南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

郑州新郑国际机场(帰国とエピローグ)

郑机城际铁路よりつづく)
注:補航便を待つ間に日付は変わり最終帰宅は16日昼過ぎとなりますが、全行程を当記事に収めます。

補航便確定

城铁コンコースから空港エントランスに出る直前で、旅行者全員が一定人数警備員に停止され付箋のようなものでタッチされた。金属探知とか疾病チェックではないと思われるが、セキュリティ上の入場制限ではないか。第二ターミナルと総合乗換センター(GTC)との通路にも同様のゲートが設けられ、往来を自由に繰り返すことは難しそう。
出発ロビーのチェックインカウンター情報を見ると、当該フライトはまだ「欠航」ではなく「取扱待機」のような表示だったので、空港に着いたらするつもりだった航空会社への電話を一時留保して、アナウンスや表示の変化を待つことにする。出発ロビーや到着ロビーの各階を上下して探検したり、さきの検問を介さないルートを見つけて再びGTCへ出てみたりして各売店を物色し(冷やかし過ぎないように時折軽食を買い)ながら時間と不安を紛らす。たまの小休止はメインの出发大厅よりベンチの空いている下の階へ*1。そうして本来の離陸時刻を回ったころ、電光掲示板にようやく?「欠航」の旨が表示されたので改めて確認のため春秋航空へ電話する。と、午前のオペレーターが対応してくれて、当該フライトは取消され明朝3時出発の臨時便へ変更されたのでログインページより詳細を確認してほしい、とのこと。さっそくログインすると予約情報が更新され、人生初めて聞く補航便という名で新たなフライト情報が記されている。〔便名:9C868A、郑州新郑02:30発-大阪关西06:50着〕 本来のフライトより12時間遅らせて飛ぶことになり、その時間なら台風も過ぎ去っているということか。日本でお盆休み、中国でも夏季休暇にあたるこの時期、欠航で移動できなくなった乗客が他の便へ変更になった場合の混乱は回避せざるをえず、旅客便発着の空いている深夜帯に臨時便を挿入したってことか。ともかく帰国の目途がたってひとまず安堵し、実家に連絡。未明に発って朝一で関空に着くなんて、こりゃ凄い展開になったなと思うも、半日でも長く河南に居られるなんてラッキーだと考えるようにする。なお、この時点で今夜乗る予定だった名阪間のウィラー夜行バスは確実に間に合わず、往復割引で予約したため復路のみを事前取消で払い戻し請求できず無断キャンセルで諦める羽目に。

新郑机场(12時間に及ぶフライト待ち)

f:id:Nanjai:20190815140043j:plain
出发大厅
さて、お土産を買いながらあらためて新郑国际机场2号航站楼(第2ターミナルビル)をじっくりと眺めてみよう。この第2ターミナルは格安航空会社向けに新設され、のちに全フライトが第1ターミナルより移行された。12年前はじめて河南に降り立ったり、石隨さんを上海へ送るために飛び立ったのは第1ターミナルのほうで、現在は使用を停止し今後展示場などへ改装される見通しである。香港便だけが国際空港の証しだと思い込んでいた新郑机场は、いつしか飛躍的な変貌を遂げていたのである。
これまで上海、北京、武汉と最新型の中国の国際空港を見てきたが、河南の玄関口として一新された新郑机场は意外にも随所にその特色が施されている。
f:id:Nanjai:20190815140355j:plain
民航餐厅(上階)
2階のフードコートには烩面をはじめとする河南名吃が揃っている。せっかくなのでシメに水饺でも啜っていこうかと注文してみると、現金では支払わせてもらえずフロア端のカウンターで手続きしてこいという。市中では何一つ問題なかったのに、最後空港にて初めて河南でキャッシュレスによる障壁を喰らわされた。こういう最新鋭システムで融通の利かないところは残念だ。結局昼夜二食ともカップ麺を味わう。今旅では火车站で方便面を食べる機会がなかったので絶好とはいえる。
f:id:Nanjai:20190815145215j:plainf:id:Nanjai:20190815185448j:plain
蘑菇味と酸辣味
また、ギフトショップも充実していて河南の特産や銘品が華やかに陳列されている。
f:id:Nanjai:20190815140600j:plain
河南特产汇
これまで日本への安全な土産は北京や上海で買うものと言われ、河南土産は推奨されずまた上海では滅多にお目にかかれなかった。こうして郑州から直接海外へ出入りできる時代になり、河南の産品も自信をもって国外へ送り出せるようになった。この綺麗なパッケージと陳列販売の華麗さは河南の誇りの表れだろう。
定例の母(と自分)への土産香瓜子(原味、真空パック2袋)は早々に確保。ギフトショップの河南物産スペースを丹念に見回った結果、正宗(元祖)开封花生糕を発見。一口サイズの小分けパックではなく、一定量の塊を紙で包み紐で括ったほぼ立方体の小包みスタイルが純正版だ。持ち運びの振動を最小限に抑えるため購入のタイミングをギリギリまで待った結果、「河南の玄関口」新郑机场ならきっとあると信じたのは正解だった。これは実家用ということにして、問題は妹夫婦への土産。河南の特色が凝らされているのは喜ばしいが、あまり中華味のキツくない無難な土産を用意するにはかえって苦労する。上海で会社向け土産などに買う、中国産ナッツ系のほんのり香ばしいクッキーを念頭に厳選、少林寺饼干で何とか着地した。
ほか、書店ではバイブル『河南交通图册(2007年版)』に代わる河南地図最新版を、今回こそ買おうと意気込んで探索するも見当たらず。また、とある売店では迂闊にもストローを剥奪された纯牛奶を買ってしまい、吸飲に悪戦苦闘した。
f:id:Nanjai:20190815212533j:plainf:id:Nanjai:20190815212628j:plain
河南色あふれる国内線のフロア

我々の補航便以外は定刻どおりと思われる出発便が、こんな夜更けになっても絶え間なく提示されている。

出発時間帯もさることながら、その行先の意外性にも驚かされる。画像の最上段は曼德勒(Màndélēi、ミャンマーマンダレー)である。ほか、芽庄(ベトナムのニャチャン)や岘港(同ダナン)、あとカンボジアのどこか等、一度脳内で発音してみても対応する都市が思い浮かばず、「これどこだぁ?」と思わず検索してしまうものばかり。格安系なのか、インドシナ半島方面が多いね。
深夜0時頃ともなるとフロアの片隅で横になる旅行者も目立ち、火车站で見慣れた光景に近くなるw。笑いながら眺めている私も正直身体は重くなってきている。チェックインまで正常に起きているのはしんどい。

深夜のフライト

臨時便搭乗を待ちわびた人々が多少なりとも気だるさを抱えながらチェックイン。カウンタースタッフが私のパスポートを見るや、少しだけ優先的に対応してくれた。帰国便は往路より一段と日本人が少ない(或いは私一人かもしれない)ようだ。薄暗いほどに照明を落とした搭乗ゲートでは、訪日する家族連れなどが入国カードを記入したりスマホに熱中したりしているが、どの表情も一様に疲労と眠気を帯びている。機内では基本熟睡するだけなので、搭乗前に酸牛奶飲んで胃袋を宥めておく。

f:id:Nanjai:20190816015517j:plain
再见、郑州
はじめて未明の時間帯に河南へ別れを告げる。夜行列車で去る時でさえ、0時以降は経験がない。そして、この時間帯に国境も越えるという新体験。まったく波乱の旅となったものだ。スーツケース積込作業を待ちながら、滑走路の奥に広がる暗闇へさよならと呟く。
f:id:Nanjai:20190816044200j:plain
雲上で迎える朝
ふと気が付くと眼下に島嶼が見える。海岸線を分析した結果、愛媛県上空と判明した。徳島の吉野川が茶色く濁っており台風の爪痕を窺わせる。ほぼ予定時刻に無事関空へ着陸。実家に一報入れてから、人民元残金930元を再両替して約12,000円回収。第2ターミナルへの無料連絡バス待合室やエアロプラザ内は至るところに旅行者が仮眠しており、欠航や遅延で足止めに遭っていたらしい。またプラザ内にあるローソンの食品棚は完全に品切れで、台風により流通がマヒしていたようだ。空腹を抑えられるだけの軽食を摂り、重苦しいフロアをあとにする。

関空から帰宅まで

夜行バスを乗り逃したので実費で帰らねばならない。昨年の四国旅行と同じ、南海・近鉄ルートを使う。南海の空港急行でなんばへ。関空駅のホームにラピートがいる。間近で見るとやや不気味。
f:id:Nanjai:20190816075004j:plain
四国のときの特急サザンよりは目新しい駅にも停まる。近鉄難波で名古屋までの料金分をICチャージし乗車。鶴橋で大阪線急行乗換の折に利用した駅トイレで、外から中国人旅行者の会話が聞こえてきて自分がまだ中国にいるような錯覚を覚えた。近鉄急行は結構混んでいて八木ぐらいまでは座れず、「かぶりつき」風に前方を眺めている。伊勢中川の乗継では時刻表で見た以上に時間があり、駅弁買って車内でいただく。関空から実に5時間かけて漸く名古屋へ帰り着いた。近鉄名古屋の改札口では前の人に続いてmanacaをタッチしたところエラー反応っぽかったが、前の人に追従するように押し切って出てしまう。直後に乗った市バスでは難波でチャージした額がそのまま表示されて訝しかったものの、バス料金自体は普通に差し引かれて乗れてしまいスルー。ちなみに1本で帰れる名駅12系統は時間が合わず、黒川経由で帰宅。

おわりに

まず、河南全地級市踏破を達成できて感慨無量。記念すべき郑州初入境でちょっと躓き、今ひとつ調子が上がらなかった旅程も、再訪地洛阳から次第に持ち直し、故郷开封ではすっかり高揚し充実した時間を過ごせた。旅のリズムが2014年と似ていることから、気候がカギではないか。暑いシーズンは夜市のビールは美味しいけれど、長旅のスタミナを終始保つのは難しいということだ。また今回初めて、渡航を台風に思いきり翻弄された。夏真っ盛りに決行するとこういうリスクもあると学んだ。回避志向になるのではなく、一つの経験値として活かしたい。実際には乱れたものの、行程を6日間で収めることに手応えあったのは成果。
ともかく、初めての8月真っ只中の中国河南を存分に味わってきた。何年ぶりかの土産として、空路一本のおかげで安定して持ち帰ることができた純正开封花生糕は、夏場ながら家族に大変喜ばれた。次回からは再訪シリーズを乞うご期待。


开封帰郷旅行2019 完

*1:「好吃点」をボリボリ食ってたら、署名を求めるという新手の勧誘っぽいのがベンチを回ってきた。乞食も含めてこういう商売も進化するのね