开封老城(城壁内)とその周辺の観光開発や環境改善は目覚ましい。とくに際立つのが城壁東外側の护城河(日本でいう外堀)で、河南大学最寄りの三毛超市が撤去されたのを機に、北から順次護岸工事や公園化が進められた。そいえば河南大学東門より北に関しては在学中すでに遊歩道となっていたな。大学東門から苹果园にかけての整備が2013年頃始まり、同時に东京大市场(および夜市)の撤去も強行された。河に沿って残っていた貨物線のレールもこのとき除去された模様。かつて河は目を覆いたくなる汚水が流れ、吐きそうな腐臭を漂わせていた。我々は慣れればこんなものと思ってはいたが、初めて目にする日本人ならダッシュで橋を渡るか鼻をつままずにはいられないだろう。2014年帰郷の折、見違えるほどに緑化され清水の流れる护城河に感動したものだ。もちろん慣れ親しんだ市場が跡形なく消えた現実にも衝撃を受けたが。
そして2019年には曹门一帯で改修工事が行われており、汴京公园との間に海洋馆ができたのもこの頃か。护城河の改修自体は西側でも行われており、大梁门より南で大型機械の姿を見たことがある。ともかく、帰郷するたびに苹果园バス停は大学や明伦街近くの停留所として必ず立ち寄るので、毎度激変する河と対面し光景を更新している。
ところで最近、ため池を埋め立ててテーマパークのようなものを造成している、との情報を得た。ため池と聞いてピンとくるのはちょうどこの护城河と城壁を挟んだ内側だ。城壁に阻まれて全然感知してなかったので真相を調べてみる。が、建設予定図など目ぼしい情報は得られなかった。そもそも地名など何をキーワードにしてよいか分からず、城壁の外側は〇〇法院とかいうバス停だったよな、とか思い出す。結局、ため池の南側に広がる住宅地を阳光社区と呼ぶこと、河南大学の明伦街を挟んだ対面に阳光湖という湖があること*1から、今はいくつかのため池に分断されているが嘗ては一つの阳光湖だったのではないかと推測した。一体化した湖は北から西へ逆L字状に広がり、内环路からも望むことができる。比較的最新の衛星地図で見ると、L字の折れ曲がる部分の池が1、2個埋め立てられている様子がうかがえる。
建造物の名称や計画内容よりもビジュアルなのを探し求めた結果、ようやく以下を入手。
震撼!开封水系三期这样建,大手笔!
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上のため池埋め立て箇所を含む、城壁東辺を南北に一体開発する壮大な計画。开封水系三期规划などと称されるらしい。北は铁塔湖から阳光湖、曹门、汴京路*2と繋ぎ、宋门で自由路方面と城壁沿いの二手に分かれる。まさに清明上河图に描かれた河(水路)の都を再現するかの如く、川べりに華やかな街を造成してしまおうというものだ。クリークの街、苏州をも思わせるね。なんか無理やり造成しているかにも思えるが、実はあながちそうでもない。というのは、もともと並行する内环路は河を暗渠化したもので、都城らしく整った街路に珍しく不自然な曲線を描いているのはそのためだ。汴京路と交わるところの穆家桥(汴京桥)という地名はその名残。
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当計画でも河道を一部活用しており、老城南東端で护城河に合流するところなど完全一致。いっぽう自由路方面への水系は开封府に至り包公湖へ注ぐとみられる。
阳光湖以外にも工事は着工しており、州桥の発掘調査と整備もこの一環だとわかる。
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また、先の护城河合流地点には上善门*3を復元するらしく、すでに該当地区の住宅撤去が完了している。長年期待してきた曹门と宋门の復元も実現されそう。
开封は基本的に郑州を玄関口とするため、西側からの観光導線に偏りがちだ。東にも際立った見所を造ることで、まんべんなく宋都开封を愉しめる工夫といえるだろう。完工を大いに期待する。