南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

加佐登

以前に、大曽根~桑名間を通しで払うより、名古屋で一旦改札を出入りすると片道50円浮くというのを経験した。
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この差額をもっと大きく引き出せる、区間と出入札切断箇所を丹念に調べた。その結果、名古屋~加佐登間を四日市で分断すると片道270円浮く、というのを発見し暫く寝かせていた。名古屋~加佐登を通しで払うと990円だが、四日市で一度改札を挟むと名古屋~四日市480円、四日市~加佐登240円の計720円となる。50円ならまだしも、270円はデカい。裏技として一度実行しとこうと。このネタの難点は、時間効率の犠牲だ。四日市はまぁ乗継箇所としても良いのだが、如何せん島式ホームと改札口を跨線橋で往来しないといけない。数分の接続では厳しいものがある。かなり余裕を持った設計になってた。

F1日本グランプリで大混乱の関西線

催行は早朝決めた。古いプランなので念のため発着時刻を対照していたら、鈴鹿サーキット関係の臨時列車が運行することを知るも特に留意せず。名古屋駅に行ってみて、愕然とした。F1日本グランプリが開催される鈴鹿サーキットへ向かう、外国人を中心とした物凄い長蛇の列が、関西線の12・13番線からコンコース東端の改札口付近まで連なっていたのだ。ホーム上が混雑するのを防ぐべく、列車入線に合わせて入場制限をかけているらしい。まず、鈴鹿サーキット稲生へ直接停車する快速みえを棄てた。次発の普通四日市行きなら不便だから回避すると思ったら、四日市伊勢鉄道臨時列車に接続するらしく、そのまま超満員の貸切状態で各駅停車していった。
この普通電車が定刻運行なら四日市出入札も余裕なのだが、F1観客の乗降に伴う関西線各列車の遅延に加え、南四日市~河原田間の設備点検も併発して四日市目前にして13分間の信号停止。後続も遅れるとみて時間差を稼ごうと思った。四日市ではシミュレーションどおりF1群団を離脱して平穏な跨線橋を渡る。改札外で一息つく真似をして再び島式ホームに戻ると、まだ鈴鹿サーキット行き臨時快速を見送れた。平時でも5分くらいで出入札はできるな。
しかし、この後亀山行き快速電車は伊勢鉄発着などを待って25分遅れで発したうえ、南四日市~河原田間で最徐行したために加佐登到着は定刻より37分も遅れる羽目となった。亀山での紀勢線接続はできない旨のアナウンスが流れると、乗り鉄らしき客がブチギレていた。気持ちはわかる。

加佐登にて

各駅に遅延情報のアナウンスは流れないらしく、電車の発着が時刻表と合わないことに戸惑っている方がみえたので、F1の影響でダイヤが大幅に乱れていることを伝えてあげる。亀山へ車でゆくことにしたようだ。QRで問い合わせろ、は些か不親切だ。
さて、この加佐登一帯は特異な地形をしている。鈴鹿川の自然堤防にあたるのか、JR関西線の北側に沿って急斜面の丘が延びている。尾根上の県道に向かって登る坂道には、呉服店などの古い建物が点在する。名駅四日市で弁当買うヒマがなく、県道沿いのたこ虎でソースたこ焼き8個を求める。だるまやの鴨丼も惹かれはした。

加佐登神社

まさに堤防であるかのように、加佐登駅から登ってきた分を椎山川へストンと下ってしまう。その対岸に位置するのが加佐登神社の森。鳥居前で先のたこ焼きをいただく。ふわとろだけど粒はデカい。鳥居脇に車を停め、空を見上げている二人組がある。鳥でも見てるのかと思ったが、のちにF1グランプリ決勝前のブルーインパルス展示飛行を見るのに陣取っていたのだと気づく。境内散策中に轟音が響いてきて喧しかった。

加佐登神社

www.kasado-jinja.com
日本武尊ヤマトタケルノミコト)を祀るとされている。さきのたこ虎の向かいにも、日本武尊がこの地(能褒野)で亡くなったとき、装束を収めたという宝装塚があった。

日本武尊

白鳥塚古墳

境内奥にある、日本武尊の墓と伝わる古墳。尊が死後、白鳥の姿となって飛び去ったという伝説に由来する。

白鳥塚古墳

方部の小さいホタテ貝型の前方後円墳で、ちょうどくびれの辺りを見ている格好になる。参拝したあと墳丘を一周してみた。ブルーインパルスの轟音響き、日本武尊も今日は安らかにとは言い難い。まっすぐ南に下ると調整池の畔に。

白鳥陵(句碑や調整池)

また、荒れた草むらに何故か鉄道車輪が転がっている。近鉄のものだという情報がある。池を目前にしながらフェンスで神域を出られず、一旦神社へ戻る羽目に。

東海道 庄野宿

もと来た道をすっかり巻き戻して、そのまま駅前を通り過ぎコンクリート会社の横を突っ切ると、東海道庄野宿入口。この交差点自体は温泉への道すがら、何度か通っているはず。庄野宿の案内板には初めて気づいた。何なら駅前からの道も旧道の一部かと思いきや、この東口より石薬師宿方面はコンクリート会社の中に埋没してるのらしい。枡形を消されたのかな。

東海道庄野宿

駅の南側へ殺風景な工場の先に突如現れる、街道情緒のオアシス。町屋が密集しているわけではなく、住宅街に点在する。庄野宿は、歌川広重の「東海道五拾三次之内」の《庄野の白雨》で知られる。白雨は夕立のこと。雨降りしきるなか、坂道を慌てて行き交う旅人たちの様子が描かれる。
bunka.nii.ac.jp
この坂道こそ、JR関西線北側の丘陵だろうな。さっき自然堤防と見做したけれど、それだと庄野宿が川原や川底になってしまう。宿場成立時期が遅いことから、河道が変わって落ち着いた頃に近隣集落から人を集めてつくったのではないかと。

庄野宿資料館(旧小林家住宅)

照明用の油を売る問屋だったという。高札場に掲げられていた高札の実物が5枚も陳列されている。文字が浮き出たように見えるのは、墨の劣化によるものだそう。庄野宿の名物は、焼米(やいごめ)。湯を注ぐとすぐに食べられ、保存食として重宝された。各地の名物というと料理や菓子を思い浮かべがちだが、その場に終わらず携帯食にも土産にもなるというのは印象も宣伝効果も大きい。零細宿場の知恵だな。傍らで丁寧に解説してくださって有難い。
最後に巨木を拝んでいく。崩落の危険性から鳥居をくぐれない川俣神社。

川俣神社のスダジイ

鈴鹿さつき温泉

この温泉だけなら2,3度来たことがある。加佐登駅から工場脇や、街灯も歩道もない道路を20分くらい歩く印象が強い。今回庄野宿から直に温泉へ向かうことで、今まで気づかなかった裏道を見つけた。というか、歩道が完全分離した道路だった、ともいえる。JRを跨ぐ車道に対し、小さな踏切を渡って農道を緩やかに上る歩道がつけられていた。黄金色に実りつつある田んぼを振り返りながら、のんびりと温泉へ。
各地で入湯料が高騰する中、550円で入れる。近年リニューアルしたか、思いのほか小綺麗になってる。母が言うには露天風呂はなかったそうだから、これも新設か。まるでお茶のように茶色く色づいたお湯が特徴の、源泉かけ流し。露天風呂でゆっくりした。
帰りも逆コの字に大回りしたくなくて、JA敷地を繋ぐ歩道橋を渡って隣接の春日神社に脱すると近道になるのを発見。ふたたび農道をゆったり下って加佐登駅へ。

帰路

帰りもF1決勝終了後の時間帯とかぶるので、混乱は予想された。案の定、河原田駅で停止させられ四日市着が11分遅れた。いっそのこと、臨時快速に乗ってやるかと思うも、加佐登から乗ってきた快速になだれ込む群衆を見て辟易した。臨時快速が遅れていて関西線普通が先行したので、座れて平穏な鈍行を選ぶ。JR東海の運行状況を逐一参照すると、とんでもない事態になっていることがわかる。

各駅ごとに列車が詰まった異常事態と、名古屋まで普通のケツを追う羽目になった特急南紀

F1客をほとんど乗せず、ほぼ定刻どおりに走る普通電車が逆に異質。特急は最後まで可哀想だったなぁ。ともかく、大混乱の関西線だったけど、目的の運賃割安にするための四日市出入札は成立したので満足。また、加佐登再発見も楽しかった。