(郑州文庙&地铁2号线(郑州2017年号)よりつづく)
郑州から武昌までの間に漯河しか停車しない当列車では、現在地が逐一話題になる。地図アプリでGPSを稼働させると、滑らかに正確な位置を教えてくれる。仮眠の合間の時間つぶしにはちょうどいい。武汉市内からは降車準備のタイミングを計りながら注視していた。汉口站を通過するともう間近。到着は定刻より20分遅れ。
武昌站
決して眠れなかった訳ではないものの、早朝に行動するのは肌寒く頭が重い。まずは食堂街で热干面。初日からずっと、今旅中に一度食べてみないと気が済まない懸案だった。河南省内でも幾度となく遭遇したが、やはり本場でないとな。塩辛い炒面が丼に入ったような混ぜ麺。量と手軽さは、开封明伦街の福建小吃でよく食べた香拌面(味噌風伊勢うどん)に似ている。実際このあと武汉市内でも紙カップで販売されるファストフードの热干面を食べる人々を見かけ、いかに生活の中で愛されているかがよくわかる。
トイレの争奪戦を済ませた後は、地下鉄の始発時間まで小一時間あまり、物陰で携帯充電器を使ってiPhoneを充電しながら休息。目の前では乗合タクシーの熾烈な客引きが行われており、交渉が難航したり地下の乗り場へ逃げられたりしていた。
漢口旧火車站(大智门站)
初日に通った洪山广场方面を避け、逆向きに乗って钟家村で6号线に乗り換え大智路(3元)。朝一番の観光スポットは、1902年に開業した京漢鉄路の漢口旧駅(大智门站)駅舎だ。現在の大動脈である京广铁路の始祖ともいえる京漢鉄路の終着点として、当時アジア最大規模ともいわれたそうだ。
最寄りの出口を探していると、突如眼前に蒸気機関車が出現した!!
最寄り駅とはいえ、この演出のスケールには正直驚いたwww
京汉大道を北東方向へ行く。頭上を高架鉄道の地铁1号线が走っている。実はこれこそ京漢鉄路の名残ともいえる。ちょうどプラットフォーム側から正面玄関へ回り込む格好となる。
この外観は現在の汉口火车站にも取り入れられている。
汉口租界
大智路から汉江路の方角へ見当をつけて歩き出す。さっき热干面を食べたばかりなのに、巷で朝飯の薫りがするからか小腹が空いてくる。
この辺りは上海外滩(バンド)に似た近代建築が集中している。汉口は1858年に結ばれた天津条約によって開港し、英・独・仏・露・日の5か国の租界が置かれた。大智路の西側一帯はちょうどイギリス租界地区にあたる。
このように欧風景観を保存・創出した地区を散策。
租界を代表する建造物。江汉步行街の突き当たりにある。
武孝城际铁路
本旅最後のネタ。武汉と孝感(Xiaogan)を結ぶ都市間高速鉄道を、汉口から天河机场まで乗る。初日と同様に地铁2号线で市中から直行してしまえば訳ない区間なのだが、鉄ファン魂は敢えて別ルートを選ばせる。折角だから時間に余裕があれば乗っておこうとは思っていた。
售票员も「地下鉄で行けばいいじゃない」などと拒まず事務的に売ってくれるのが中国の長所。〔列車情報:C5303次、汉口10:26発-天河机场10:38着、二等座7元〕 運賃、距離、乗車時間の全項目において過去最小を記録した。そして当初の計画通り全6回分の中国鉄路トリップを完遂。
切符売り場で、「乗車時刻が迫ってるから」と譲ってあげた欧米人旅行者の流暢な中国語に感服した。2人分オンライン予約したのを発券するのだが、予約番号の間違い(ゼロとオウの入力ミス)を指摘するなど落ち着いていた。
改札まで1時間弱だが、空港まで行ったら安価で食事する場所はないだろう、と考え、最上階のフードコートへ。それでも市中よりは割高だけど、食べておきたい一般的な盖饭系ということで麻婆豆腐饭(20元)を注文。
麻の風味は弱く、日本人でも難なく食べられる「てぬるい」麻婆饭。
改札を出た瞬間、初日に通った連絡通路へ合流。あぁ戻ってきたんだ、と実感。ちなみにもう一つ、偉大な記録を残した。武汉市内における4つの火车站(武汉,武昌,汉口,天河机场)を本旅で利用した訳だが、1市で4つは過去最多であり北京・上海ですら成し遂げていない。しかも今日一日で3つだから偉業だろ。
帰国
じつは今朝からずっと、タバコを探していた。というか、買うのを躊躇しながら空港まで来てしまった。同僚や友人に「中国タバコを味わわせてやる」と豪語してきたのが、妙に重荷となっていた。もはや空港の売店となると、常用よりは贈答用の形状になってしまい買い求めづらい。余す時間のすべてを売店巡りに費やした。
搭乗手続きとて順風満帆だったわけではない。帰路は便名こそ同じでも中国国内線と国際線の乗継という形は変わらず、不慣れには違いない。ロビーの電光掲示板にはフライト番号と手続き状況が表示されているが、どこのチェックインカウンターなのか全く掴めない。インフォメーションで尋ねたところ、国内線カウンターを指示された。係員は国際線との合同チケットに扱いなれないらしくテンパって、2枚の搭乗券が発行されるのに右往左往させられた。そして、国内線用の手荷物検査を受けて搭乗口へ。結局タバコを買えない愚者にできたことは、23元の高価な纯牛奶を飲むことくらいだった。
帰りの上海での乗継時間は1時間半と短い。往路のように悠長な出国手続きでは、会社用お土産の購入に余裕がないと不安が募る。と、ランプバスの降車エントランスで「ナゴヤ、Mingguwu」と連呼する添乗員がいる。出国手続きが遅れて国際便に乗りそびれないよう、優先経路へ誘導する仕組みになっているようだ。ここで名古屋行き(と岡山行き)の団体客を含む30名ほどが職員に先導されて特別室で出国審査を受けた。というか、私たち数人の個人客は慣れたものですんなり通過するが、ツアー添乗員が団体客を全然引率できていない惨状には閉口させられた。一部の客が経路を間違えるやら出国カードの不備不足やらでオタついて、空港職員に窘められる場面も。乗継の流れを把握してないんだろうか。
ともかく、搭乗まで30分ぐらい余裕が生まれゆっくりお土産を吟味することができた*1。そのまま階下の搭乗ロビーで寛いでいたら、突然アナウンスで自分の名を呼ばれた。慌ててゲートに行くと、「最後の一秒で現れたよ」と係員が物凄くホッとしたようにランプバスへ誘導した。ランプバスはチケットに記載の搭乗時刻より早めに発するのだということを、すっかり忘れていたのだった。最後の最後で滑り込みの失態。
ラストフライトは出張帰りのビジネスマンだらけ。たった三四日の滞在を嘆きながら青島ビールを嗜む日本人を横目に、中国を十分満喫してきた自分は日本の生活へ戻れるか心配。セントレアからは急行電車に揺られて帰宅。
靴による脚の疲労蓄積がやや辛かったものの、自分でも思いのほか中国語が自然に使えて計画通りの日程を過ごすことができた。开封では数こそ少ないものの感動的な朋友再会を遂げ、鉄道ネタも余すところなくこなし、全く思いどおりに河南各地を歩き回れたので大変満足している。前回不安を覚えた宿泊問題も、著名な観光都市を除けば恐れることはないと実感した。このさき河南ウォークを続けるにあたり、大きな自信が湧いてくる1週間であった。
开封帰郷旅行2017 完
(map:江漢関大楼)