南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

じっくり高山線 1

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JR東海管内については、廃線前の神岡鉄道を訪れた際に猪谷まで完乗している。
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その先富山までの高山本線全線乗り通しは、豪雨災害による不通などで幾度となく阻まれてきた(例:”信濃路の旅”企画)。上述の猪谷までだって、2004年の台風水害による不通期間のさなかで角川~猪谷間は代行バスでの移動だ。ちゃんと鉄道で通り抜けるのは悲願でもあるし、高山以北は一層本数も限られるけど折角だし途中下車に挑みたい。また、改編した元企画の主旨でもある、青空フリーきっぷエリア外の下呂~高山間でも途中乗降を楽しみたい。そしてJR西日本管内まで、3日間ずっと高山線沿線で過ごす。

https://raillab.jp/report/25152
前夜に勤務先の方と呑み、二日酔いを抱えての出発。一番最初にビックリしたのは、18きっぷを日付入れしてもらうはずの勝川駅無人化してたこと。インターホンで有人駅の担当者を呼び、真っ新の18きっぷをカメラに提示して入場。この手間、城北線との乗継に余裕あって良かった。(春日井市代表駅の)春日井駅より利用者数多いといわれる勝川の無人化はどうなのか。
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乗務員や直近降車駅の駅員に早めに刻印してもらうのがベストだけども、幸か不幸か数分接続が巧いうえにワンマンばかりで機会なく、結局入れたのは高山線の車中だった。美濃太田から始める高山線の旅、満席でしばらく吊革にぶらさがって揺られていく。白川口でやっと座れたと思ったら、両隣他人のいる窮屈感からか二日酔いの吐き気が急襲してきて荒い息を吐きながら凌ぐ。たまりかねて下呂駅で数分間ホームに出て深呼吸後、再び立ったままで不快感を宥めながら乗ってゆく。
好きな乗り鉄とはいえ、体調すぐれない中での2時間半はキツい。今日はいったん高山目前まで北上してから、下呂方面へ途中下車しながら戻ってくるプランになっている。これは高山線のダイヤが、午後は上り線の本数が多いことによる。一方通行でなく、上下線を組み合わせて滞在時間を調節するのは常套手段。
渚駅付近は、鉄橋で幾度も交わる飛騨川がとてもキレイ。今日一日往来するたびに撮影を試みる。

飛騨一ノ宮

飛騨一ノ宮駅

あとに久々野の資料館で知るのだけど、飛騨一ノ宮と久々野の間にある宮峠(宮トンネル)が分水嶺であり、ここが宮川(神通川の上流域)の源流。つまり同じ岐阜県でも、高山市日本海側だった! 高山市街の宮川が北へ流れていたなんて初めて知った。本旅一番の学びと言っていい。

山風吹いて涼しく、ミンミンゼミの声響く

まずは飛騨国を司る、飛騨一宮水無神社へご挨拶。旅のはじめに訪問先の一宮や総社を参るのも増えてきた。

飛騨一宮水無神社(大スギと、ねじの木)

落雷を受けたようなスギも見られ、身を挺して源流のお宮を護っているなと。また駅裏には、天然記念物の臥龍桜がある。地を這うようにうねる幹が、臥せる龍に見えるようだ。桜花の咲くころにはもっと映えるだろうな。

久々野

空腹極まるも胃腸の不快感も伴うままなので、駅前の飲食店へは入らずGENKYの安い弁当で昼を済ます。
高山線東側の高台に位置する縄文時代の集落跡、堂之上(どうのそら)遺跡。明治ごろから存在が知られるも、発掘調査が行われることなく田畑などに用いられてきた。昭和48年から54年にかけて行われた発掘調査で、縄文時代前期から中期の住居群がほぼ完全な状態で出土した。特徴的な縄文土器や石器が数多く出土している。複数の炉の痕跡をもつ住居が発掘状態のまま展示され、一部は竪穴住居として復元してある。ムラは広場を中心に形成されていることもわかる。

堂之上遺跡

見学無料の久々野歴史民俗資料館にて、詳しく学ぶ。出土した縄文土器は、属する時代により文様の変化が見られ、縄目模様も多彩で鮮明になる。交易によって東や南との文化交流があったことをうかがわせる。石器には生活道具のみならず服飾品も数多い。展示のなかでも一際印象強いのが、男性のシンボルを模った石棒だ。磨製石器の一つで、長さも数十センチから1メートルと幅広い。ただの棒状のものから、亀頭をリアルに表現したものまで多様。さらに女性器と思われる女陰石も一緒に出土する例は珍しいという。祭祀に用いられたと考えられ、炉の四隅で出土するものが多い。また、女性を模った土偶も多く、堂之上ではとくに破壊された下半身の出土が目立つという。

久々野はかつて馬の産地として知られ、とくに昭和初期から中期にかけて優れた馬を出荷した。荷役を担う馬の需要衰退とともに、牛へと移行したそうだ。民俗資料室では馬具や、馬市の様子などを陳列して、馬が久々野の暮らしと密接にかかわっていたことを示す。
高山本線で最も海抜の高い久々野駅(標高676m)。山間部をはしるのに意外と低地で、JR小海線の日本最高標高の野辺山駅の半分程度しかない。その下り3番線に高山行き普通列車が停まっている。自分の乗る上り普通との行き違いか、と思っていると、その間に上下各方面の特急ひだが通過していった。高山行き普通の停車時間30分で、追い越しと特急同士の行き違いをいっぺんにこなしてしまった。すげえ駅だな、久々野。

飛騨萩原


幼いころ、ワイドビューひだ停車駅としか知らなかった飛騨萩原に初めて降り立つ。高山線は木造駅舎がわりと残ってる。萩原散策のキーワードが駅前に示してある。
駅前商店街を緩やかに下ってゆくと、諏訪城址。三木氏を滅ぼして飛騨国領主となった金森長近が、本城の高山城に加え支城として築いた。すでに当地にあった諏訪神社を移し、近隣の桜洞城(三木氏居城)を廃して築かれた。三木氏や桜洞城戦国史ゲームで馴染みあるが、萩原諏訪城は後年にあたり登場しない。一国一城令により廃城、金森長近転封後は諏訪神社が戻され現在に至る。境内には堀跡や石垣が残る。

萩原諏訪城址諏訪神社
湧水そそぐ北西隅の池(かつて益田川の淵だったとされる)

中山道太田宿から飛騨国府を経て越中国へつながる飛騨街道。諏訪城城下町と宿場町で栄えたという萩原は、いまも良好な町並みが残され景観保存地区に選定されているという。諏訪城を下って、飛騨街道萩原宿を南端から北へ辿ってみる。古い町家は期待したほど残ってなくて、昔ながらの中心商店街といった風情だ。むしろ近代建築を匂わせる、洋風装飾の建物が目立つ。

萩原宿の町並み

中を見学できるような陣屋や商家などもなく、短時間で通り抜けてしまう。そのまま桜洞城址まで行けそうだが、石碑しかないらしくやめる。

白黒ツートンカラーの蔵通り

街角の案内マップなかったら見落とすところだった。蔵通りを南に十王堂方面へゆくと、水路に沿って生活感あふれる。体調に合わせてノンビリ散策できた。

高山

近年建て替わったのか、見違えるような橋上駅となってる。車中ではほとんど見なかった欧米系外国人の姿が目立つ。

涼しげな水たまり広場の高山駅

濃飛バスセンターの券売機で乗車券を買おうとしたら、運賃は260円のはずなのに250円区間しか表示されず、諦めて降車時払いにした。飛騨古川駅行きの一般路線なのに大型観光バスで運行する。高山市街の狭い道路を上手に走行する。松本町北で下車。宮川大橋を渡って歩くこと約20分、本旅の宿、天然温泉飛騨高山ひだまりの湯。冒頭の記事で新たな計画をたてようとしたとき、空いてる宿をベースに組み立てるしかなかった。温浴施設の仮眠室に2段ベッドを設えたドミトリー(男女混用)様式のここは、1カ月前でもガラ空きでまさに救世主だった。アクセスはやや不便だが、高山線上枝駅徒歩10分というのに着目、実際アプリ等で計測すると20分が正しいけどまぁ頷ける。初日の今日は高山から古川方面への列車が18時台の接続悪く、また高山駅とを結ぶ無料シャトルバスも時間が合わなかったので、濃飛バスで最も接近する路線を利用してきたのだ。泊まれるスパということで大きな建物を想像してきたが、概ね田畑の中にあっても目立たず、さらに遠くの病院を見間違えたほどだ。
通された仮眠室”藤”は、二段ベッドが向かい合わせに10数ばかり並び、30人くらいが一室に泊まれる。木の香りに包まれ広々とした造りで開放的。男女混用とプライベートのなさは、学生時代に巡ったユースホステルよりも中国の青年旅舎が思い出される*1。ほかに畳敷きの休憩室や家族・合宿向けの個室も備える。一つ難点は、今や必須の電源コンセントが不足すること。ホテルの個室なら時間自由に使えるが、ここでは各ベッドにも付いていない。部屋の片隅や施設随所に隠れたコンセントを、利用者同士でシェアするほかない。入浴中など合間をぬって携帯バッテリーを差しておき、ある程度溜めたら速やかに抜く。
源泉かけ流しの温泉は、38.5℃のぬる湯と42.5℃の熱めがある。ぬる湯にゆっくり浸かって、熱湯にも全身沈めてジワッと芯まで温めると最高に気持ちいい。湯上りのビールは格別なのだけど、まだ前夜の不調が残るので断念。21時までという食事処にて、焼き餃子を主食に充てて軽めの夕飯。高山ラーメンと、けいちゃんは一度食べたいと思ってた。

けいちゃん(味噌)

朴葉みそを思い出させる地方独特の味噌で炒めた、鶏肉と野菜。吞まないのに、なんだかビールの肴のような取り合わせに。スマホの充電時間と調整しつつ、22時過ぎに再び入浴。宿泊者なのか、湯処はさっきより賑わっている。そのままロッカーキーをフロントに返し、夕飯代を精算する。フロントは明朝7時半に開くのだが、それでは上枝7:48発の列車に間に合わないと考え早出を申し出たのだ。時間外の通用口を聞き、靴をベッド脇に置いて就寝。寝る前の湯あみで下半身が火照って寝苦しい。仮眠室は23時半に減灯、0時に消灯される。休憩所やロビーでそのまま休養されたり、夜酒を楽しまれる方々もおられる。
じっくり高山線 2へつづく)

*1:下段で寝てると、いつしか干されたブラジャーが鼻先に吊り下がってくるやつね