南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

約18年ぶりの台湾

2006年2月、大学在学中に人生初の海外旅行で行って以来、17年9ヵ月ぶりの台湾を一日だけ周遊してきた。事前に調べては行ったけど、物価は当時とさほど変わってはいない。1食だいたい100NT$ほどで食べられるし、朝飯や小吃はもっと安い。中国大陸でここ10年急激に物価上昇したり、日本でさえロシア・ウクライナ開戦以降高騰気味なのを踏まえても、まったく安定しているといっていい。為替レートも、1NT$が当時3〜4円と記憶しており、現在5円前後なので大差ない。相変わらずスクーターは縦横無尽に暴走しているし、個々の店舗ごとに高さが異なり段差だらけの歩道も健在。捷運や高鐵など交通網はずっと発達したけど、生活感覚的には時間が止まっているとさえ思えた。それでまぁ、前回の勘を取り戻すくらいで1日活動できてしまった。
もちろん変化点も無いではない。いわゆる国鉄台湾鉄路管理局)が随分と都市鉄道化した。24時間運行をやめ、ICを利用できるようになり、自動券売機で簡単に乗車券や指定席を購入できるようになった。駅構内やホームも随分明るく快適になり、改修や建て替えも進んで橋上駅が増えた。台北近郊では新駅もできたようだ。もう日本のJR駅と錯覚しかねん様相に驚く(実際、新ロゴのTRはJRの模倣っぽい)。
今回の台湾を見て、一番衝撃だったのは、ホームレスの多さ。前回あまり気づかなかったのかもしれないが、こんなに居たっけ、と思うほど、とにかく至るところにホームレスの姿が目立った。新竹駅の駅前とバスターミナル側を結ぶ地下通路、決して広くない通路の片側にまるで路駐のようにずらりと横たわるホームレス。まだ早朝に通ったので爆睡している方々が多く、不意に襲われはしないが油断はできない。照明こそ行き届いているものの、折れ曲がった通路に死角は多く、いつ何時襲われるか知れない。布団にくるまっているところを見ると夜明かししているのだろう、せめて夜間は封鎖してもらいたい。駅舎や広場にもこうした人々がウヨウヨしている。ときに奇声を発したり喚きかけたりするところも、日本のホームレスと同じ。新竹は市街地にも彷徨う姿があり、逆に若い人けが少なくて街の活気をも吸われていた。台北駅の南口広場でも屋根付きの通路沿いにホームレスがずらっと座り込んでいる。大陸でこのような大荷物の人たちは(宿をとらず)数日前から乗車する列車を待っている方々で不思議はないのだが、長距離列車のない台湾ではちょっと不自然。ホントこんな人目のつくところにたくさん居ただろうか、やはりこの18年で増殖してはいまいか。コロナ禍の影響もあるのか。たしかに台北滞在中お気に入りだった、道端のフルーツ屋さんは貧相だったかもしれない。でもやっぱり前回はそんなに目立ってた記憶はないな。

地図アプリより抽出した台北駅前広場の光景

(新竹駅地下通路でも、台北駅前広場でも、さすがに彼らの姿を撮る勇気はなかった)
存在自体は異様だが大陸と違って、奇行や奇態を晒して稼いだり個々に対面で小銭をせびったりはしてこない。大陸の場合はむしろ職業乞食みたいなもので、一種の生業と化している者も多い。台湾の場合は日本と同じで、普通に低所得で住まいのない人たちなんだろうな。日本に匹敵するくらいの経済成長を遂げた台湾で、現在どのくらい貧富の差があり歪みを生んでいるか知らない。また、台湾行政府が彼らホームレスをどのように救済しようとしているか知らない。けれど、これだけ市街地で目につくところ、状況は深刻なのではないかと思う。