南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

名鉄三河線&碧南

昨日土曜出勤にもかかわらず週末家事ルーティンが思いのほか早く片付き、終日出かけられると意気込んだ。名松線長良川鉄道を目論んで早出の準備をする。ところが出発間際になって自転車のスタンドが壊れ、駅へ行けないうえ修理のため早めの切り上げを余儀なくされる。一旦リセットになるも、せっかく早起きして支度したんだからと近場で(乗り鉄)新規性のあるところを、と選んだのが名鉄三河線。先日ふと再考した「高浜とりめしプラン」を、終点碧南まで乗りつぶすように改編した。車窓真っ暗の地下鉄鶴舞線車中で間に合わせの行程表を作成。上小田井駅にて、新型車両導入で貴重な存在となった赤電100系・200系赤池行きを見送り、次発の豊田市行きN3000形に乗る。ノープランで出発したのに碧南までの乗継は巧いことスムーズだった。せっかく久々か初めてのはずの豊田線三河線(山線)も、引き続き乗継検索に熱中して全然車窓を顧みることなし。勿体ないね。
ところで近年は三河線知立駅を境に北を山線、南を海線と呼称しないのだね。とくにレイルラボでは前者を猿投方面、後者を碧南方面というのらしい。豊田市駅で乗り換えるとき知立方面へ向かうのに「猿投方面」は違和感ある。

名鉄三河線(海線)

高架化事業により大改造の進む知立駅を目の当たりにした。太田川駅のように、一部の方面で上階にホームがある複雑構造。もともと従来の名古屋本線三河線の交叉状況を熟知してないので、移動により方向感覚を失う。碧南方面の折り返しホームと名古屋本線名古屋方面ホームが対になってるのは、帰りの接続に便利だと思った。特急到着時刻と碧南行き発車時刻が同刻に設定されており、瞬時の接続が可能。
さて、ようやくノンビリ電車旅。知立を混み合って発したのに、JRと接続する刈谷で大半が降りてしまう。ローカル三河線以前に名鉄をも蔑ろにされたような気持ちだ。同時に普段JR特快目線でしか見ない刈谷駅の、名鉄による出入りは新鮮だ。
刈谷以南は境川に沿って南下する。ロングシートに身体を捻じ曲げつつ好天の車窓を楽しむも、目ぼしい発見はない。アジア系外国人の乗車割合が高い。ぷつりと途切れた碧南駅はしかし、真新しい駅舎だった。

碧南駅構内

碧南レールパーク

今日の目当てはココ。2004年、名鉄三河線は山線の猿投~西中金と、海線の碧南~吉良吉田の両区間廃線となった。山線のほうは最終日に廃線区間だけ記念乗車に行ってる。
jaike.hatenablog.jp
海線の碧南より先は後年、軌道を遊歩道として整備し往時の駅風景などを偲ばせるモニュメントを設置。現時点で碧南市区間のみの約2.2㎞(碧南駅~三河旭駅区間分)が碧南レールパークとなっている。現存線の延長感覚でぷらりと歩いてみる。

碧南レールパーク入口(大浜口広場)

碧南駅より100mほどの大浜口広場から、レールを模した白線が描かれた遊歩道は始まる。現在は碧南駅とも直結整備されている。この大浜口からは嘗て、碧南港への貨物線が分岐していた。

大浜口広場

三河線開業当時以来の古写真パネルなどを眺めながら、バローで買った昼飯をほおばる。腹ごしらえして、廃線ミニ旅スタート。
緩い左カーブでほどなく玉津浦駅。往時は海水浴場で賑わったとされる。ホーム脇の桜は見事だけど、駅舎を再現したのがトイレなのは些か映えない。

玉津浦駅

今年は花見のチャンスに恵まれないと思っていたけど、幸い今日存分に楽しめた。また、桜に限らず多彩な春の花々が植わってて和む。

レールパーク沿道を彩る花々

過去に廃線跡を歩きながらの花見といえば、東濃鉄道笠原線が思い浮かぶ。
jaike.hatenablog.jp
また、廃線跡は辿ってないが谷汲線の名残と花見を楽しんだのも、今回に似ている。
jaike.hatenablog.jp
道路との交差箇所はつい、「踏切よし」と唱えてしまう。停止線が歩道から遠目に敷かれているのも踏切の名残だな。

でっかいベンチが目立つ、棚尾駅

引き込み線には名鉄電車を模した赤い休憩所が並ぶ。これよりも、

まさに赤い電車と錯覚させる、レッドロビンの垣根

意図してか、まったく見事な造形だと思った。

三河旭直前の桜並木

大きな左カーブを描きながら進んできた軌道は、最後に右へ転じて三河旭駅へと至る。碧南から三河旭まで大きくU字を描くことから、一方を乗り遅れても自転車で短絡すれば間に合ったともいわれている。

堀川と合わせると輪を描くような軌道

当時のブロック積みホームがそのまま遺された三河旭駅

レールパークの終着点、三河旭駅

途切れたレールのモニュメントは、矢作川の堤防へと登ってゆくスロープ状に造られている。今も線路の続きを欲しているかのような可憐さが沁みる。チャリで三河湾佐久島を目指す企画でこの廃線跡を辿ろうと思っていたので、いずれ続きも行くことになるでしょう。

碧南くるくるバス

もと来た道を味わい直してもいいけど、移動と休憩を兼ねてコミュニティバスを利用する。無料の碧南くるくるバスあおコースを平七町で乗り、おもに市南部を経て大浜地区へ。無料に乗じて名鉄運賃を浮かす乗り方(狙いは北新川駅)ができないか、各コースを入念にチェックするも、巡回バスだけに大回りルートで設計されていて時間ばかり食うので断念した。非住民ながらコミュニティバスを遠慮なく使い倒す度胸は、親も恐れるところ。
バスに乗り、視点を変えてみて正解だった。しばらくはレールパークと絡むように走るのだが、弯曲した軌道の内側が小高くなっていることを知る。三河線が丘を避けるために弧を描いていたことが初めて分かった。レールパークを歩くだけでは知り得なかった、大きな知的収穫。
また、蜆川以南の干拓地と思しき広大な農地や、火力発電所エコパークなど、衣浦湾に隣する碧南のもう一面を垣間見ることができた。「たんトピア」の電力館は思わず降りて寄っていきたい衝動に駆られる。こういうローカル遊覧もコミュニティバスの利点といえる。

大浜てらまち

市南部を時計回りに巡って、碧南駅に程近い称名寺で下車。この辺りは碧南の旧市街、大浜。由緒あるお寺が集まり、醸造の盛んな特色ある町並みが残っているという。
【大浜てらまち公式サイト】大浜てらまち さんぽ<愛知県碧南市>
まずは称名寺をお参り。むしろ境内の渡宋天満宮の名が気になるも、小さな社だった。授乳姿の水子観音像も魅かれる。
バス通りの大浜街道はそんなに雰囲気ないけど、一歩裏道へ入ると情緒ある。

妻薬師と、その界隈

くるくるバスの停留所名にもなってて不思議だった、旧大浜警察署大正13年に木造から建て替えられた、鉄筋コンクリート造りの近代文化財。傍らに遺るバロメートル(気圧計)は、漁に出る船のために利用され漁港だった往時を偲ばせる。

旧大浜警察署と、バロメートル

署前の湊橋は、いまも潮の香を感じさせる。堀川の桜も綺麗。

醸造の町らしき黒塗壁

予約すれば時代館や工場見学もできるという、九重味淋三河みりん発祥の醸造元だという。醸造業というと衣浦湾対岸の半田市がよく知られている。近隣だけに共に競い合って発展するのだろうな。レストラン&カフェには入らず、大蔵の外観を見学。

九重味淋(外観と大蔵)

まちかどサロン裏の大浜てらまち散歩みちを北へ抜けて、三河線線路伝いに碧南中央駅まで歩いて電車に乗り、帰途につく。知立駅で碧南方面から跨線なしに快速特急へ乗り換え、名古屋本線をすっ飛ばす。知立刈谷市街の軒先迫る沿線をすり抜けるとき、昔は名鉄のこんな高速運転想定しなかっただろうな、と。名古屋市に近づくにつれ、高架化した建替え駅が目立ってくる。天白川架橋から本星崎駅までの急カーブでは最後尾が脱するまで徐行ほどに減速し、本線最後のネック区間かなと。名駅で所用を一つ済ませ、急行と普通を乗り継いで上小田井に帰還。
ひょんなことから即席の鉄旅となったけど、現存の三河線を半分以上こなし廃線ウォーキングと花見、碧南の町歩きを楽しめて良かった。

レイルラボでみる今日の行程