果や長湯でのぼせたときの刺激になると思った。露天風呂には例のごとく液晶画面があるものの、檜風呂の浴槽も湯冷ましスペースも狭くて入れない。ナローの旅だけども、ここまでナローを極めなくても... 阿下喜に来て飛騨高山の牛乳もどうかと思ったので、自販で普通のコーヒー牛乳を買って休む。隣接する物産店で「軽便煎餅」650円を土産に買う。5月の上海以来旅らしい旅もできず家族に貢献してないので、これくらいは出費でもない。
自称「降り鉄」的途中下車企画はまた別の機会に。今回はとりあえずローカル電車に揺られて温泉に浸かれただけで満足。
終
後日、東員-大泉間での録音をSoundCloudにアップしました
Stream Sangi Railway by Nanjai | Listen online for free on SoundCloud